ぶらぶら日記〜キュウヒャクジュウイチ

ぶらぶらで、うちのママちゃんは東北のど田舎のばあちゃんにもかかわらず、私のクルマの名前を知っています。特に日常会話に『ポルシェ』があたりまえのように出てくるのには驚かされます。

このばあちゃん、ポルシェが最初からなんだか外車だということは知っていた。なぜなら左ハンドルだから。昔、アメ車が国産車よりもバンバカ走っている所に住んでいたから、若い頃から左ハンドルは外車ということを知っている。しかし現在、『外車』とはいわないで『輸入車』ということは知らない。
アルファ ロメオGTVは、右ハンドルだから国産車の見たこともないポンコツだと思っていた。ポンコツは正解だが、納車に来たクルマ屋さんの目の前で、『おまえ、こんなポンコツ買ったのか！』と言っていた。悪気のない素直なおばあちゃんだ。GTVを『グワァー』と呼んでいた。一瞬『ジャガー』に聞こえるがグワァーとは排気音だ。
ジムニーはスズキだとわかっている。何たって雪国ですからジムニーの生息数はやたらめったら多く、ロングライフ商品なので新旧入り乱れて公道を走っている。ただし、どれが新型でどれが旧型かまではわからないのは、ジムニーに詳しくない人はみな同じレベル。こちらは『ドットドット』と呼んでいる。これは先代の2ストジムニーの排気音から付いた呼称をそのまま継承しているが、4ストだからあれほどまでにうるさくはない。
トヨタのセルシオは、昔我が家にカローラがあった関係で知っているがセルシオ（CELSIOR）の英語が読めなかったが、トヨタさえ分かれば話は通じる。『白い車』と呼んでいる。昔、クラウンのキャッチコピーに確か『白い車』というのがあったような気がするから、自分が若くて美人だった頃を思い出しているのだろうか。息子の自慢の美人ママも、今では田舎のばあちゃん特有のヘアースタイルである、奈良や鎌倉の大仏様のようなパンチパーマ風グルグルパーマをかけている。あれは正確には螺髪（らほつ）という。しかし、正式名称だからといっても、美容院に行って『今日はどういう風にします？』と聞かれて『じゃあ今日は螺髪にしてください』と言っても話がさっぱり通じないだろう。まあ、髪型も紛らわしいが、セルシオもジムニーも共に白いのが少々紛らわしい。
さてポルシェ。ばあちゃんは長いことポルシェが車名だと思っていた。まあ、世間的にもそれで話は通じるので問題はないのだが、ある日庭の家庭菜園で仕事をしていた時に、横に駐車してあるポルシェの後ろに『911』のエンブレムを発見した。さすがのばあちゃんも、クルマの後ろに車名のエンブレムが貼ってあることくらいは知っている。それ以来ばあちゃんは、『ポルシェ・キュウイチイチ』を、『ポルシェ・キュウヒャクジュウイチ』と呼んでいるが、それもあながち間違いではなさそうだ。
『911』からは同時多発テロ『9・11』を思い出すらしく、『あんた、こんな縁起の悪い数字のクルマに乗っていて、よく薄気味悪くないわね？』と言う。それもそうだなと思う。
しかし、『911』は数学の世界では孤高の数、私の好きな素数である。




リアのエンブレム『 911 40 Jahre 』