
※これは以前書いた試乗記の再編集版です。
【概要】
ハコスカGT-Rとは、1969年に製造されたスカイラインセダンをベースとするスポーツカーです。これ以後、スカイラインGT-R(通称スカG)は日産を代表するスポーツモデルの一つとなるのですが、その最初のモデルです。ハコスカというのはその時にベースとなったスカイラインの通称です。ホンダ2シーター乗り比べツーリングで、故障したビート、S2000の代わりに試乗することとなりました。なお、試乗モデルはハコスカをベースにGT-R仕様へと改造したモデルであり、厳密にはスカイラインGT-Rではありません(なのでFRです)。
【エクステリア】
流石は40年前のクルマなだけあり、とても古臭いデザインをしていますww
バンパーは金属製で(メッキじゃないよ!)、サイドミラーがフェンダーに付いており、直線基調で箱っぽい形状をしています。空力や空気抵抗などは余り考慮されていないのが分かりますし、タイヤも軽自動車並みに小さいです。
ですので今見ると新鮮さを感じます。マッシブな造詣は力強さを感じさせますし、何より空力などにデザインが縛られていないので自由度の高いデザインになっているように思います。こうしたクルマが今も現存していることに、驚く限りです。
【インテリア】
まるでタイムスリップしたような感覚を覚えます。木製パネルが嵌められた内装や、金属製の通気孔がいくつも開けられたレザーシート、伸縮機構がなく遊園地のアトラクションにあるようなバックルで留めるシートベルトなど、今のクルマとは大きく違う構造をしているので、とても新鮮です。エアコンも当然ありません。ハザードの記号も違っており、最初は非常に戸惑いました。
ですが、こんな博物館にあるようなクルマに乗れたことは、非常に良い思い出になりました。
【装備】
敢えて書く必要性を感じませんが、敢えて言うなら軽自動車に備わる装備もないくらい非常に簡素でした。
エアコンは装着されておらず、オーディオ類もありません。窓もハンドルを回して開ける手動式で、シートレールは剥き出しであったりします。安全装備はシートベルトがあるだけで、エアバッグなどは当然装着されておりません。とにかく装備というなら、非常に寂しいクルマと言わざるを得ません。
ですが運転する上で最低限必要なワイパーやウインカー、ハザード、メーター、ハンドル、ペダル、シフト、シート調整機構はちゃんと備わっています。快適装備は皆無でも、クルマとして成り立つために必要な案件を満たしているため、走る上で不自由はありませんでした。
ただし、ABSやTCS、VSCといった安全デバイスは当然のことながらありませんので、運転には気を使わされました。
【運動性】
40年前のMT車はとても運転が難しいと実感しました。
アクセルは最近のクルマのように踏んだ量と噴ける量が一定ではありません。ある程度踏み込む突然ブォン!と噴け上がります。アクセルワークが難しいと久し振りに思うほど、デリケートなクルマでした。
ブレーキは特に凄まじかったです。リアはドラムブレーキという今時軽ですら余り見かけない形式のブレーキが採用されており、踏んでも制動が掛かっている感触が一切ありません。ぐいっと踏み込み続けると気付いたら速度が落ちてたという感じで、とてもではありませんがブレーキコントロールなんて出来ません。エンジンブレーキの方がよっぽど強力だったのですが、使えばますますエンジンを噴かしてしまう始末。峠道だったから良いものの、一般道でやってしまったら目も当てられないほどの騒音公害となっていたでしょう。
ここまではひたすらネガを書きました。しかし私はこのクルマを運転して楽しかったです。何故なら、これは本物のスポーツだったからです。
例えばハンドリング。ステアリング自体は鬼のように重く、しかも走り出すとセンターが決まらずグラグラ安定しないプアなものなのですが、40年前のクルマとは思えないほど力強くコーナーをクリアしていきます。ブレーキがプアでも、ステアリングがグラグラしていても関係ありませんでした。やはりGT-Rは初代からスポーツカーなんだと、強く実感できる性能でした。
エンジンもなかなか力強いです。ゴゥン!ゴゥン!威勢よく唸りますが、速度もそれなりに出てくれます。流石にハイパフォーマンススポーツカーであるR35GT-RやNSXには普通に走っていても付いていくことすら出来ませんでしたが、80km程度は難なく出てくれます。高低差の激しい峠でこれだけの速度レンジが維持できれば十分です。
ちなみにシフトはやはり入れやすいものではなかったですが、このクルマのパーツの中では一番古臭さを感じない部分でした。MTという構造はこの時代でも既に確立されていたんだと思う部分でしたね。
【価格】
これを書く意味はおそらく全くないのですが、試しに調べてみました。
まずは新車価格。当時150万円だったそうです。当時の大卒初任給が4万程度だったそうなので、約38年分にもなります。換算すれば、今だと約750万程度ですね。かなりの高級車です。
中古車だとレストア価格によってまちまちですが、程度の良いものとなると1000万にもなる個体もあります。誰が買うんだ……と思わずにはいられませんが、逆にこれだけ有名になったヒストリックカーならそれなりに需要があるのかもしれませんね。
最近はR32のエンジンをスワップして手軽に乗れるハコスカもあるそうです。
【総評】
とても評価の書きにくいクルマですね。マイナス点なら上げようと思えばいくらでも上げられます。むしろ40年前のクルマでは軽にさえも勝てない部分が多いです。
ですが一度乗って走り出せば、そうしたネガは吹っ飛びます。というかそんなことを考えている余裕なんて消え失せます。それだけ全力で運転するクルマなのです。最近のアラウンドビューモニター搭載車などに鼻で笑われてしまうくらいに、バックは恐ろしく大変なクルマです。それでも楽しいのだから恐ろしいと思いました。必死こいてシフトを変え、アクセルを何とか微調整し、コーナーで冷や汗を垂れ流しながらブレーキングを全力で掛けていく。それは途方もない苦労ですが、その先に見えるのはシンプルなクルマの楽しみでした。こんな非日常、そうそう身近に転がっていませんよ。
しかしやはりエアコンは欲しい……。
・エクステリア … 3.5 怒涛の迫力。でも今見ると小さい。
・インテリア … 2 GT-Rは伝統的に内装がプア。その原点だった。
・運動性能 … 3.5 スペック的には酷いものだが、楽しさは随一。でも神経使う。
・快適性 … 1.5 リアシートがあることだけ評価。エアコンもヒーターもないのは流石にきつい。。
・積載性 … 2 調査不足。でもある程度は予想できる。
・価格 … 3 まぁ、当然の如く今だとプレミア価格。でもぼったくりとは不思議と思わない。
・総合評価 … 3 旧車ってスゲェ。でも欲しくはない。
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Posted at
2013/10/11 00:02:40