
どんよりとした曇り空のした 有田みかん1号(おいらのFIT RS) は そのオレンジの車体を螺旋状の道を 延々と登り続けていた。
11階に相当するその高さで、進入口を見つけ、そしてそこへ入り込む。
ゆっくり ゆっくり 右回りで少し大きな円状の道路を進むと ほどなく駐車可能な位置を発見、おしりからそこへ 有田みかん1号は静かに 停車し駐車した。
ここは 千葉そごうの駐車場。
おおきな円状を回る車に気をつけながら 約半周したところに エレベータの入り口を見つける。4台のエレベータが 現在の位置を 発光ランプで知らせている。3階、1階、B1階、7階。
かなり待ったところで11階に到達したエレベータの扉が開いた。大量のお客さんがあふれた。
大きな箱になだれ込む 入場してゆくひとびと。どんがらもそのひとりだ!
箱は満員電車のようにすしづめ状態。箱は自動的に4Fまで下がっていったのだ!
4階で開いた扉からひとびとがなだれうつように おりてゆく。どんがらもそのひとりだった。
ふとそのエレベータのそばに制服姿の若い女性が数名いることに気づいた。エレベータガールだ。今はなき木更津そごうでは けっして見られなかった エレベータガール。さすが 千葉市がほこる千葉そごうだ!
おおくのひとびとが一定の方向へなだれてゆく。やくわからないがどんがらも その流れに乗った。
そう4階の売り場に向かっているのだ!
どんがらは 千葉そごうの構造に詳しくない。それでも、B1から4階までと10階までがひとつづきではなく 4階を介して別の建物へ移動しなければならないくらいのことは理解していた。
どんがらは4階でいったん外に出た。上方でなにかが動いた。それは千葉市モノレール。サイドに絵が描かれているが 下方からの視点ではその姿は正確にはわからない。
どんがらは4階の外から 別のガラス製の自動ドアから別の建物内部へ 侵入した。ここからエスカレータへの道くらいは 案内板で理解できる。
エスカレータで7階に到達したどんがらは売り場をひととおり見回した。そして 目標地をみつける。ゆっくりとそちらに向けられた足。目は周囲の店を見回している。ウインドウショッピングとか言うやつだ。
目的の売り場に到達したどんがらはそこにいた店員さんに告げた。
『わたくし どんがら と申しますが 斉藤さんいらっしゃいますか?』
そこにいた 30代と思しき女性店員は答える。
『斉藤はほんじつはお休みをいただいております。ご用命はなにでしょうか?』
『えー 電話で四季布団の在庫があることをうかがい 購入にきた どんがら なのですが、、、』
『えーー、』
といいながら 女性は注文伝票と思われる用紙をくりはじめた。すぐにどんがらの注文予約に到達し、
『はい、ご注文いただいている どんがら さまですね。』
『そうです』
『このたびはありがとうございます。』
その店に置かれている3種類の四季布団を眺めながら 女性は言った。
『シングルでよろしかったでしょうか?』
どんがらのこころに 小さないらだちがおこる。
『そんなんしらんやん。 先日 斉藤さんに試しに寝かせてもらったやつじゃ。』
ちょっとあたふたした女性は 再度注文伝票で確認し、
『シングルでございますね!申し訳ありませんでした。
すぐに用意させていただきますので こちらにおかけになってお待ちください。』
ちいさな デザインのいい 一人がけの机といす に腰をおろした どんがら。
ふう、ちょっといらっとしてもうたな!こころを落ち着かせんと、、、。
腹式呼吸5回で こころは平穏を取り戻した。
ほどなく 四季布団を持ってきた 女性は
『当社のカードはお持ちでしょうか。』
『前もってたけど、もうなくしてしまいました。』
『新しくおつくりさせていただくこともできますが? 今キャンペーンさせていただいておりまして 4%のポイントがつきますが、、、。通常は2%なんですが キャンペーンということでして。』
『ほんじゃ つくります。』
『ありがとうございます。では こちらの申込用紙に 住所、氏名などをご記入ください。』
どんがらは 目の前にある 半球状の黒いしたささえに ささっている棒を抜き取った。ボールペンだ。氏名、住所、電話番号などを記入してゆくどんがら。
目を上げると 濃いむらさきのカバーに四季布団をいれている女性店員が目にとびこんだ。
そう、四季布団とは エアウイーブの敷き布団のことであったのだ。
どんがらはこころでつぶやいた。こんなでかいもんせおって あの激込みのエレベータに乗って有田みかん1号までたどり着けるじゃろか?
『それではこちらが会員カードになっております』
そして 請求伝票を静かにさしだす女性店員。
そこには、約9諭吉の金額が書かれている。先日、銀行で9諭吉をおろしていたどんがらは
財布から一掴みの諭吉を抜き出し、数え始める。1、2,3,4、、、、、。9枚まで到着したらもう一枚のこっていたので それを財布にもどす。9枚の諭吉を 支払い用の薄い容器においたどんがら。約2秒の間をおいて 女性店員は静かに数え始め
『確かにお預かりいたしました。 それでは 今から ポーターを呼びますので 少々お待ちください。』
どんがらは驚いた。
ポーター!
そんなひとまでいるのか!
ほどなく、制服姿のわかい男がやってきた。
どんがらはつたえる。
『11-29』です。
『わかりました。11階でございますね!それでは参りましょう。』
女性店員は別れの言葉をかけてきた。
『ありがとうございました。また よろしくお願いいたします。』
ポーターの若者に導かれるように つきそうどんがら。
ポーターは話しかけてきた。
『29ですとエレベータのちょうど反対側になりますね。』
そうなの?円状の道路をくるくる 車と徒歩でやってきた どんがら にはさっぱりわからなかったが?
ポーターの若者はふたたび 歩きながら 再び話しかけてきた
『シキフトンはどうですか?』
『ちょっと上に乗ってみただけだけど これはすごいね。ちょっと 味わったことない感覚だったよ。プロのスポーツ選手もいっぱい使ってるみたいだったし。快眠のためにね。石川カスミさんとか浅田まおちゃんとか?錦織圭くんもそうだったじゃなかったっけ!』
『そうなんですね。上下でできてるんですか?』
『いやいや シキフトンでしょ。四季と敷きをかけてあるんでしょ。』
『なるほど』
ほどなく エレベータの入り口へ到着。そこには
従業員専用エレベータ
と書いてあった。
そこで、ふと気づいた。
そういえば、一回も外に出なかったな。どこをどう通ったかさっぱりわからん。
エレベータは11階で開いた。右回りで 有田みかん1号に達した。鍵を開け リアハッチを開いた。
ここにエアウイーブたてに入れる ポーターの男性。
『いやいや どうせ倒れるだろうから横にしといて。』
ポーターの若者はぺこっと頭を下げて戻っていった。
ふう、9諭吉の4%だから 大体 3600円。どんがらは ふたたび通路をとおり 6階でエスカレータを降りた。約2500円のポーチをつかみそこの店員へ手渡す。
『これください!』
若い女性店員は
『ご試着されますか?』
『それじゃ おねがいします。』
女性店員は製品の紐の長さを調整しどんがらの腰にそれを巻きつけようとしたら ひもがたらない。 そう、どんがらはでぶなのだ。
さらにひもを伸ばす女性店員。
どんがらのこしにそれは丁度よい長さに調整された。
この製品はプラスチックのとめ具でとめるような構造だ。適度に前の位置に袋部分を配置するとえらい後ろに止め具がきてします。こんなところじゃ 手が回らん?
『こんなんじゃ 取り外しできないんですけど?』
『回すんですよ!』
なるほど、前でとめてから 袋部分を前にもってくればいいわけだ。
ポイントカードで支払ったどんがら。
3600-2500=1100
消費税分があるのでもうちょっと少ないはず。
どんがらは10階に向かう。
そこには いろいろな飲食店がひしめいていた。時間は12時 昼時だ。 人々が店の外のいすに長蛇の列をなしていた。いっぱいある店のかなりの店がこの感じだ!
ひととおり飲食店をみてまわって どんがらは 千房 の前の列の最後に腰を下ろした。そごうの 千房 にきたのは約3年ぶり。3年前には 豚玉は最低でもモダン焼きだったのに いつのまにか豚玉としてラインナップされていた。
3年前に
『豚玉がないなんて! お好み焼きの基本は 豚玉でしょう。こっちは大阪の出で 30年は 千房 さんとはおつきありがある。こっちに来てからも 関西方面の出張帰りには 決まって 新大阪の駅中にある 千房 で豚玉くってたのに!!!』
過去の記憶がよみがえる。
あんなこともあったなあ。
10分ほどして 店の中に案内された。お好み焼き屋にはよくある鉄板のついた机だ。
ふたたび10分ほどたった。
若い女性の給仕が1枚の豚玉を運んできた。
『マヨネーズはどうされますか?』
『かけて!』
給仕は慣れた手つきで細く押し出された マヨネーズをかけてゆく。
そして切り分けようとしたその瞬間どんがらは叫んだ!
『十字切りにしてね?』
すこしポカンとする給仕。
『縦横十字に切るのよ!』
『えーーと 6枚くらいですか?』
『そうじゃないよ。この店では何も言わなければ ピザ切りするでしょ。十字にきるのよ。大体 3分割くらいに縦横にきるのよ。 大阪ではこういう風に切るのよ!』
ちょっと 戸惑いながら こてできる 給仕のじょせい。
きり終わった彼女は言った。
『このほうが食べやすそうですね?』
彼女が立ち去った後、どんがらは 小さいほうのこてを使って分割されたぶたたまを器用にたべてゆく。ふと横のテーブルの親子をみると 箸を使って不器用に食べている。
どんがらは 豚玉を食べ終わり、未使用の箸と ちいさな取り皿を最初の状態にもどし キャッシャーへ。会員カードを手渡した。相手は答えた
『28円不足です。』
どんがらは28円を支払い店を出た。
計算どおり、、、