2007年02月15日
さて、前回までのようないきさつにて、親爺さんの不始末の責任を押しつけられる形で、好きでもないヘーパイストスの元に嫁がされてしまった、美の女神アプロディテ。
当然ながら、不満たらたらな毎日を送っておりました。
「何だってまた、わたくしのような極上の美人が、あのような貧相でブサイクな、チビの○○○のところなんぞに嫁入りさせられなければなりませんの?」
まあ、彼女のような目に遭えば、誰だって多かれ少なかれ不満を抱こうというものですが……とくにアプロディテの場合、「美の女神」としてちやほやされ、恋を語らう男どもに不自由するようなことは全くなかっただけに、いっそうその思いもつのったのでした。
それは、ヘーパイストスとの間にエロスという子ができても、まったく変わりませんでした。(エロスの父親に関しては異説もありますが……まあとりあえずは、こういうことに)
また、ヘーパイストスもヘーパイストスで、アプロディテを娶っておきながら、ときおり工房を訪れるアテナの前ではデレデレしてしまうなど、あまり感心できないところもあったようです。
(アテナは戦の女神さまなので、好むと好まざるとにかかわらず、武器や防具の修理や新調など、どうしても鍛冶屋のヘーパイストスに依頼せねばならぬことが多々あったのでした)
さて、そのような思いにて、いささか鬱々とした日々を送っていたアプロディテでしたが、ある日のこと、夫を訪ねてきた軍神アレスのきりっとした凛々(りり)しい姿に、つっと魅せられてしまいました。
このアレスもまた、アテナと同じく軍神さんでしたから、やはりちょくちょく、ヘーパイストスの工房を訪れていたのですが、これがまた、美男子ぞろいのギリシアの神々の中でも、一二を争うほどの美形だったのです。(ただし、性格のほうはあまり良くはありませんでしたが)
「まあ、あの出来損ないの宿六さんにも、少しは良いところがあったみたいね。こういう素晴らしい殿方を、わたくしのために呼びよせてくれるなんて」
すっかり気をよくしたアプロディテ、さっそくご自慢の肢体と、お得意の媚態の限りを尽くして、アレスの気を引こうといたしました。
何せ、絶世の美女の中の絶世の美女、「美と愛の女神」の「お誘い」です。
それはもう、筆舌に尽くせぬほどの素晴らしいものだったのですが……
相手が悪うございました。
アレスさん、太陽神アポロの良いライバルになりうるほどの、類い希なる外見に恵まれておりながら、徹頭徹尾の「戦バカ」で、色恋の道には全くの無関心な朴念仁だったのでございます。
「ねえ~ん? アレスさま~?」
と、アプロディテが媚々たる流し目とともに、艶やかなウインクなどいたしてみましても……
「いかがなされた? 奥方? 目にゴミでも入られましたかな? アスクレピオス(医者の神さまのことです)でも呼んでまいりましょうか」
などと、か~るくあしらわれてしまう始末。
ならばと、あえて目につくようなところで、ただひとり胸もあらわに湯浴みなどしてみせても……
「おや、女神ともあろうお方が、ニンフどもも連れず、一人で風呂ですか。お寂しい趣味でございますな」
などと言い捨てて、すたすたと立ち去ってしまうありさま。
「なっ……にっ……」
あまりの意外ななりゆきに、さしものアプロディテも、しばしぽかんと茫然自失。
「ぬぅわんですってぇ!」
我に返るや否や、さっと柳眉を逆立て、烈火のごとく怒り狂いました。
「あ、あ、あの男っ! このわたくしを無視しましたわねっ! 何さ、少しばかしお顔のほどがよろしいからって、すっかりお高くとまっちゃってくれちゃってからにぃっ!」
「美の女神」としての面目を潰され、「愛の女神」としての誇りをもずたずたにされて、完璧に頭に血が上ってしまったアプロディテ。
「ようし! ならばこのわたくしにだって覚悟がありますわよ! こ、この手だけは使いたくはなかったんですけど……」
かくて、ついに最後の自尊心をもかなぐり捨て、非常手段に訴えることとにしたのでございました。
はたして彼女は、何をどうやって、にっくき(?)アレスのハートを射止めようとするのか?
……というところにて、お話は次回に続きます。
Posted at 2007/02/15 08:26:47 | |
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2007年02月14日
さて、「男なら……」などと挑発(?)された形となったヘーパイストス。
やはり「ここで尻込みしては、男がすたる」と言うことにて、「うおぉぉぉ!」とばかり、いきり立ってアテナに挑みかかりました。
下半身をモロ出しにした格好で。
え? とても神さまの格好じゃない?
どう見ても、ド変態の露出狂男でしかないじゃないか! ですって?
しかたありませんよ。何せ古代ギリシアなんですから。
「下着」なんて結構な品なんか、いまだ発明もされておりませんから、男も女も半裸状態なのが当たり前なんです。
(女性もその胸をあらわにしていて、ちゃんとお化粧して歩いていたそうです。乳首に口紅ならぬ「乳紅」をさすのが普通だったらしいですね)
戦場での兵士たちも、下はみんな「ふる○○」だったそうです。
(うーむ、戦争反対……)
オリンピックなんか、何と「全裸」でやってたんですからね。
(走る競技はともかく、レスリングもか? うえええ……)
というような時代のことなので、下半身に充血しきった半裸男が挑みかかってきた程度では、女神さまもいちいち驚いたりはいたしません。
(だいいち自分で挑発したんですし……ね。いちおう)
「きゃあ」
と絹を裂くような悲鳴を上げたりする代わりに、
「ふんっ!」
と威勢良くその麗しき御手をお伸ばしになり、変態男……じゃなかった、挑戦者ヘーパイストスの腰のあたりをむんずと掴むと(何を掴んだのかは詮索しないでくださいね。他に有りはしないんだから、ちょいと想像すればすぐわかります)、
「えい! やあ!」
と投げ飛ばしてしまいました。
「ぎゃあぁ~っ!」
哀れヘーパイストス、またもや雲の向こう、はるか彼方の地平の果てへと……(以下略)
本当に気の毒なヘーパイストスさん。
踏んだり蹴ったりというか、投げられて、また飛ばされて……
しかもこのとき、アテナに「ぎゅう」とやられた弾みに、漏らしちゃっても居るんですよね。
そんでもって、それがアテナの太ももに、「べちゃっ!」とかかってしまいました。
「うええええ……ホントにもう、この程度で出すなよなぁ……○○、○○の○○男が!」
アテナは眉をひそめつつ、「羊毛を使って、それを拭き取った」と伝えられております。
するとどういう訳か、その羊毛から何かが生まれてきてしまって、エレクトニオスという神さまになったのでした。
(いちおう「アテナとヘーパイストスの子」ということになるのですが、何せこういう生まれ方なので、アテナは処女神のまま子を授かった……という結果となりました)
まあ、このエレクトニオスに関しては、今回は無視いたしましょう。
(彼ができたのは、また別の時だった……という伝承もあることですし)
さて、こういう次第にて、「とてもアテナは手に負えぬ……」と、否応なしに悟らされたヘーパイストス。
しかたないので、他の女神を選ぶことにいたしました。
かくて選ばれたのが、「美の女神」「愛の女神」として名高いアプロディテです。(ローマ式のヴィーナスとしての方が有名ですね)
アテナほど気丈でもたくましくもなかったアプロディテ、父親たるゼウスの厳命(懇願?)もありまして、しぶしぶとヘーパイストスの妻となりました。
めでたし、めでたし……
……で終わっていれば、何ごともなかったんですけどね。
終わらなかったからこそ、話が続くのでした。
いえ、むしろこれからが本題なのです。
「大神ゼウスは、なぜ好色になったのか?」というテーマに関しては。
という訳にて、次回にご期待のほどを。
Posted at 2007/02/14 03:31:46 | |
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2007年02月12日
さて、そのような事情にて、「ご指名」を受けたアテナ、いや~な顔となりました。
「何だってまた、あたしにお鉢が回って来なきゃならないのさっ?」
無理もありませんね。
誰だって、わざわざ好きこのんで不細工な小男を、旦那にしたくはないでしょう。他にギリシア彫刻のような男たちが、それこそよりどりみどりでごろごろしているというのに。
当のアテナはすらりとした長身の美女だったのですし、まして「ことの起こりは酔いどれ親爺どののご乱行にあり!」と来ては!
「責任取るなら、自分の身体で支払いなさいよ!」
と言ったかどうかはさておき……
アテナならずとも、不満ぶりぶりになろうというものです。
更につけ加えるなら、このアテナ、実に気の強い「男勝り」の女神さまでした。
そもそも、生まれ方からして、まるで普通ではなかったのです。
ある時、大神ゼウスが、ひどい頭痛に悩まされました。
「ウウ、痛い……痛い! ウウ……」
全能なるゼウスが堪えきれないほどの痛みだってんですから、相当なモノだったのでしょうね。
「うああ! こ、これはもう、辛抱たまらん!」
とうとうガマンできなくなったゼウス、まだ五体満足だった頃のヘーパイストスを呼んで、とんでもないことを頼んだのでした。
「お前のその鍛冶屋ハンマーで、この忌々しいドタマをかち割ってくれい!」と。
そんな無茶苦茶な!
などと驚いてはいけません。
これは神話の世界で、当事者たちは何れも不死身の神々なんですから。
まあ確かに、「割れるように痛いから、割れ!」というのは、どう考えてみても無茶な発想ですが。(おでき潰して膿を出そうってんじゃあるまいし)
「承知つかまつりました。ではごめん!」
というような次第にて、ヘーパイストスは愛用の超大型ハンマーを振るい、大神ゼウスの脳天を「ぱかっ!」とかち割って差し上げたのでした。
頼む方も頼む方ですが、頼まれたからって、こんなことをホイホイ実行しちゃう方も、またかなり問題があるようですね……
とにかく、かくて大神ゼウスの頭は、真ん中から見事に叩き割られたのでした。
すると、真っ二つに割れた頭蓋の中から、「ヒョイ」と飛び出してくる者が居るじゃありませんか。
それが、この女神アテナさまだったのでした。
ヨロイカブトに身を包み、
どでかいイージスの盾をひっさげ、
長柄の槍をリュウリュウとしごいたいでたち
にて、彼女は父親の頭の中から飛びだしてきたということです。
その、まこと勇ましげなる娘の姿を見て、ゼウスは「はあ」とため息混じりにつぶきました。
「な~るほど。こりゃ道理で……えらく頭痛がしたと思ったわい」と。
「おいおい! 他に何か言うことはないのか!
だいたい何で頭の中から、ヨロイカブト娘が生まれるんだ!
それに……割れた頭はどうなったんだぁ!?」
などと、いちいち突っ込み入れていては、とても神経が保ちません。
こっちの頭が痛くなってまいります。
くどいようですが、それが神話というモノなんですから、細かいこと(?)など気にせず、先を続けましょう。
母親のおなかからではなく、かち割られた父親の頭から飛び出して生まれてきた。
……というような生まれの、まっこと勇ましき戦の女神さまですから、ヘーパイストスの求婚に、そうそう簡単に「うん」と頷く道理もございません。
果たして、女神さまはしっかりと条件を出してきたのでした。
「あたしが欲しいってんなら……力ずくでモノにしてごらんなさいよ。
あんたも男ならねっ!」
「は、はあ……」
かくして、ヘーパイストスの野望は、大いなる難関に突き当たったのでした。
というところで、お話は更に続きます……
Posted at 2007/02/12 15:10:58 | |
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2007年02月12日
さて、酔いどれゼウスに放り投げられ、したたかに身体を打ちつけて、脚が不自由になってしまったヘーパイストス。
怪我が治ったところで、断固抗議に出向きました。
不自由な脚を引きずりつつ。
「いかに大神とはいえ、あんまりじゃありませんか! 見てくださいよ、わたしのこの脚のざまを! こんなのじゃ、嫁さんのなり手もありませんよ! いったいどうしてくれるんです」
これが現代のお話なら、必ずしもその通りでもないんでしょうが……
何せ「健全なる肉体美」をなによりも尊んだ古代ギリシアの、しかも神々の世界でのこと。ヘーパイストスの受けた衝撃は、決して小さなものではなかったのでした。
「わかった、わかった……」
既に酔いも醒めていたゼウスは、さすがにばつが悪そうに、こう答えました。
「確かに、わしが悪かった。せめてもの詫びのしるしだ。わしの娘たちの中から、誰かをお前の嫁としてくれてやろうではないか。誰でも好きなのを選べ。それでどうじゃな?」
自分の不始末は、娘の身体で支払う……
何とも身勝手な父親ですね。
こんなのが神々の長だってんだから、まったくもってひどい話です。
しかし、思いもかけぬこの言葉に、ヘーパイストスは喜びました。
ゼウスの娘たちといえば、いずれ劣らぬ美女ぞろいだったからです。
「だ、誰でもよろしいので?」
「わしを誰だと思うて居る? 大神の言葉に二言はないぞ。好きなのを選ぶがよい」
「は、はい! では……あのお方をば」
というわけで、ヘーパイストスが指名したのは、かのアテナさまでした。
戦の女神さまで、気の強いきりりとした美女でもあったアテナに、ヘーパイストスは、かねてより密かなる恋情を抱いていたのです。
「生まれつきのこの不細工な面ゆえ、言い出すこともできずに居ったが……これぞもっけの幸い! 父親の不始末をだしに、体よくあの娘をいただいちまおう。ひっひっひ……」
というわけですが……
「ちょっと待った!
これではゼウスのスケベ話ではなくて、ヘーパイストスの……」
などとは言いっこなしです。元のお話がそうなってるんですから。
語り部のわたくしにはどうすることもできません。
という次第にて、お話は更に続きます。
チビでブサイク、おまけに○○○にもなってしまった哀れなヘーパイストスが、みごと念願の美女、アテナをモノにできるか?
はてさて?
その結果やいかに……???
Posted at 2007/02/12 14:45:45 | |
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2007年02月12日
はい。という訳にて……
最初のテーマは、最高神たる大神ゼウスの「どすけべ」ぶりに関するレポート!
ではなく、「なぜ彼がそんなおかしな神さまになったのか」にまつわる逸話です。
ちょいと長いので、お話の節目ごとに小分けした形にて、お伝えして行くことにいたしましょう。(^^)
ある日、オリンポスの神々は、いつものように宴会を開いておりました。
それ自体は、特に珍しいことでもありません。
毎日「太陽の馬車」で天を駆け回らなければならないヘリオスやアポロン(何で太陽神がふたりいるの? などとは突っ込まないように。とにかくふたり居るんです。ギリシアには)らは別として、一般的な神々は、そう忙しいわけでもないのですから。
人間どもが貢いでくる供物に舌鼓を打ちつつ、酒でも食らっている他、特にする用事もなかったのでした。
という次第にて、最高神たる大神ゼウスもまた、いつものように飲んだくれておりました(側に美少年のガニメーデスが居たかどうかは定かではありませんが、たぶんその逸話よりは前のことであろうと思います)。
さて、いつになく量を過ごしたゼウスさま、酔った勢いに任せて、鍛冶屋の神さまのヘーパイストスにからみかかりました。
「おう、な~にをそんなにくら~い酒飲んでやがるんでえ! 俺さまの酒がまずいとでも抜かすのかぁ? おいこらぁ! 何とか抜かせぇ! ヒック!」
まあ、まさかこれほど下品でもなかったでしょうが、似たような意味のことを言いつつ、冗談交じりに角力を挑んだことは確かだったようです。
「お、およし下さいませ! わたくしごときが、あなたさまのお相手を務めるなど、どだい無理なお話にて……」
と、ヘーパイストスが言うまでもなく、力でゼウスに勝てる神さまなど、この当時のオリンポスにいるはずもありません。かつての巨神(タイタン)族の連中ならいざしらず、いわゆる「オリンポスの神々」ってのは、皆かなり小ぶりになってしまっておったのですから。
「えい、やかましい! うぬれのような奴は、こうしてくれるわ!」
「のわぁ~っ!」
哀れヘーパイストスは、すっかり酔いが回って大トラ状態となったゼウスに、勢いよく投げ飛ばされてしまいました。
ひゅうう~
ヘーパイストスの小柄な身体が宙に舞い、風を切って、雲のむこう、はるか地平の彼方へと消えて行きます。
何を大げさな!
などと思ってはいけません。
これは神話で、投げたのはおそれおおくも大神ゼウスさまご自身であらせられたのですから。
雲の彼方はおろか、成層圏を抜けて宇宙空間まで飛んでいったとしても、少しも不思議でも何でもなかったのでした。
結局、ヘーパイストスは何千里も離れた、とある小島(伝承に拠ればレムノス島)に墜落し、したたかに激しく全身を打ちつけてしまいました。
ベキボキバキボキ! グシャグシャのグシャ!
全身打撲、打ち身ねんざに骨折のフルコース!
となってしまったヘーパイストス。
いかに神さまでも、これではたまりません。
とうとう彼は、そのまま○○○(←足が不自由なことをさす、古風な差別的表現)になってしまったのでした。
「あ、あんまりだぁ! 俺がいったい、何をしたってんだ!」
あーあ、やっちゃいました。大神ゼウスさま。
ヘーパイストスの怒りも、至極ごもっともな話ですね。
というところにて、次回へと続きます。(^^)
Posted at 2007/02/12 12:06:10 | |
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