
不思議な夜だ。今夜は。
いつもどおり残業の後、社を後にする。
有楽町駅前に差し掛かった時、
ふと空腹を感じ、かつお出汁の香りに、
引き寄せられる。
真新しい千円札を自販機へ挿入し、
早く押せと催促するが如き赤く光を放つ
海老掻揚げとじ丼¥460と書かれたボタンをそっと押す。
昼飯のお釣でもらったピン札の代りに出て来た、
540円分の小銭と、海老掻揚げとじ丼と刻印されたチケットを握り締め、
店のドアにそっと触れる。
明るい店内。視界に飛び込んで来たのは、
蕎麦を啜る社の同期。
殆ど完食し、残骸の残る器を見るに、
天ぷら蕎麦だった模様だ。
彼といい、私といい、30過ぎし者がこの時間に揚物を食すという愚行の結末が身に染みていないようである。
もたれるよ。きっと。
久々の邂逅に喜び、あいつの出産祝いと、あいつの歓迎会を兼ねて同期会の開催を約束し、その場を去る。
疲れているが、足取りは軽い。
大きな通りを向こう側へ渡り、新しくできた立派なホテルの前に差し掛かった時、
女性二人組に呼び止められる。
社の美人OL二人組だ。
『お茶でも』と言いかけて、やめる。
軽く笑顔で会釈して別れる。
ガツガツする季節は過ぎた。
だが、足取りはさらに軽い。
駅に到着し、電車を待つ。
滑り込んだ電車が止まりきる前に、
乗り込もうとした車輛に、社の先輩が乗っているのに気付く。
この先輩、嫌いではないが、
帰りの電車はしっとり独りでいたい。
気付かぬ素振りで、そっと次の車両へ乗込む。
帰り道のいろんな出会い。
これを肴に晩酌しよう。
タイミングが少しずれたら、全員であさまで呑んでたかもね。
スライディングドア、そんな映画を思い出した。
今の自分はボタンの掛け違いの集大成だね。
タイミングの差は一瞬。

Posted at 2007/10/03 23:12:49 | |
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