2014年02月28日
原子力発電所が停止し,現在,日本の電力はそのほとんどが化石燃料を原料とした火力発電に頼っています。
では,火力発電による発電単価ってどのくらいなのだろう。
固定費とか税金とかややこしいものは一切抜きにして,燃料費のみで考えてみた。
各電力会社は,燃料費調整単価の算出根拠をHPに記載しているので,これからあらっぽく計算してみますね。
燃料費調整単価における燃料費は,過去3ヶ月の貿易統計における原油,LNG,LNGの輸入価格の平均値に基づき算出されています。
これに,各電力会社の電源構成比率などを加味して,各電力会社の平均燃料単価(原油換算)を算出しています。
各電力会社により,過去3ヶ月の集計対象が若干異なるようですが,大雑把に各燃料ごとの単価は以下のようになっています。
原油:72,200円/kl
LNG:85,400円/t
石炭:10,700円/t
うーん,単位が違うのでどれが安いのやら高いのやらよくわかりませんね。
原油換算表で,全て原油換算してみます。
原油:72,200円/kl
LNG:60,600円/kl
石炭:14,300円/kl
うんうん,これなら単純比較できますね。
原油を燃料とする石油火力は一番コスト高くて,石炭だとその五分の一で発電できそうです。
つまり,石炭火力の発電比率の高い電力会社は,平均燃料単価が安く済みそうです。
その代わり,石炭火力はCO2排出量が多いので,環境には厳しいんですけどね。
とにかく,各電力会社の最新の平均燃料単価をHPで調べてみると,以下のとおりでした。
北海道電力:37,900円/kl
東北電力 :36,300円/kl
東京電力 :54,800円/kl
北陸電力 :28,800円/kl
中部電力 :43,200円/kl
関西電力 :47,700円/kl
四国電力 :31,100円/kl
九州電力 :40,400円/kl
沖縄電力 :29,400円/kl
かなりのバラツキがありますね。
特に東京電力は石炭火力が少ないことが一目瞭然ですね。
さて,この原油換算した燃料から単位燃料あたりどの程度の電力量を発生させることができるのかを考えてみましょう。
原油の発熱量は約38.2MJ/klなので,発熱量1MJあたりの単価を求めてみます。
北海道電力:0.992円/MJ
東北電力 :0.950円/MJ
東京電力 :1.435円/MJ
北陸電力 :0.754円/MJ
中部電力 :1.131円/MJ
関西電力 :1.249円/MJ
四国電力 :0.814円/MJ
九州電力 :1.058円/MJ
沖縄電力 :0.770円/MJ
発熱量と電力量は,理論値として1kWh=3,600KJなので,熱量が全て電力に変換されたとすると,各電力会社別の燃料単価は,
北海道電力:3.57円/kWh
東北電力 :3.42円/kWh
東京電力 :5.17円/kWh
北陸電力 :2.71円/kWh
中部電力 :4.07円/kWh
関西電力 :4.50円/kWh
四国電力 :2.93円/kWh
九州電力 :3.81円/kWh
沖縄電力 :2.77円/kWh
実際の発電効率は50%程度でしょうから,単純に上の金額を倍にした金額を燃料単価としてみます。
北海道電力:7.14円/kWh
東北電力 :6.84円/kWh
東京電力 :10.34円/kWh
北陸電力 :5.42円/kWh
中部電力 :8.14円/kWh
関西電力 :9.00円/kWh
四国電力 :5.86円/kWh
九州電力 :7.62円/kWh
沖縄電力 :5.54円/kWh
やっぱ東京電力はずば抜けて高いですね。
では,この電気がいくらで販売されているかいくつかの電力会社の料金を見てみましょう。
ややこしいので,基本料金とかは無視しますし,かなりあらっぽい数字を使います。
まずは,一般家庭の代表的なところから。ちなみに後ろの( )内の数字は燃料原価率です。
東京電力従量電灯B(第3段階):29.1円/kWh (35.5%)
北陸電力従量電灯B(第3段階):22.3円/kWh (24.3%)
沖縄電力従量電灯(第3段階) :29.04円/kWh (19.1%)
沖縄電力は基本料金がない分ちょっと高めの料金設定となっていますが,それでも燃料単価から考えるとやっぱりちょっと高めなような気がしないでもないですね。
逆に東京電力は,燃料費が占める割合が高いですね。
このあたり,販売電力量の違いが大きいのでしょうね。いっぱい売れれば薄利多売が可能ってやつですね。まぁ,燃料原価率35%が薄利なのかどうかはわかりませんが。
次に,工場とかで使用する高圧電気の場合を見てみましょう。
東京電力高圧(500kW以上の夏季):15.34円/kWh (67.4%)
北陸電力高圧(500kW以上の夏季):10.22円/kWh (53.0%)
沖縄電力高圧(500kW以上の夏季):13.55円/kWh (40.9%)
家庭用と比較すると,燃料原価率に倍くらいの差が・・・。
工場とか大量に電気を消費するところにはかなり安く販売しているようですね。
原価率ってどのあたりが適正なんでしょうかね?
他の商品の原価率を少し考えて見ました。
まずは小麦粉。
輸入小麦政府引渡し価格(円/kg)は54.25円。
これが1kg売りの小麦粉になると5,000円程度で販売されているようです。
って,原価率1%なの?
次は自動車。
ありえないけど全部鉄で出来てると仮定して,単純に車1台1.5tとしてみます。
材料費をなるべく高く算出できるよう,SUS鋼板の単価(300,000円/t)で計算すると,450,000円/台となりました。
これが1台1,500,000円で販売されているとすると,原価率は30%。
ちなみに,色んな商品の原価が掲載されているサイトがありましたので,URL貼っておきます。
http://narikin.gozaru.jp/f5.html
さて,この高いと言われている電気料金。いったいおいくら位が適正なんでしょうね?
ちなみに電気料金が安いと言われているお隣の国では,電力は国策企業であり原価率は90%を超えるとか。
また,こちらも電気料金が安いと言われているフランスですが,こちらも政府が持ち株80%以上保有しているそうで。しかも電力のほとんどは原子力。
アメリカも電気料金が安いのですが,こちらはシェールガスなどもあって燃料単価が日本より断然安いそうな。
日本の電気料金を下げるためには,
・国有化
・安い燃料をなんとかして調達
のどちらかってことになるのでしょうかね?
もちろん,各電力会社の経営改善にも期待したいところですが,民間企業ですから利益を出さなきゃいけないわけだし,原価率をどこまで上げられるのか。
Posted at 2014/02/28 17:09:33 | |
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