特別な思い入れが無ければ 付き合う事が出来ない
触れては見たいが 触れたくは無い
憧れはあるが それは誌面や画面の中・・・
話は遠く遡る ある青年がAlfa Romeoを知ろうとしていた
知るために青年は 164と言うAlfa Romeoを手にした
本当に深く考えずに好奇心と興味本位 それだけだったのかも知れない
その青年は事もあろうに ヴィンテージなABARTHとAlfa Romeoと生活したいと願った
青年はバイクにも乗っていた 空冷のDUCATI・・・どうやらイタリア人にでもなりたいらしい
青年の頭の中はこうだ
「気候の良い時期のワインディング イベント参加の時はABARTHで」
「普段の足と食事や旅行なんかはAlf aRomeoだな デートの時もAlfa Romeoは良い」
「DUCATIは乗りたい時に乗るんだ」
まったく世間を知らない青年は甘い夢を見た・・・
こんなに上手く事が進むはずもない Alfa Romeoは青年とは向き合うつもりは無かったらしい
「嘘だろ・・・こんなにも早く 俺を裏切るのかよ・・・」
その時は164を復活させたい気持ちだけで もう1台車両ごと手に入れ部品取りに
だがそれも上手くいかなかった 164の故障はエンジンであったが
自分と普通の修理工場のオジサンとで長い時間をかけてOHは完了したのだが
雨ざらしで長期放置された赤いボディーは見るも無残にクリアは剥がれアルファピンクになっていた
忙しい合間にエンジン修理を優先していて 車体の方はほとんど何もしなかった報いだろう
「あのV6をもっと堪能したかったな・・・みんなが言う通りAlfa Romeoってダメなのか・・・」
青年は意気消沈してAlfaRomeの事など もう考えたくも無かった
だがそれはたった3日しか続かないのであった
”逆三日坊主”とでも言うのであろうか 青年は書棚の扉を開けた
そこで手にした本はAlfa Romeの書籍であった 何冊も何冊も取り出した
何かを調べる為に・・・いや調べると言うより寧ろ触れたかったのだ
Alfa Romeo最後のFRにして3ℓV6の集大成とも言うべき1台の怪物に・・・
もうどの書籍も同じ所ばかり読んでいるのでボロボロになっていた
「気になって気になってしょうがなかったんだ 164を買う切っ掛けになったのだって
こいつの存在があったからだ 日に日に気持ちが高ぶる 我慢なんてしていられない」
ある年の12月の日曜日だった 青年はついに販売店まで見に行く事を決心した
そのショップには2台あった 選べる事が良いだろうと言う判断により目黒まで行ってしまった
そうAlfa Romeを・・・V6が搭載されているSZを・・・
そして販売店に着いて1時間もしないで契約してしまったのである
納車日は12月24日クリスマスイヴだった お店の人が気を効かせてくれたのだろう
だが別にプレゼントされた訳でもないので そのサプライズは大して嬉しくも無かった
スタッフから注意点など一通り説明をされたがほとんど覚えていない
もうすぐ走りだしたい衝動に駆られていたからだ そして運転席に滑り込み中を見渡す・・・
「やっぱり洒落てやがるな コイツの内装は」
納車の手続きが終わり いよいよお店を後にする時が来た
やたら緊張するのが分った 手には若干の汗をかいている
小さなクローバー型のキーを捻りスターターを回すと 普通では無い何か違う空間がそこに生まれた
バルクヘッド越しに聴こえる”カチッカチッカチッ”と言う機械式時計の様なメカニカルノイズ
後方からはおぼつかないアイドリングの164とは全く違う排気音
確実に聴こえるのだがボリュームは小さめである
何ともポジションが合わないシートを ”なり”に合わせ クラッチを踏みこみ
やたらストロークがあるシフトを1速の位置に グーッと押し込むように入れ
スタートさせようとアクセルを踏み込むと さっきまでの機械式時計の様なメカニカルノイズは
打楽器の様にリズムを刻み始め インジェクションながら木管楽器の様な吸気音を奏で
背後より遠く聴こえてくる排気音は さながら管楽器の様に吠えだし
車内にいる物をまるで”オーケストラの古典派二管編成の演奏”の様に包み込むのである
青年は目黒通りをどう帰って行ったのか 環八をどう走ったのかまったく記憶に残していない
記憶に残るのは”自分が指揮者になった”オーケストラの演奏とあの甘いフレグランスの香り
伊達な内装と奇怪な形のフロントガラスから見えるフロントフードの峰だけであった
「こいつはAlfaRomeなのか? 一体これはなんだ・・・」
そして青年は今頃気付くのである
「これがAlfa Romeo・・・”特別な”・・・ 現代の・・・”Sprint Zagato” ・・・」
そして青年は深々とAlfa RomeoとZagatoのエンブレムに向かって頭を下げた
CHAN YOKOさんが言いました 「Sei davvero speciale Zagato.!!」
「ザガート 君は本当に 特別なんだ!!」
【あとがき】
ストックの状態だとさほど速い感じはありませんが 官能性はかなりの物でした
前後の重量配分のせいなのか足回りのせいなのか
山道で2回ほどスピンした事があります 本当にその場でクルっと回ります
ドリフトも割と容易にこなせます ですがタイヤが古いと危険な気がします
私は排気系と足回りと全然合わなかったシートを変えましたが
何もしないでそのまま乗るべきだと思います
所有している期間は4年くらいでしたが 余り乗る事は無かったと記憶しています
ですが とても素晴らしい自動車であったと私は断言致します
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