アウディ R8 スパイダー
エンジン、足まわり、ハンドリング、どれをとっても私が今まで乗った車の中では一番の出来です。
リッター辺り100PSオーバーのエンジンはまるでバイクのエンジンと同じレスポンスで吹け上がり、音もバイクと同じ音が鳴ります。
足回りはガチガチに固いのは嫌いで、スポーツ走行オンリーのスーパーカーが多い中この車は硬質にもかかわらずしなやかで街乗りから300キロオーバーまで対応出来る素晴らしい足を持っています。
ハンドリングも素晴らしい
スーパーカークラスに参入してより良いマフラーを提供したいとずっと考えておりました。このクラスのマフラーは爆音は当たり前。
市販マフラーに変えるとほとんどは消音し切れておらず音割れが起きています。しかもこの音割れが”良い音“と思われており、とんでもない!!保安基準なんてあったもんじゃありません。
直管なのですからトルクも低下して性能も落ちています。考えてみてください。F1マシンでもマフラーが破れて変な音がし出したらラップタイムがガクッと落ちますよね。トルクの無いマフラーは乗りにくいし、乗っていて楽しくありません。私が作って行こうと思っておりました。
この車は平成22年度加速騒音適合車でスーパーカーにもかかわらず静かでびっくりしました。今までのR8よりずっと静かです。やはりメーカーですから日本の法律に完全に対応しております。それでも一般の車に比べたら大きな音ですが・・・
ただバルブが付いており、高速時には開いて一回り大きな音が出ます。ちょうど加速騒音測定時には静かで、それ以降は大きな音。これでいいのでしょうか?しかし法律が通るのですから問題ないのでしょうね。
スーパーカーオーナー様からマフラー制作を依頼されるとほとんどの方からバルブを付けて欲しいと頼まれます。街中では静かで高速道路では胸が躍るような音量で走りを楽しみたいと。
バルブを閉じたら本当に静かで、開いてもトルク低下を招かないマフラー。
これが今回の課題です。
本当に難しい。
まずは静かにしないといけません。殆どのマフラーが出来ていない事に挑戦です。

純正マフラーは車体に対してタイコ形状を専用金型で形成しておりますから凄い容量を持っております。
これには絶対に勝てません。
当社では持っているタイコ型から最大サイズを選択し、容量を稼ぎます。
純正のように隔壁型ではパワーが出ませんからストレートのオリフィス二重管構造でパワーアップ、消音します。オリフィスも専用の最大ロングサイズを使い消音及びトルクを最大限にアップします。
大きなタイコを使用し消音材を一杯詰め込むと重低音寄りの排気音になりますから高周波を消音するグラスウールは使用せずステンレスマットのみを使い高音が出るように音質チューニングをします。
最大サイズのタイコを使用するため配管スペースが無くなり苦労しますが、ここは腕の見せ所!頭をひねりながらノーマル通路とバルブ通路を確保し作って行きます。

そして次に机で電卓をたたきノーマル通路側とバルブ通路側の二つを足して2.6Lの排気圧に最適な体積を計算し口径を算出します。私のR8は5.2Lですから片側は2.LLずつ排気されますから。
やはりストレートでは抜けすぎです。途中で絞りを入れ排圧をコントロールします。
これで全開時に最適な排圧がかかり鋭いアクセルレスポンス、トルクを伴った加速感、気持ちのいい回転の伸び、パワー感あふれる音量が出るはずです。
更にバイパスパイプに消音器を追加し最大の消音をするようにして(平成22年度加速騒音適合車以外は必要ないと思いますので全てに付けるとは限りません)、後はバルブを付けていきます。
クリアランスが狭いのでバンパーフレームを取り付けて確認したり、遮熱版を取り付けて確認したり、各部分がギリギリです。ステーも補強を入れて、もう蜷局を巻いているエキマニの様になってきました。一度には溶接出来ないので取り外しては溶接。そして少しずつ作ってまた溶接。

歪みますので歪みを計算しながら溶接、少しずつ溶接。凄い手間がかかります。でもこれを怠るとテールの位置がR8のディフューザーに位置に来ませんし、純正と結合するカップリングの角度がずれてしまいます。
そして完成!
あらためて見ると本当にすごいことになっていますね。苦労がお分かりだと思います。
そして組み付けていきます。R8は複雑すぎです


最後にバルブの配管を作って行きます。
純正のソレノイドは使わず専用のソレノイド、ワンウエイバルブ、配管を新設します。
今回は任意で開閉できるようにスイッチ式にして室内にスイッチを付けていきます。
便利なリモコン式もありますのでお好みにより選んでください。
(R8はデモカーですのでオーディオ屋さんに頼んでカッコいいスイッチを付けてもらいました)。

室内に配線を持っていくのがすごく大変!普通の車が恋しいです。
そして完成。今までで一番苦労しました。しかし本当に静かに出来てトルクもあって、高回転も元気な素晴らしいマフラーが出来ました。
音量も99.2dBで保安基準内(ちなみにノーマルR8は99.6dB、平成22年以降物は97.5dBでした)。
今後他の車種もこのマフラーを提供してお客様にも車社会にも貢献していきたいと思います。

そして乗ってきました。
まずは本当に静か。これなら近所迷惑になりませんし普段はこれで乗っていたいです。
しかし音質はかなり変わってエンジン本来の音が出てきました。まるでバイクのような音そのものです。普段の街乗りも高音質な音が耳に残り狙い通りの良い音です。アクセルレスポンスも鋭く、トルクアップが体感できます。何より乗りやすくて気持ちいい、これこそがマフラー交換の目的だと思います。
高速走行では炸裂!!パワーも音も炸裂します。これは面白い!フル加速していくこの車は危険でもあります。
ただ音質自体はバルブを閉めた方が高音です。ストレートよりも絞った径の細い方が風速が速く高音になるのは当たり前でしょうから当然の現象だと思います。
マフラーの価格ですが、バルブ無しタイプで448,000円。バルブ付きで588,000円(これは専用バルブ、ソレノイドバルブ、リモコン、室内の配線作業が含まれております。)。
その他に脱着工賃がR8はマフラー取り外しが5万円、取り付けが5万円(封印含む)かかります。
ちなみにフェラーリ360,430系は脱着が6万円で済みます。
今のマフラーで悩んでいるスーパーカーオーナーの方、是非参考にしていただけたら幸いです。