「軽の“本流”としての、全方位的な進化」をテーマに6代目の「ムーヴ」及び「ムーヴ カスタム」がデビューした。
まず基本性能の進化として、先代から継承されるプラットフォームに補強をした、軽量高剛性ボディ骨格「D monocoque」が挙げられる。これにより、優れた操舵安定性と乗り心地、静粛性を実現したという。更にはキャンバーの高剛性化、ロアアームブッシュの改良、中間ビームなどの剛性を高めることで、こちらも優れた操舵安定性を提供しフラットな乗り心地を実現しているという「D suspension」を採用。即ち、この6代目では、今まで軽自動車では妥協されがちであった走行性能と快適性のネガを払拭することにより、普通車からのダウンサイザーをも取り込もうというダイハツの醪である。
「新型ムーヴは普通車からのダウンサイジングをするに相応しい仕上がりか」の検証を本リポートのテーマとしたい。
今回の試乗車の「ムーヴ カスタム」である。カスタムでは、52psと6.1kgmを発生する自然吸気660cc直3エンジンを搭載する「X」と、64psと9.4kgmの直3ターボエンジンを搭載する「RS」の2本立てで、それぞれのグレードには「Hyper」と呼ばれる、LEDイルミネーションアクセントや本革とファブリックのコンビシートが奢られる上級仕様が用意される。この計4グレード展開のうち、試乗したのは「RS Hyper」と「X Hyper」で、両者の違いは大きく3つ。「RS Hyper」はターボエンジンが搭載され、15インチアルミホイールが奢られ、更には「RS」専用のスポーツサスペンションが採用される。それに対して「X Hyper」では、NAエンジンであり、ホイールサイズは14インチ、サスペンションもノーマルである。
最近の日本車は、フロントグリルがコテコテ&ギラギラして厳つい傾向にあるが、新型ムーヴもそれに類漏れず。このデザインが好みか好みでないかは個人の感性次第であろうが、一般的には「カッコイイ」と思われるであろう。エクステリアデザイン上で特筆すべき点は、これまでのムーヴの伝統であった横開きバックドアが廃止され、縦開きとなった点である。狭い場所での荷物の出し入れには横開きドアが便利であったであろうにと思うが、他社でもハイトワゴンは縦開きがほとんどであるから、どうしても横開きでなくてはいけない理由もないのであろう。樹脂ボディで軽量化&コストダウンのメリットの方が大きかったのであろう。
ドアを開けて乗り込んでひたすら驚いたことがある。それはシートのホールド性の高さである。多くのコンパクトカーユーザーに怒られそうであるが、これまで「ベンチシート」なんて言うモノは、文字通り「ベンチ」でホールド性の欠片も無い、コーナーの度に自分で踏ん張って姿勢を保たなければならない、乗っていて疲れる印象しかなかった。それがどうだ、新型ムーヴでは確かにはっきりとしたサイドサポートが存在する。ベンチシートなのに!
インテリア全体の質感も非常に高く、「軽自動車も高級車になったなぁ」とヒシヒシと感じた。具体的には、例えばメーターとメーターの間のマルチインフォメーションディスプレイ。グラフィックもとても鮮やかで細かく、綺麗である。シートにも「Hyper」には本革が使用されていますから。個人的には「Hyper」専用のインパネガーニッシュ色「ギャラクシーマーブル」は奥深いカラーリングだと感じ、失礼ながらも「軽自動車なのに・・・」と感動してしまった。
最初にNAモデル、次にターボモデルと乗り比べたのであるが、走りはどちらも旧型からの進化を感じることができた。その進化は、やはりダイハツが謳っているように、「基本性能に磨きがかかった」と感じるものであって、具体的には「走る」「曲がる」「止まる」がしっかりしたという印象だ。これにはシャーシやボディの剛性が向上したことが最大の要因であろう。
NAエンジンはタウンユースでは全く力不足を感じないが、例えばバイパスへ合流した際にその流れに乗る場合、やはりターボが欲しいと感じてしまう。ここまでは従来の軽自動車のイメージそのままなのであるが、新型では「D assist切替ステアリングスイッチ」なるものがNA車にもターボ車にも存在する。これはステアリングホイールにあり、これを押すことによってエンジン回転数を上げ、スロットルをより高開度に制御するというもの。これにより、アクセルを床まで踏み込んでも、滑るだけで結局回転数が上がらず速度が乗ってこないというCVT車ならではのストレスがなくなった。従って、高速道路やバイパスを頻繁に利用するのでなければ、NAモデルを買ってもパワー不足を感じるシーンが減ったと言えるだろう。
それではターボモデルの魅力が褪せたかと言うと、そうではない。タントやコペンでもお馴染みのターボエンジンは、どのようなシーンでもパワフルに850kgの車体をグイグイと引っ張ってくれる。そんな魅力は勿論あるのだが、特にターボモデルに奢られるスポーツサスペンションは積極的にターボモデルを選びたくなる要素の1つであると感じた。先代に比べて新型ではNA車のノーマルサスペンションでもコーナリングでのふらつきは軽減されたものの、やはりこちらのスポーツサスペンション搭載モデルの安定性には勝てない。段差を乗り越えても、従来の軽自動車にありがちだった「ヒョコヒョコ」した感じはなく、「ポンポン」と乗り越える。「ビルシュタインの足はこんなんだったっけ」とまで言ったらチョット大袈裟だけれども、どことなく入力のいなし方がビルシュタインのそれに似ている。あくまで従来の軽自動車との比較の話であるが。
今更記す必要もなさそうなので詳しくは触れないが、あの有名な「スマートアシスト」は勿論進化しているし、オプションで6つのエアバッグを装備できる。その他にも、ヘッドランプ自動消灯システムや、ワンタッチターンシグナル機能付方向指示スイッチ、エアロワイパーブレードなどなど、ちょっとした違いではあるが、快適性に大きな違いをもたらす充実装備も満載である。
一方で日本のAセグ、Bセグのコンパクトカーは?マツダの新型「デミオ」のようなヨーロッパ武装の硬派なモデルも出て来てはいるが、そうではないモデルは多い。新型ムーヴの進化を見ていると、日本製リッターカーを買う意義を本気で考えてしまった。
Posted at 2014/12/29 10:50:49 | |
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