
今のホンダはつまらない。
長らくそう評されているし、私もそう評してきた。
先日、軽スポーツカーのS660が発売された。
ミッドシップという独自性を持った唯一の本格派軽スポーツと言っても良いかもしれない。
けれど、私はこの車に何も感じなかった。
公式には違うとされているけれど、結局この車はビートの再来でしかない。
軽ミッドシップという提案も、結局はビートと変わっていない。
かつてホンダは、レジェンドで乗用車の280PS自主規制を崩した。
おかげで、国産車が輸入車と同じ土俵に立てる土台ができたと言っても良い。
私の愛車が313PSという最高出力を誇るのも、あるいはホンダのおかげかもしれない。
一方、軽自動車には64PSという自主規制がある。
技術は進歩し、軽自動車の性能だって上がったことだろう。
軽自動車の税額は上がり、無理に縛りをきつくする必然性もなくなったのではないだろうか。
だからこそ、私は、ホンダに期待していた。
つまらないと評しながらも、それでもホンダに、欠片の面白さを、挑戦心を、世界を変える力を、期待していた。
けれどホンダは64PSの壁を超えられなかった。
超えなかった。
結局、S660は、スズキ・アルトターボRSと似たようなスペックのエンジンを積みながら、アルトターボよりも200kg重い、つまり遅い、車でしかない。
ゆえに私は、S660に欠片も興味をもつことができない。
けれど、意外なところでホンダに光が見えたように思える。
私はミニバンには興味がない。ましてや5ナンバーのハイト系ミニバンなど、本来なら見向きもしない。
しかし、新型ステップワゴンは違う。
見た目は平凡だ。ノアとセレナと旧型ステップワゴンを足して3で割ったようなデザインだ。けれど、ホンダにデザインを求めるのは間違っているだろう。
この車には旧型の2.0Lエンジンに代わって1.5Lターボエンジンが搭載される。
一見したスペックは従来モデルや、あるいは並み居るライバルたち(ノアにヴォクシー、セレナに、エクス…エスク…なんとか)と大して変わらない。
けれどターボ故に、最大トルク発生回転域は1,600-5,000rpmと非常に広い。
重いミニバンに必要なのは、扱いやすいトルクだ。
確かに、国産ダウンサイジングターボの先鞭をつけたのは日産かも知れないし、量販モデルに初めてダウンサイジングターボを載せたのはスバルかもしれない。トヨタだってレクサスのモデルやオーリスにダウンサイジングターボを載せている。だからホンダは全く新しいとはいえないかもしれない。
けれど、今、日本で売れているのは軽と5ナンバーミニバンくらいだ。
そんなモデルに、重い車に合った合理的なダウンサイジングターボを載せたホンダを、私は賞賛したい。
ジュークのダウンサイジングターボも、トヨタのダウンサイジングターボも、あるいはスバルのダウンサイジングターボも、上級志向のモデルに搭載されている。
だから、量販車であるステップワゴンの、それも全グレードに、1.5Lという日本市場に合った排気量のダウンサイジングターボを載せたホンダこそ、あるいは、ダウンサイジングターボ後進国である日本にダウンサイジングターボを普及させる切っ掛けとなるかもしれない。
そして、そうやって他のメーカーに先駆けることこそ、ホンダの醍醐味ではないだろうか。
ホンダの本質が、トヨタの尻を追いかけるだけではないということを、今後見せて欲しいと、切に願う。
Posted at 2015/04/23 23:14:45 | |
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