
オートックワンよりコピペ
ホンダ 新型NSX 市販モデルを米で先行試乗!ホンダらしいコダワリ技術満載だが実は初代のリボーンだ!
清水 和夫
新型NSX、初代とは全く異なるスポーツカーなのか?
新型NSXの国際試乗会が開催されたので、試乗記を中心にレポートしたい。昨年秋に開催されたホンダの「ジャーナリストミーティング」では栃木研究所の高速周回路を二周だけ乗ったことがあったが、その時の印象は記憶に薄い。直線だけだったので電動SHAWDを試すことができなかったからだ。
私は初代NSXから25年以上もオーナーズミーティングの特別講師を務めてきたので、自然と初代NSXのDNAが染みついている。自動車人生の大半をNSXと付き合ってきたので、やや複雑な心境で新型NSXの国際試乗会に参加した。
日本では根強いNSXファンがいるが、新型NSXは初代NSXとは全く異なるスポーツカーなのか、あるいは正常進化型なのか。その判断を下すことも私のミッションだと思っている。
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
新型NSXは初代NSXのリボーン!
新型NSX計画は当初からアメリカのホンダが中心となって開発している。ホンダはトヨタや日産以上に各地域でR&Dと生産販売ができる体制を持っているので、アキュラブランドのフラッグシップとして市販されるNSXは当然アメリカが主導する、と考えたのだろう。
実際は車体やシャシーはアメリカで開発するが、ハイブリッドが絡むパワートレーンは栃木の研究所が担当する。文字通り、地球の裏側同士のコラボで開発が進められたホンダの国際的な事業である。
開発責任者は米国の本田技術研究所に務めるテッド・クラウス氏。彼とは旧知の仲だが、初代NSXの開発にも従事していたので、初代NSXの産みと育ての親である上原茂氏を師と仰ぐ。
クラウス氏いわく「初代NSXのDNAをしっかりと受け継ぎ、ハイブリッドという時代が求める新技術も織り込みました」と。新型NSXは、初代NSXの「リボーン」なのだ。
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
新型NSXはハイテク満載のスポーツカーなので大量生産には向かない。そのために柔軟に対応できる「パフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター」をオハイオの四輪工場に隣接して設立した。生産台数は10~12台/日という手作りに近い。年間でも2千台前後だ。
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
加速性能はポルシェターボと“ガチ”のパフォーマンス
さて、新型NSXのコンセプトはハイテクを満載したスーパーカーで電動SHAWDとミッドシップという2つのキーテクノロジーが存在する。その中身はここでは書ききれないくらい数多いが、V6ツインターボとモーター内蔵の9速DCTを組み合わせたパワートレーンがミッドシップにレイアウトされる。
だがそれだけではない。電動SHAWDを詳しく解説すると、フロントには左右独立のモーターを装備し、左右の駆動力(制動力)に差をつけることで、ヨーイングモーメントを発生させる。
モーター駆動による電動SHAWDはすでにレジェンドで実用化されているが、リアルスポーツカーに採用することで、ドライバーの意のままに操ることを目的としている。
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
エンジンは専用に開発された3.5リッターV6ターボ
エンジンはNSX専用に開発された3.5リッターV6ターボで、重心を下げる75度のVバンクを採用したドライサンプ方式。このエンジンだけでも500HPとかなりのパフォーマンスが得られるが、9速DCTに内蔵するモーターの出力を合算すると、システム最大出力は573HP(英馬力)、最大トルクは645Nmとなる。
さらにフロントモーターには左右独立した2つのモーターを持つが、このモーターはむしろハンドリングに集中して使われる。
気になる重量は1725Kg(米国カタログ値)と重いが、前後重量配分はフロント42%、リヤ58%と平均的なミッドシップのウェイトバランスを持っているし、パワーウェイトレシオは3Kg/HP。0-100Km/h加速は3秒とポルシェターボとガチのパフォーマンスだ。
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
車体技術を見てみると、ホンダらしいコダワリの技術が満載される。
新型NSXはほとんどアルミが使われるが、部分的には超高張力鋼板や複合材も使われているので、コンポジットボディと呼んだほうが正しいだろう。
初代NSXは世界でも初めてのアルミモノコックで開発されたが、新型NSXは設計生産の柔軟性で有利なスペースフレーム構造を持っている。その意味ではアウディの設計思想に似ている。
シャシー技術で新しいのはバイワイヤーブレーキを持つので、ABSのペダル振動はない。実際にちょい濡れたサーキットを走ると、路面の摩擦が分かりにくいというデメリットはあるが、回生ブレーキと摩擦ブレーキを協調するにはバイワイヤーは不可欠な技術だ。
さらにフロントタイヤにモータートルクが加わるので、ハンドルに不自然なトルクステアを与えないために、Wジョイントのロアリンクを持っている。仮想キングピン軸をタイヤの接地中心に近づけるのが目的だ。
かなり端折って書いているが、実はアルミボディ技術でもホンダ独自の技術が織り込まれている。
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
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雨のサーキットで電動SHAWDのポテンシャルを探る
さっそくインプレッションをレポートしよう。まずはサーキットだ。
一年に5日くらいしか雨が降らないパームスプリングに誰かが雨を連れてきてしまったようだ。だが、電動SHAWDのポテンシャルを探るには好都合。
タイヤはまだ未定だがオプション設定の可能性があるピレリPの浅溝タイヤ。公道では使いたくないタイヤだが、サーキットでは楽しく走れるとNSXチームは言う。
ホンダ NSX 海外試乗会にて 清水和夫氏
「Track」モードで全開走行を試す!
ドライブモードは「Track」をチョイス。トラクションコントロールはオフになるが、ESCは敷居値が変わる。アクセルを目一杯踏み込むと、低い唸り音がリアのバルクヘッドから聞こえてくる。
その速さは期待通り。パドルシフトでリミットの7500回転までしっかりと回る。リミッターがなければ8000回転まで行きそうだ。だが、実際は回転を下げて、モータートルクをうまく使ったほうが速いかもしれない。
ピレリの浅溝タイヤはドライならNSXのポテンシャルを引き出せるが、雨が降るとお手上げだ。
お腹をすかせた猛獣が檻から出てきたように暴れる。フロントモーターで車体を引っ張りたいのだが、そこは期待できなかった。雨のハンドリングは今度の課題だろう。
公道はどうか。センターコンソールのダイアルを回すことで「Quiet」「Sport」「Sport+」「Track」という4つのモードが選択できる。
「Quiet」モードではなるべくエンジンを使わないモードなので静かに走ることが可能だ。NSXはポルシェ918に似ているが、PHEV(プラグイン)ではないのでバッテリーの容量は多くないが、それでも草食系スポーツカーのキャラクーは演じてくれる。
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
ホンダ 新型NSX 海外試乗会
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Sport(+)モードでアドレナリン全開モードに!
高速やワインディングでは「Sport」と「Sport+」をチョイスすると、肉食系に変身する。
コーナーが待ち遠しい。ステアリングを切り込むと、モーターベクタリングの効果で気持よくターンインできる。「Sport+」に切り替えると、さらにアドレナリンが出るモードになる。
実際に、この「Sport+」でワインディングを走ると、ステアリングがあまりにもシャープすぎて、インに引きこまれそうになった。
正直に言うと、私には「Sport」がもっともバランスが良いと感じた。「Sport+」ではリアのメカニカルグリップはもう少しほしいと感じたのである。
ホンダ NSX 海外試乗会
ホンダ NSX 海外試乗会にて 清水和夫氏
新型NSXは電気じかけスポーツカーだが中身はヒューマノイドなスポーツカー
ワインディングからホテルに帰る途中で、すれ違うNSXを見たとき「ハッ」とした。低くワイドなフォルムに、NSXの新しい顔が印象的だったのだ。
そのフォルムはスーパーカーに近い存在感を感じることができた。想像したよりも乗り心地も良かったし、速さだけでない高級スポーツカーのキャラクターも与えられていたのである。
電気じかけのスポーツカーであるが、その中身はかなりヒューマノイドなスポーツカーだと言えそうだ。
[Text:清水和夫]
以上。
価格も性能もスーパーカー!?