ここからは電磁気学の領域に足を踏み入れますが、電磁気学においては不導体≒誘電体なので、今後は誘電体に表記を統一します(引用部分を除く)
その誘電体の話をする前に、まずは導体の静電誘導の話から。
【静電誘導(静電平衡)】
導体が外部から電場の影響を受けると、クーロン力によって、それを打ち消す方向に向かって自由電子が移動します(=静電誘導)
例えば、導体に正電荷を近づけると、近づけた側の導体表面に自由電子が集まり、最終的に平衡状態になります(=静電平衡)
なお、同じ電荷同士は反発し合うといったクーロン力の基本は中学、静電平衡は高校で習うので、「空気とボディの間にクーロン力が働いて、空気が剥がされる」というトヨタの理論は、中学生以下の発想。
※なので、理系でアルミテープ貼ってる人はかなり恥かも?
【ファラデーケージ(静電遮蔽)】
静電平衡が起きると、導体の内部では電気力線が完全に打ち消し合っているので、電場は存在しません。
なので、至る所が同電位となります。
また、導体の内部に空洞があった場合、空洞表面も同電位であるため、その空洞内も同電位となります(=静電遮蔽)
以上が一般的な説明になりますが、静電遮蔽に関してはイマイチ理解しにくいと思うので、具体例を挙げて話をします。
【なぜ車に雷が落ちても、中の人は安全なのか?】
ネット上には、ファラデーケージ以外にも、車のボディは金属なので電流が流れやすいからだとか、的外れな物も含めて色々説明がされていますが、どれも表面的で、本質的な理解には程遠い内容の物ばかりです。
例えば、JAFのユーザーテスト。
このユーザーテストでは、クルマと雷の関係に詳しいという中部大学・電気電子システム工学科の山本教授が、次のように解説しています。
『山本教授によると「過去の実験や落雷実験でも、乗員が直接大きな被害を受けた例はない。車に落雷すると車の金属部分を通り、タイヤから放電するため、車内へ電流は流れにくい。ただし、車内でもピラーなどボディの金属部分へ接触すると安全とは言い切れないため、金属部分には触らないでほしい」とのことだった。』
ですが、肝心な理由については一切書かれていませんし、表現の方も微妙です。
教授が万人向けに平易に解説したのか、JAFの編集者が勝手に内容を要約したのかは解りませんが、このままでは消化不良です(笑)
で、他を検索した結果、非常に解りやすく解説してあるページがあったので、そこから引用します。
『金属などの良導体は,あらゆる箇所で電位差がゼロの等電位状態を保とうとする性質があります。導体に電気(正しくは電荷と言う)が流入しようとすると,同符号の電荷同士は反発して導体内部には存在できないため,導体表面に等分配されながら電流として流れることになります。この性質は,英国のマイケル・ファラデーが発見し,「ファラデーシールド」または「ファラデーケージ」として電磁波遮蔽に応用されています。』
引用元)
自動車・航空機への落雷時どのようにアースが働くか?(日本医事新報社のHPより)
https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_7696
【簡単に言うと?】
・雷(=電場)の影響を受けると、導体であるボディは等電位状態を保とうとして静電平衡になる(故にボディ及び室内には電場が存在しない)
・そのため雷電流はボディそのものを流れることは出来ず(室内にも侵入できない)、ボディ表面を等分配されながら流れる。
※電場(電位差)がなければ電流は流れないため。
ところで、JAFには『車内でもピラーなどボディの金属部分へ接触すると安全とは言い切れないため、金属部分には触らないでほしい』と書かれていますが、理論上はピラーの内側も同電位であるため、安全です。
※というか、ピラーの内側を触って感電するならそもそも静電遮蔽になっておらず、室内にも雷(側撃雷)は侵入できるので、どこを触っていようがいまいが危険であり、この教授が何を言いたかったのか不明。
いずれにせよ、考え方としては「電場の影響を受けると導体は静電平衡になるから、導体の内部には電場が存在しなくなる」のではなく、「導体は常に等電位状態を保とうとするから、導体の内部には電場が存在しない」のであり、故に「(外部から電場の影響を受けると)静電平衡が起こる」のだと理解した方が解りやすいと思う。
※なお、車のボディは普段は導線を兼ねているので、電気抵抗に相当する僅かな電場は存在するため、完全に等電位ではない。
【専門的に言うと?】
静電遮蔽は「導体が等ポテンシャルである」ゆえに成立し、アーンショーの定理「電荷のない領域ではポテンシャルは極小値も極大値もとらない」より、空洞内に電荷がないとすれば、空洞表面も空洞もφ =const. すなわち、空洞内の電場はゼロ(E =−∇φ=0)となる。
なお、この静電遮蔽は導体の種類、空洞の形状、導体の電荷、
導体外部の電場によらず必ず成立します。
※仮に導体外部に全く電場がなければ遮蔽する対象もないので、その状態を静電遮蔽と表現するか否かは別にして。
【おまけ】
ちなみにこの記事では、タイヤに関して次のように書かれています。
『タイヤを雷電流が通過する際,ゴムは不導体であるため,内部に侵入するよりもタイヤ表面を経由するほうが,はるかに放電抵抗が小さく,タイヤの沿面放電によって大地に放流されます。ちなみに乗用車等のタイヤゴムは,接地面には他の部分よりもやや導電性を持たせてありますので,車内で発生した帯電電荷が緩やかに放出されます。図1にタイヤ接地面とホイール金属間の抵抗測定例と測定結果(67MΩ)とを一例として示しています。』
アルミテープチューンの話をした時、そもそも車はタイヤがアースになっているので帯電しておらず、トヨタの理論は前提からして間違っていると書きましたが、上記の測定結果を見れば一目瞭然です。
参考)
アルミテープチューンの真実
https://minkara.carview.co.jp/summary/13711/
なお、文中『帯電電荷が緩やかに放出』とありますが、実際にはほぼ瞬時に放出されます。
確かに67MΩ(・cm)と聞くとかなりな抵抗に思えますが、仮に静電気の対地容量を100pFとすると、放電時間:τ(s)=C(F)*R(Ω)より、100pF*67MΩ=0.0067秒。
子供の頃、ストップウォッチで早押し遊びをした方も多いと思いますが、0.1秒切ればかなり反射神経が良いですし、普段は意識せずにやっている瞬きが0.1秒くらいなので、ほんの一瞬ですね。
さて、肝心の誘電体の話はまた次回に。
Posted at 2026/01/15 08:53:57 |
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