2012年12月15日
昨日のウインチのワイヤーに関しての記事を見た友人から面白いメールが届いたので此処にご紹介したいと思います。
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ロープ類にグリスを塗布する理由は、次の2点に集約されます。
①ワイヤロープの芯に潤滑の為に麻などの心綱が使用されている場合、この心綱は外周のワイヤ層の潤滑を長期にわたり確保する為に製造時からグリスがしみこませてあります。このグリスはワイヤが滑車やフェアリーダーを通過する際に屈曲することにより周囲のワイヤ素線に滲み出し、素線同士が内部摩擦し磨耗するのを防ぐ為に施されています。
②ワイヤロープの外側に用いられるグリスは、滑車やフェアリーダー、地面などと摩擦し、表面磨耗するのを防ぐ為と、内部の心綱からにじみ出てしまったグリスの補給の為に用いられます。
広く一般産業用に用いられているワイヤは上記のグリスを用いない場合、酸化等による腐食が容易に発生する材質(鋼製かそれに亜鉛メッキを施したもの)なので、屋外に順ずる使用環境でこれらのワイヤを使用する場合ロープグリスの使用は事実上絶対条件とされています。
一般的な産業ウインチには赤ロープグリス、長期に渡って設置され続ける環境にある吊橋や索道などのワイヤケーブルの保護には耐久性重視のアスファルト系黒ロープグリスが適しているそうなので、ウインチに使うなら赤ロープグリスかもしれません。重油や原油は不純物により素線を侵すので使用は避けること。
例外として、屋外に用いられるワイヤ類に於いて、道路に設置されたガードロープ(正式名はガードケーブル)や電柱の支線がありますが、このワイヤには心綱が無いうえ、使用環境において屈曲もないので①、②のどちらのグリスも使用されていません。そして何より、歩行者やその他の交通に対しての汚損を防ぐ点からもロープグリスの使用はなされていないのです。防食の為に亜鉛メッキがされています。
同様に、レジャー車両用のウインチは、その使用頻度、使用条件からして、ワイヤの内部摩擦を考慮しなくてはならないほどの使用頻度は無い上、環境による腐食を排除し、そのワイヤの取り扱いを事実上メンテナンスフリーにするためにステンレス素材を用いたワイヤが使用されています。
よって、①、②のワイヤグリスは使用しなければならないことはありませんし、また心綱も組み込まれていないので、当初よりグリスの必要性は無視されているのではないでしょうか。
むしろグリスを使用することによって、地面との摩擦の際、砂塵等を素線の中に閉じ込めて内部磨耗を起こしてしまう可能性(素線内部の砂粒は素線破断の要因です)、並びに車両や操作員の汚損を惹起します。
ユニック等のクレーンではワイヤが土砂にまみれることは少ない条件で、滑車やドラムにより頻繁に屈曲されるので、グリスは必須なのでしょう。
※ワイヤは衝撃荷重に弱いので、大型船舶の係船ワイヤではテールロープと呼ばれる10メートル程度のホーサー(繊維ロープの係船ロープ)を末端に連結して係船ワイヤを衝撃荷重から保護しています。このテールロープにはワイヤの破断荷重の1.25倍程度の能力のホーサーが使用されます。
一例として、45メートルの係船ワイヤに11メートルのナイロン製テールロープを連結するだけで、事実上約260メートルの長さのワイヤを使用したのと同じ衝撃吸収効果を確保できるとされています。
つまり、レジャー車両用のウインチであってもその先端にソフトカーロープかストラップを連結するだけで、衝撃荷重による破断、ウインチやウインチベッド、車両に対するダメージを未然に防ぐことが出来ます。
私はウインチを使用する際はなるべくソフトカーロープを連結します。こういった使い方は誰もしていないと思います。
ワイヤグリスもメリットはありましょうが、使用用途を考慮するとステンレスワイヤならばグリスはやめて、ソフトカーロープと併用する方式のほうがスマートに思えます。
以上御参考までに。
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この様に静岡のY60AD乗り友人から興味深いメールが届きました。いつもながら良く変な事を知っているものだと感心しますが、今回もその例に漏れずです。本文中にもありましたがレジャー用のウインチのワイヤーの材質にはステンレスが用いられメンテナンスフリー化が図られていると言う点は確かにそう言う事が有りえない訳でもなさそうです。ただ気になるのが自分が見つけたランクルの取り扱い説明書にはグリスの塗布の指示が記載されておりました。ランクルの場合純正ではWARN社、アイシン製の物が搭載されておりますがその両者使用ワイヤーロープの材質が同じ物かは判断が付きません。一方日産サファリ場合はPTOとWARN社M8000が使用されており時に電動の場合にはワイヤーロープの材質が同様の物である可能性があります。するとこの点から判断するとグリス塗布の必要性があるかもしれないともいえます。今私のウインチは20年ほど前のノーメンテナンスのワイヤーですから表面はガサガサで使用頻度は低いですが交換次期と考えた方が良いかもしれません。若しくは一旦赤ロープオイルを染み込ませメンテナンスしテールロプとの併用で使用するのも一つかもしれません。
また一つ勉強になりました。

Posted at 2012/12/15 08:21:48 | |
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GQという名の漁船 | 日記