
現在私は、タービンの大型化を考えています。
候補はATP GTX3076R ターボキットです。
GVF純正、実測補正前250~260馬力、これを押さえ気味で実測350馬力ほどにするキットです。

ブレードの形状が新しくなった、ボールベアリング式の最新型。
これのWRX STI用の
純正位置でのキット(タービン位置を上に移動しない)がATPのキットです。ローテートキットといってインタークーラーを前置きし、開いた位置までタービンを移動するキットはPerrinなんかからも出ています。

この純正位置にタービンを置くATPのキットを使えば、ICは上置きのままで行けます。ICを前置きしないで済むという事は、フロントバンパービームを純正のまま使える事になります。私の車は家族を乗せる機会が多く、嫁さんが運転する事もあります。純正フロントバンパービームで衝突安全性能を維持できるというのは改造を考える上でとても重要なのです。
このタービンキット、インレットの口径がとても大きいです。

EJ257がメインの北米では、ビッグタービンへの改造が少なくないので、こうした口径のインレットに使える太口のインレットホースがアフター品として売られています。
アルミ製の3インチもありますが、最も人気があるのはワイヤー補強されたPerrinのシリコン3インチインレットホースです。

上が一般的な2.4インチのインレットホース。
これでも純正よりはずっとずっと太いです。
下が3インチのインレットホースです。
この太い方のインレットホースは238ドル。2.4インチよりも30ドル高くなります。

これはPerrinのGTX3076RタービンのRotateキットです。
タービンが上置きICの位置に変更されています。
GDBでGTX3076Rをローテートで取り付けしてるキボさん。
インレットホースも当然この移動したタービン位置に来て、エアクリーナーへ続くパイプも移動したタービンに合わせて専用設計になります。空気の通り道のパイプのルートにとても余裕があります。
これが、純正位置に大型タービンを置くとなると、インレットホースの取り付けが大変な事になります。純正では、インレットホースはインテークマニホールドの下を通す必要があります。2.4インチのインレットホースでも大変なこの部品、3インチのホースの組み付けはほとんど不可能に近いのです。
みんトモのGOGO62さんの2.4インチPerrinインレットホースDIY取り付けの記録。ぜひお読み下さい。
Perrinインレットホース取り付けその1
Perrinインレットホース取り付けその2
取り付けその2の完成写真をぜひチェックを。
2.4インチホースでもインマニ下部とインレットホース上部が完全に接触しています。ここに3インチホースが通せるはずがありません。
みんトモの ぐおさん が現在GTX3076Rの組み付けをしているので、とても参考になります。おすすめ記事です。こちらはPerrinの3インチのインレットホースです。GTX3076Rに3インチならジャストフィットします。
GTX3076R仮組みその1
GTX3076R仮組みその2
GTX3076R仮組みその3
そこで出てくるのがこれ、
Phenolic Thermal Manifold Spacer WRX/STi/LGT/FXT - 8mm
です。
製造元、Grimspeedの商品紹介ページはこちら。
8mmと3mmの厚さの物が売られています。このスペーサーを
インテークマニホールドとヘッドの間に挟むことで、空間が広がります。3インチのインレットホースを通せるようになるのです。
とても前置きが長くなりました。
タービンを大型化したい
↓
タービン位置は純正位置を守りたい
↓
タービンが大きくインレットホースは3インチの太さが欲しい
↓
インマニの下にこんな太いインレットホースは通せない
↓
インマニの下にスペーサーを入れて持ち上げたら空間生まれる
まとめるとこういう話です。
さて、このインマニを浮かす8mmスペーサー、ビックタービン使いにはとてもとても人気のある製品です。もはや定番と言って良い部品です。
ぐおさん ももちろん購入しています。
★ここから本題に入ります!
この製品、本来の目的はインテークマニホールドの温度を下げる事にあります。インテークマニホールドは金属製のTGV(タンブルジェネレータバルブ)を介してヘッドに接続されています。走行中、ヘッドの熱がTGV、そしてインマニへと伝わり、この熱くなったインマニの中を吸気が通る事になります。これがヒートソークの原因の一部だと言われています。
このスペーサー、Phenolicという樹脂で出来ていまして、熱をとても伝えにくい素材なのです。これを間に介す事で、ヘッドの熱をインマニに伝えない事が可能になります。
Grimspeedの製品ページによれば、素材の耐熱温度は260度C以上。スバルエンジンの熱くなる部分で93度Cほどなので、楽に耐えられる。
そしてインマニの温度の下がり方ですが
スペーサー無しのインマニ。純正状態 67度C
3mm厚のスペーサー入り 57度C
8mm厚のスペーサー入り 42度C
温度の下がり方は本当に顕著。
下がっているというか、ヘッドの熱が伝わっていないという事でしょうか。
この温度変化は極端なのでとても分かりやすく、走行後にエンジンフードを開けて赤いインマニを手で触れるだけで熱くなっていないのは簡単に分かるそうです。
NASIOCのフォーラムでもこの製品のレビューでインマニの温度変化についてのテスト結果は多くポストされています。
8mm持ち上げでインマニの下の空間を広げる効果は結構劇的です。

これなら3インチインレットホースも入りそうですね。
ただ、この製品の効果には疑問の声もあります。
まず第一に、ボンネット上部のバルジ付近にあるインテークマニホールドは、走行風でどんどん冷やされているのでは無いか。で、ヘッド > TGV > インマニ と伝わった熱が走行風で冷やされる事で、結局はヘッドの冷却になっているのでは無いかという考え。もう一つは、インマニの温度変化が、本当に「吸気」の、ようするにインマニの内部を通る空気の温度の低下に直結しているのか?という疑問です。
この疑問を払拭する部品がCosworthから出ています。
TGV Deleteという部品/加工があります。

これはGrimspeedが行っている純正TGV加工サービスの写真です。
純正タンブルジェネレータバルブのバタフライを取り去り、径の加工もし、Grimspeedでは管内部をセラミックコーティングして仕上げです。この加工はピークパワーを目指す改造ではしばしば行われています。
この純正品加工とは別に、アフター品のバタフライ無しのストレート構造の物も売られています。これもTGV Deleteという名前です。

これがCosworthのTGV Deletes。水平対抗でヘッドが左右に割れているので、インマニが分かれていますが、TGV Deleteも左右2個になります。

こちらは同様の製品、Motive AutowerksのTGV Deleteです。
そっくりですが、本体に入っている「Cosworth」のロゴが無いのはがっかりですね(笑)
上に出てきた純正品の加工なら2万5000円程度。セラミックコーティングしても3万円ほどですが、Cosworth製のTGV Deleteは安い店でも630ドル、5万円弱します。
これほどの値段差があるにも関わらずCosworth製が売れるのには理由があります。この製品は
fiber reinforced polymer、ようするに強化の樹脂製で、ほとんど熱を伝えません。Motive AutowerksのTGV Deleteも同様に樹脂製です。どちらの製品も樹脂製なので、ボルト穴部分に金属パーツが埋め込まれているのが写真でも分かりますね。
Cosworthがこの部品に樹脂を選んだ理由が、ヘッドの熱をインテークマニホールドに伝えないためなのです。8mm厚しかないスペーサーと違って、これだけの厚みの部品が全て熱を遮断するために使えれば、効果は絶大だと思われます。
という事で、Grimmspeedの8mmスペーサーによるインマニ温度下げは色々議論あるけれどもメリット有り!と思う事にしました。
Cosworthがやってるんだから信じておこう!