
今日のカタログで見る~シリーズは
1988年に発売された、
三代目「スズキ セルボ」 (CG/CH 72V型)であります。
このクルマは私の実兄の4台目の愛車で、1988年~1991年に所有してました。
私も数度、ステアリングを握る機会がありました。
私が大学に進学した1988年、社会人となっていた兄は、人生において色々と試行錯誤?してたような状況でした。
早い話、転職を繰り返してたんですね。
それまで一番最初に就職した職場(某工場でしたが)で3年余り働いてきたのですが、3交代制勤務があったりと不規則な時間帯での仕事でもあったため、身体的・精神的に辛くなりそこを退職。
で、当然再就職でいろんな職を経験してみるわけだが、どれもかんばしくなく、長続きしなかった。
そんな不安定な状況の中、兄はクルマを買い替えることに。
それまで乗っていた、初代タウンエースワゴン後期型から買い替えたクルマは・・・・。
なんと、軽自動車に!! そう、このスズキ・セルボでありました。

当時の自分にとって、これは凄く驚きでした。
軽自動車のイメージとして、女性が乗り、そして買うクルマ、仮に仕事で軽の社用車を運転することはあっても、プライベートカーで男がメインで買うクルマではない! という偏見にも思える考えを持っていたからだ。
タウンエースの維持費が大変だったからと、当時ボヤいてたのは覚えてます。
このタウンエースは7人乗れて、エアコンももちろん装備、サンルーフも装備、で、乗せてもらうには割と快適なクルマでありました。
数年前までのミニバンブームを先取りしたかのようでしたね。
転職してた不安定な時期でもあったので、維持費の掛からない軽自動車にした事情は判らないでもないが、しかも何故?新車で・・・、ちょっと謎でした。(汗)
前述の職場でコツコツ働いて貯めた資金とタウンエースの下取りで何とか頭金を工面し、残りはローンで払うという事で(ローン払えるんだろうか・・・)、兄は買ってしまいました。
このセルボ、1984年デビューの2代目アルト(これは後に自分の最初のマイカーとなる)のシャーシを流用し、2ドア軽スペシャリティーカーとして仕立てあげたクルマです
歴代セルボはそういうスペシャリティーな面を担っていて、特に初代セルボは駆動方式がRRだったりするという意外性もあります。

エンジンは550cc F5B型3気筒SOHC12バルブエンジン。
最高出力40馬力。
パワーは無いけど、軽いボディーで走りはキビキビでした。

空力も当時のレベルとしてはなかなか良さ気です。フロントにはディスクブレーキを装備し、制動性を高めてます。

このセルボのシート、とってもポップな感じの色合いが、当時はちょっと小っ恥ずかしい気がしました・・・。(笑) でもセミバケットシートなんですね、一応。
特筆すべきは? 軽自動車初となるグラスルーフを装備したことだろう。
しかも必要に応じて天井の内装パーツが脱着出来る方式なので、トヨタのセラのようにオールグラスルーフで、夏場は灼熱地獄!!などという事はない。このあたりは親切な設計である。

ラゲッジルームもシートを倒せば、それなりにスペースが出来ます。
ちなみにこのセルボ、4ナンバーの貨物車となります。

車内の小物入れスペースも充実しており、ちょっとした物を入れておくには便利です。
カタログに書かれた文句を読むと判ると思いますが、いかに若い女性を意識したクルマであるかを伺い知ることが出来ます。
でも何故か、兄は買っちゃったんですよね・・・・・・よほどツボに来たのか?このクルマ。

オプションの数々。意外にオーディオにも力が入ってます。
あと、装着車は見たことありませんが、サイドスポイラーやリアスポ、リアアンダースポなどのエアロパーツも用意されてました。

ボディーカラーは全4色。 ちなみにこのクルマ、グレード自体無く一種類のみで、MTかAT、4WDかを選択するだけ。あとはオプションで好みの仕様に仕立てていきます。
ここまでスッキリ割り切ったグレード構成はある意味男らしいかも?
注 (のちに「ごきげんパック」なる、パワーステアリングを標準装備した特別仕様車が発売される。)
ちなみにイメージキャラクターは女優・タレントの大西結花さん。
1987年頃、ドラマ 「スケ番刑事・Ⅲ 風間三姉妹編」の、三姉妹の長女役を演じた人と云えば、思い出す人も多いのでは?
結構懐かしいです。
で、このセルボなんですが、販売面では全くいいところが無く、ハッキリ言って売れませんでした。
ダイハツのリーザと云ったライバル車が居たのは勿論ですが・・・・・・
セルボにとって最大最強のライバルが身内に存在してました
それは、「アルトワークス」の存在でした。
同年デビューの、当時二代目ともなるアルトワークスは、550ccターボで何と自主規制一杯の、64馬力を発揮し、また、そのスパルタンな外観から男性からも人気を博し、セルボのカテゴリーである軽スペシャリティーの市場を喰う事になるのであった。
当然、キャラ的に被るセルボは、ターボも無しで旧アルトのシャーシを流用した派生モデルに過ぎない事もあり、男性はおろかメインターゲットの若い女性にも見向きもされなかったものと思われます。
まあ、ワークスのほうが人気が有ると見るや、Dラーでワークスのほうを勧められたのかもしれないが・・・。
(意外にアルトワークスも、女性がよく運転してました。)
そんな事もあり、マイナー車と化してしまった三代目セルボは、1990年の軽自動車の規格変更(排気量が550から現行の660ccにアップが認められた。)に対処されることも無く、登場からわずか2年そこそこで生産中止の憂き目に遭いました。
その後しばらくしてから、新規格に対応した四代目、「セルボ・モード」として復活し、そこそこ売れたのだが、今度はワゴンRのようなハイト系の軽自動車が人気となったのが原因か、人気は下火となり、とうとう消滅することに。
2006年に再びセルボの名前が復活したのは記憶に新しいですが、スズキの軽の主力となったワゴンRの人気の前には、昔の名前も通用しなかったのか、僅か3年そこそこで生産中止に。
悲運のクルマだと言っていいかもしれません。
クルマの生い立ちとしては悲運でしたが、このクルマを購入した兄にとってはある意味、たまたまですが運をたぐり寄せたクルマかもしれない。
このクルマを購入後に、自分の最も希望に近い職を見付ける事が出来、現在もその会社で働き続けています。
また、意中の相手と結婚した時も、このクルマを所有してる時期でした。
まあ、もちろんその他の要因もありますが、クルマを買い替えた事が転機になって、色々な運を自分に導いたのかと思う事もしばしばです。
現在、マイナーであったこのクルマを見掛けることはまず有りませんが、もう一度、元気よく走る姿を見たいものだと常々思います。