
いよいよ決戦の朝が来た
フランスのかぜは凪いでいた。今はまだ晴。予想では今夜半から雨。しかし 予報などあてにはならない。雨でも晴でも万全の態勢で臨むのみ。
時は2025年。長く続いた ロータリーマスター(シニア)との戦いもついに最終話。
決戦のために用意した最終兵器が冒頭のマシンだ。 991GT3.生まれながらのレーシングカーは行動では走れない。すでに10年物の中古車だが これで最新のハイブリッド勢やEV勢と勝負する。
ワークスに勝てるはずはないにしても ロータリーマスター(シニア)にだけは負けるわけにはいかない。鈴鹿での汚名をいまここで晴らす。決意した男は ゆっくりとレーシングスーツに身を包み 深く屈伸。もはや時代にマッチしていないと思われた ルマンスタート が今年は採用された。すでにつなぎは旧来のスーツではなく 山ほどパイプの通った宇宙服のよう。とても外で走るためのものとは思えない? しかし 走らなければならない。自らの脚で。マシンまで。
2つ後ろの位置には青いマシンがあるはず。すでに中身はわからない。4ローターをそのまま仕込んでいるとのうわさもあるがデマだろう。フレーム自体を新調しモノコックですらないボディだという。屋根でも切ってみるの界とも思うが ひとのことだ。
エンデューロにでるのもこれで最後にしよう。からだがついてゆかない。もう62歳。糖に限界を超えている。やつはだっさらして自分の設計事務所を立ち上げた。設計なんか全然しないで 地価の作業場の片隅で 日夜 青いマシンと格闘しているらしい。基本 たいしたレース資金はないので なんでも自分でやる。さすがにフランスにはメカニックを帯同させたようだが。
ポールポジションは マクラーレン。一発の速さを発揮したF1ドライバーのものだが 耐久レースではあまり意味がない。二番手にフェラーリハイブリッド。総合1000馬力とも伝えられる疎開物は 1680kgしかない。そして 3番手にワークスポルシェ919.最大馬力では一歩譲ってもトータルバランスと燃費でアッとするとのうわさのマシン。その後方にシルバーアローの電気自動車。瞬間的なパワーは他を圧倒するが はたして 最後まで持つのか? その後方にジャガー。そしてアウディ。
日産が控える。予選を失敗したトヨタは18位スタート。そして どうどうの予選22番手に 復活なったマツダの4ローター 水素ハイブリッドが連なる。
不参加組は BMW プジョー フォルクスワーゲン Volvo といったところか 結構なオンパレード
みなそれぞれの最新技術を投入されている。かつて5kmを誇った ストレートも3つに分割され 1-2kmの区間しかない。そこで 380km/hオーバーの速度を狙いながら リッター10kmというとんでもない数値を狙う。
胸囲なのは速度ではなく燃費。プラグンハイブリッドの燃料供給速度に合わせた超急速充電用リチウムイオンバッテリーシステム。前後にそれぞれ150-180馬力を付加的に加えるこれら4つのモーターは旋回時に積極的に回転数に作動を起こさせる。その違和感は半端なものではないのだが一流のレーサーはそれをも手足のように扱う。ほとんど車なのか宇宙器なのかわからない次元。
それでもレースのカギを握るのは やはり タイヤ。去年までのワンメークを今年は解除した。ダンロップが持ち込むスリックとそれに挑む横浜 ピレリ ファイアストーン。石橋のスペシャルタイヤを用意されたNSX-HR1.3.6LまでチューンされたV6で、ハイブリッド化したそれで 怪物たちに挑む。
レースは結果がすべてというけれど これだけのマシンの饗宴は今後50年はないだろう。今年はカーニバル。祭りなのだ。世界中の機械すきが一堂に会した世界一贅沢なまつり。21世紀初頭の一大祭りは伝説となるだろう。
そこには記録には残らなくとも 青いロータリーシニアと ポルシェ991GT3のバトルが確かに刻まれる。戦闘はどれくらい続くかわからないが 最終的には体力勝負。バトルの状況になったら 結果などそっちのけで ひたすら全開。並走したまま3週まわってもよい。きっとコースアウトするだろうが。
そして おっさんたちの狂気の祭は終わる。
フランスの片田舎のちいさなスナックで はじめて ロータリーマスターシニアと どんがら1963はのんでいるのかもしれない。10年にも及ぶ因縁話に花が咲く。周りのフランス人にはちんぷんかんぷんでも 楽しそうな2人を見て みんな陽気になる。
そして フランスおい中にこだまする その歌は 、、、、、、、、、、、、
Posted at 2013/11/09 09:49:16 | |
トラックバック(0) |
雨の土曜日 | 趣味