2010年03月06日
三菱の軽自動車「i」をベースに電気自動車化した
「i-MiEV」が近所の三菱ディーラーに置かれているのを発見。
試乗も可能とのことだったので、早速乗せていただきました。
プリウスのEVモードで擬似電気自動車状態なら体験したことがありますが、
本当の電気自動車を運転するのは初めてです。
試乗車は「わ」ナンバーで、既に4500kmほど走行していました。
外見や室内は普通のiと大きく変わるところはありませんが、
キーをひねってスタートしても僅かに起動音がするほかは当然ながらまったくの無音。
とはいえ、この程度ならバッテリーの充電量が十分な状態のプリウスでも体験可能。
公道に出てからが本領発揮です。
ディーラー敷地内から公道に出てアクセルペダルを踏み込むと、
ガソリン車より明らかに強大なトルクをもっているのが分かります。
更に深く踏み込むと一瞬シートバックに押し付けられるような感覚すらあります。
その加速感は軽自動車どころか1.5リッタークラスをも超え、
あるいは2リッターNAクラスすら凌ぐレベルかも知れません。
エンジン音の高まりがないため、車内に響くのはロードノイズおよび
それにかき消されるかどうかというくらいのモーター音程度で、
静粛性もガソリン車を凌いでいるはず。
この強大なトルクと静粛性、シフトチェンジのないシームレスな加速に加え
i自体の着座位置の高さによるスピード感の希薄さも相まって、
いつの間にかスルスルとスピードが乗ってしまうという印象。
一般道の流れに乗るのに必要な時間はほんの一瞬という感じです。
メーターパネルの本来タコメーターがあった部分にはパワーメーターなるものが装備され、
左端2目盛が「Charge」つまり減速時の回生状況、
そこから右に2.5目盛がグリーンゾーン、残りがパワーゾーンですが、
一般的な走行ではグリーンゾーンの右端まで使えば実用上十分な加速が得られると感じました。
ちなみにi-MiEVの車重は1100kgで、ガソリン車のiより200kgも増加しています。
それだけのハンデを負ってなおガソリン車を凌ぐ走行性能ということで、
モーターの発生するトルクがいかに強大かが伺えます。
それだけのトルクを持ちながらも乗りにくさは皆無。
むしろトルコンATの一般的な軽自動車よりアクセル操作に対するレスポンスなどは
はるかにダイレクトで、乗りやすく気持ちいいセッティングになっています。
iは背が高い車ですが、i-MiEVはフロア部分にバッテリーを敷き詰めている、
すなわち車体の最低部に重量物が搭載されているため重心も下がっているはずです。
これによってコーナリング時の安定性が高まっており、
視点が高いのにグラっとくるロール感がありません。
交差点をそこそこのペースで曲がってみても不安なくクリアできました。
前述の重量増は乗り味についても概ね好影響をもたらしており、
軽という車格に似合わぬいい意味でのどっしりとした重厚感が出ていて
乗り心地も跳ねにくく良好です。
ただし、大き目の継ぎ目などを乗り越えた時などは
さすがに重量増に対してサスのキャパが不足気味かな、と感じるケースもありました。
一方、ブレーキに関しては大いに注文を付けたいところです。
ペダルタッチ自体がスポンジのようにフカフカで心もとない上にストロークも長めで、
かなり踏み込まないと効きませんでした。
これはiそのもののフィールなのかMiEV特有のものなのか分かりませんが、
車重も増加していることですしブレーキはしっかりさせておいて欲しいところです。
というわけで、少なくとも走りという点だけに関していえば、
ブレーキと一部状況下でのサス以外については
自動車としてほぼ問題ないレベルにまで完成していると言えます。
もちろんベースのi自体が持つ特長によるところもあるでしょうが、
EV化によって軽自動車の乗り味が良くなるとは想像していませんでした。
車単体としてみればかなりよく出来ていると思います。
それでは航続距離やインフラ、価格などを考えるとどうでしょう?
まず航続距離について、10・15モードで約160km、
40~60km/h程度の市街地走行でエアコンOFFの場合は約120km、
エアコンONで約100km、ヒーターONで約80kmというのがメーカー発表です。
ディーラーの方も80km程度と言っていましたが、
どうやらエアコンOFFの状態でそれくらいのようです。
(今回の試乗もエアコンOFFの状態でした)
エアコンをONにするとやはり結構な電気を食われるそうな。
試乗で決められた短いコースをぐるぐる走るだけ、
というのは条件的に厳しいのかも知れませんが、もう少し走ってほしいところ。
ちなみに岩手県の納車第一号は新聞屋さんの配達車だそうで、
そういった決まったルートだけを走る用途ならいいと思いますが、
一般家庭の乗用車として使うのにはまだ不安が残る状態です。
インフラについてもまだまだ整備がなされていないと思います。
たとえば岩手では車が生活必需品レベルの地域が結構あるはずで、
そうした地域に住む方の車がEVになればなかなか効果的ではないかと思うのですが、
そういう地域は山間部だったり冬の寒さが厳しかったりするので、
ヒーターを使って峠を越えて雪が降ったらライトを点けて…
というわけで電力消費もやはり多くなるでしょう。
また、自宅から離れた月極駐車場や立体駐車場などを利用する人、
あるいは集合住宅に住む人は自宅での充電が事実上不可能。
このあたりはディーラーの方も指摘していたポイントです。
となると出かけた先で気軽に充電できる設備が整っていない限り
現状の航続距離のまま一般に普及させるのは難しいのでは。
ちなみに充電にかかる時間はゼロからのフル充電の場合
200V電源で7時間、100V電源で14時間、急速充電では80%充電で30分。
もちろんバッテリー残量に応じて短くなるので、
出先で用を済ませる間に充電できるようになるだけでも結構違うと思うんですが…。
価格は459万円。補助金が出るとはいえ安いとはいえません。
この価格でも三菱に儲けはないようですが、
フル充電で100km走るかどうかわからない軽自動車に300だの400だのはちょっと…。
現状でそのディーラーでも数台注文が入っているそうですが、全て法人とのこと。
やはりしばらくは法人用途がメインになるでしょう。
そんなわけで、まだ普及にあたっての課題は色々あると思います。
ただ、繰り返しになりますがドライブフィールに関しては
もうほとんど問題ないレベルにまで仕上がっているのには驚きました。
今年中には日産からリーフというEV専用車がデビューする予定ですが、
そちらのドライブフィールも期待できそうです。
リーフは価格も抑えるようですし。
ただ、リーフも航続距離は大して伸びていないので、
だったらシティコミューター的に使いやすいサイズのi-MiEVの方が
現時点では便利なのではないかと思ったり。
Posted at 2010/03/06 21:52:54 | |
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2010年03月06日
最近デビューした日本車の中で最も車好きの注目を集めているモデル、
といえばやはりホンダ・CR-Zでしょう。
ハイブリッドカーどころか普通の車ですら貴重になりつつあるMTを用意するなど、
エコとスポーツ性の両立を図るべく登場したある意味ホンダらしい1台。
そのスタイリングが往年の名車CR-Xを髣髴とさせることもあり
私もちょっと内容が気になる1台だったので、
近所のディーラーに試乗車が入っていたので、先週末に少し乗せていただきました。
まず運転席に座ってみると、思いのほか着座位置が低くないことに気が付きました。
その見た目からかなり低い位置に座るイメージでしたが、
実際の全高は1400mm弱とスポーツカーとしてはそれほど低い部類には入らないので
着座位置もあまり下げていないのかな、という印象。
前方や左右の視界も十分に広く良好ですが、スタイリングの関係上仕方ないとはいえ
斜め後方の視界は壊滅状態なので左折時の巻き込みやバック時などは要注意です。
ドライポジの取りやすさは問題なし。ちゃんとテレスコもついています。
ひととおりポジションを合わせてスタート。
試乗車はCVTなので特に気を使うこともなく走り出します。
3モードドライブはNORMALにセット。
道路に出て加速するべくアクセルを踏み込んでみると、なかなかトルクフル。
インサイトより大きい1.5リッターの排気量とモーターアシストの恩恵で
一般的な2リッタークラスの車と同等以上のトルク感があり、
エンジンの回転をあまり上げることなく速度を乗せていけます。
インサイトのときも感じた「電気ターボ感」がこちらは更に感じられます。
ターボといってもインプのような高回転炸裂型ではなく、
最近流行の直噴+ターボのような低回転モリモリ型という印象。
ダラーっと登る緩い坂道でも少し踏み込むだけで事足りるので、
日常的な走りではまず不満を覚える場面はなさそうです。
減速→再加速といった場面でもトルクがよくついてくるので走りやすいです。
では高回転域でのフィールはどうか、といきたいところですが、
試乗車が当日おろしたてかつ私が試乗1人目か2人目という状況だったので
さすがに気が引けて全開と高回転はあえて避けたため分かりません(笑)
つまりそういう領域を使わなくても実用上十分な速さを引き出せるわけですが、
それゆえにエンジンの存在感は日常ではかなり希薄ともいえますし、
思わず高回転が試したくなるような雰囲気にも乏しい、というのが正直な印象。
DOHC VTEC、それもタイプRのものと比較するのはいささかアンフェアとはいえ、
EK9のB16BやFD2のK20Aの走り出したら回さずにはいられない
痛快なフィールを知る身としては、ホンダ自らがスポーツを名乗って
投入した車のエンジンとしては少々寂しく感じました。
もっとも高回転を多用するとそれだけ燃費は悪くなるので、
それよりはモーターのアシストを利用して低中回転を使うのが
CR-Zの正しい乗り方なのかも知れませんが。
そもそも、最近の車は比較的低回転でトルクをドンと出して
高回転を使わなくてもそこそこ走れるエンジンを積む傾向にあるような気がします。
もう高回転型エンジンというのは淘汰されゆく時代なのかも知れません。
そういう意味ではCR-Zも時代を読んだ設定ではあるかもしれません。
といいつつ、その急先鋒のようなアウディから高回転型大排気量V8を搭載した
RS5が登場したのはなかなか興味深いところではありますが。
やっぱり高回転まで回るエンジンは気持ちいいですし、
ドイツ人もさすがに捨て切れなかったんでしょうか(笑)
話をCR-Zに戻します。
ハイブリッドカーらしく信号待ちなどではアイドリングストップが作動しますが、
そのストップ時間は大型のバッテリーを持つプリウスに比べると大幅に短く、
一度停止しても信号待ちの間にエンジンが再始動する場面がたびたび見られました。
また、その再始動時には比較的大き目の振動が発生します。
加えて、アイドリングストップ中にブレーキから足を離してもクリープは発生せず
自分でアクセルを踏んでやるかしばらく待つかしないと動き出さないので、
通常のトルコン車に慣れていると一瞬戸惑います。
この辺の洗練性はやはりプリウスに一日の長があるという感じですね。
なお、インサイトで感じられた低速時のスナッチは確認されませんでした。
走行フィールは、コンパクトなボディからクイックで
ヒラヒラと軽快に舞うようなフィーリングを想像していましたが、
予想に反して思いのほかドッシリとした落ち着きのあるものでした。
実際の車重も1200kg弱あるのでそれを考えれば納得。
鈍重という意味ではなく、いい意味での重さがあると思います。
コーナリングについては、コーナーらしいコーナーは試せませんでしたが
全長やオーバーハングが短いので交差点ではクイっと小気味よく曲がってくれますし、
緩いコーナーでは広めのトレッドと低めの車高により踏ん張り感があって
高速コーナーでも楽しめそうな雰囲気でした。
プリウスで話題になったブレーキは特に違和感も特筆するようなこともなく普通。
ただしリコール対策によってスポンジのようになってしまったという
プリウスのブレーキよりは多分しっかりした踏み応えがあると思います。
乗り心地は不快な突き上げこそあまりありませんが、
路面の不整を比較的正直に拾う感じで、上下動が多め。
ロードノイズも少々大きめです。
もっとも、納車後まだ空気圧を調整していないとのことだったので
空気圧が規定値を超えてしまっていた可能性がありますし、
ポテンザRE050Aというタイヤの特性も大いに関係しているはず。
どうでもいいのですが、エコカーに履かせるのであれば転がり抵抗を低減した
ポテンザS001の方が相応しいと思うのですが…。
開発時期と合わなかったのかな。
全体的にはCR-Xを髣髴とさせる見た目とは裏腹に、
どちらかというとヤンチャではなく大人っぽいフィールの車でした。
できればもう少し長く借りて色々な道を走らせてみたかったところ。
ギンギンに飛ばすのではなく、気持ちよく流すくらいの走りが似合いそうです。
インサイトで感じた安っぽさもほとんどなく、
走りも内外装もなかなか上質な仕上がりになっているように思います。
ただ価格もそれなりですね。
本体は上級グレードで250万円ですが、実際に買うと恐らく300万円クラスになるでしょう。
となるとMINIなどの欧州製コンパクトカーも射程圏内なわけで、
最初からハイブリッド一択ならともかく、
キビキビ走りかつ上質なコンパクトが欲しい人には
結構悩みどころなのではないでしょうか。
参考までに、試乗の際に同乗していた営業さんのお話では想定ターゲットは
「通勤用に燃費のいい車が欲しいけど走りも捨てたくない人」だそうで。
えらく限定的なターゲットのような気もしますが…。
どうですかEXISさん(笑)
Posted at 2010/03/06 17:32:44 | |
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