さて、プラズマクラスター(イオナイザー)の基本原理が解ったところで、本題に入ります。
(1)どのように除菌(消臭)するの?
シャープによれば、除菌効果のあるプラズマクラスターイオンが、浮遊するカビ菌や雑菌を低減するとのことですが、消費者庁から措置命令を受けたのは記憶に新しいかと。
ただ、一部の人は「部屋が広すぎたから、除菌効果が行き渡らなかっただけだろう」と、効果自体は今でも信じているようです。
※シャープもそう主張している。

シャープのHPより
「発生したイオンがカビ菌に作用し、最後は水になって空気中に戻る」とありますが、動画で詳細を見ると、「イオンが浮遊カビ菌や浮遊菌の表面に付着するとOHラジカルに変化、タンパク質から素早く水素を抜き取ってタンパク質を分解、その後水素とOHラジカルが反応し水に戻る」のだとか。
この説明、なんだかオカルトチューンと同じ臭いがしますが(笑)、そもそもイオナイザーと生成物が同じである以上、プラズマクラスターに除菌効果があるならイオナイザーでも除菌できるはず。
というか、元々空気中に存在する大気イオンでも除菌できるって事になるのですが、そんな話は聞いたことがありません。
※少なくとも現時点では、マイナスイオンによる各種の効果は疑似科学(未科学)とされている。
(2)実はオゾンの仕業だった?
ところで、何年か前に日本感染症学会が「プラズマクラスターイオン自体に除菌作用はなく、除菌されるとすれば副次的に発生するオゾンによるものだ」と公表して話題になりましたが、実はイオナイザーは空気を電離させる際にオゾンを生成します。
※オゾンの生成ですが、コロナ放電により活性化エネルギーを得てO2の共有結合が切断され、酸素原子になり(O2→2O)、この酸素原子が酸素分子と反応してオゾンが生成される(O2+O→O3)
現にパナソニックもイオナイザーを作っていますが、HPを見ると、換気をしろだとか、人体へ向けて使うなといった注意書きがあります。

パナソニックのHPより
ここで種明かしですが、先のOHラジカル(・OH)とは、一般的にはオゾンが水と反応する際に一時的に生じるヒドロキシルラジカルの事です(全体式:O3+H2O+2e-→O2+2OH-)
※ヒドロキシ基 (水酸基)だから、ヒドロキシラジカルと言う人もいるが、hydroxyl radicalだから普通に読めばヒドロキシルラジカルとなる。
このヒドロキシルラジカル(・OH)は水酸化物イオン(OH-)と違い中性、つまり電子が1つ足りないので、他の物質から電子を奪う(=他の物質を酸化する)ことによって、より安定なOH-に変化しようとします(=酸化剤として作用する)
なお、酸化に殺菌作用があるのは何故かと言うと、強い酸化作用により(細菌やウイルスの)細胞を損傷させ不活化するためですが、実際に東京都では、オゾンを水に溶かして下水を消臭殺菌処理しています。
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/13

東京都水道局のHPより
(3)なぜ措置命令を受けたの?
改めて書くまでもないですが、イオナイザーがオゾンを生成するということは、当然プラズマクラスターもオゾンを生成するということです。
シャープは「イオンが細菌の表面に付くと、OHラジカルに変化する」と都合の良い主張をしていますが、逆に言えばOHラジカルが作用して除菌する事は認めている訳で、これは「除菌作用はオゾンによるものだ」と白状しているも同然でしょう(語るに落ちる)
※オゾンでは一般消費者への印象が悪いので、マイナスイオンブームに乗っかり「イオンの仕業」だという説明をした?
現に、シャープが委託した研究機関等による「密閉された小空間」以外の再現実験で、除菌効果が殆どないのは、発生するオゾン濃度が低いからと考えるのが妥当で、逆に言えば効果があるようにオゾン濃度を高めたら人体にも有害なので、それは出来ない(だから殆ど効果がない)
特に一番ウイルスが気になる冬の乾いた空気の下では、そのオゾンによる僅かな除菌効果すら期待できないでしょう。
こんな物を「売れるから」とか「ライバルも売っているから(うちも売らないとシェアが落ちるから)」とか言って、安易に商品化する電機メーカー各社の経営姿勢は如何なものでしょうか。
もっとも、これは電機メーカーに限った話ではなく、機能性表示食品に代表されるように現代日本のあらゆる業界に蔓延していますが・・・
という訳で、プラズマクラスターは、マイナスイオンブームに乗っかりイオナイザーを白物家電に転用しただけの代物であり、いくらかの除菌効果があるとしても、それは副産物のオゾンによるもので、プラズマクラスターイオンによる除菌効果ではありません。
なので、措置命令が下されたのも当然かと。
※SEVの真似して「物質を活性化する」といった抽象的表現に留めておけば良かったのに・・・いや、この場合は活性化しちゃダメですが(笑)
日本感染症学雑誌第86巻第6号はこちらです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kansenshogakuzasshi/86/6/86_723/_pdf
【おまけ】
かつてデンソーが「車載用プラズマクラスターイオン発生機」という商品を売っていましたが、これはさすがに消えたかと思いきや、モデルチェンジして今でも堂々と売っていました(さすがは三河商人)
実を言うと、
自分もその昔、コレを買おうか本気で悩んだ大バカ者です(笑)
まあ除菌は無理でも多少の除電効果はあるだろうから、アルミテープチューンを信じている人は買ってみるといいかも?

デンソーのHPより(当時の商品)
Posted at 2025/10/24 09:47:05 |
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