(続き)
(5)実は、冬タイヤの普及が要因?
ところで、なぜ欧州車にラグボルトが多いのか?ですが、ネット上に自動車の設計をしているという方が「欧州では、主に冬タイヤへの履き替えによってハブボルトの損傷率が高く、ラグボルトのほうが交換が容易であるため」と書いているのを見掛けた(関東以西に住んでいれば、ハブボルトのうち替えなどまず経験しないが、東北や北海道では意外と多いらしい)

↑画像は「ヨーロッパ史入門」というHPより
確かに欧州は、暖かな地中海性気候の南欧諸国を除いて、殆どの地域が日本より北に位置しており冬が厳しく、一理あるなと思って調べたら、
・最初に冬タイヤ(=スパイクタイヤ)が誕生したのはフィンランドで1959年、そして60年代以降に欧州各国で急速に普及した(旧オーツタイヤの資料によれば、日本では63年に国産品が登場し、やや遅れて70年代に普及したとのこと)
・VWは初代ビートルもラグボルトだったのに対し、例えばBMWは、少なくとも2002(1966年~77年)まではスタッドボルトだったらしく、当初からラグボルトだった訳では無い。
という事実が判明したので、この「損傷時の交換が容易」とする説は、合理主義の欧州ならば十分あり得る話で、結構有力なのではないかと思っている。
(6)なぜ今になって、トヨタがラグボルトを推奨するのか?
最近は章男会長のアドバイス(横槍?)で、プリウスのコンセプトを根本から見直したとか、LBXのタイヤが大径化してかっこよくなった・・・みたいな逸話が、カーメディアを通じて度々ネットで配信されるようになった。
つまりは宣伝のために、トヨタ側がそういう話を書くようにリークしているのだ。
また、ラグボルトを採用したISやbZ4Xなどの試乗記で、評論家が軒並み「ラグボルトの方が足回りの剛性が高くなる」と書いているが、これも前編で書いたが、トヨタが自ら広報資料にそういう話を記載しているためである(※1)
以前のトヨタは真面目な反面、面白みがない印象だったが、最近のトヨタはモリゾウさんなるレーサーのおかげもあってか、遊び心を持つようになったみたいで、それ自体は車好きからも歓迎されているようだが(※2)、このラグボルトにしても例のアルミテープにしても(誰がGOサインを出したかは知る由もないが)お遊びを通り越して、ちょっとおふざけが過ぎるのではないかと。
もっとも、自動車なんて作る側からしたら売れてなんぼの世界なので、たとえCMで「個人の感想であり、効能ではありません」と謳おうが一向に構わないのですが、某機能性表示食品みたいに、それで被害が出てからでは遅いので、
安全性には問題がないように、しっかり作って戴きたい(※3)
注釈
※1
この辺りに関しては、前編の注釈で詳しく書いたが、締結力が大きい(とトヨタが主張する)ラグボルトにしたにもかかわらず、発売早々にボルトの緩みが生じる恐れがあるとリコールを出して、生産見合わせまでしたのだから、本末転倒というかとんだお笑い草である。
それにしても、広報資料を書き写すだけの評論家が多いのは(今更だが)呆れる。
いざ大きな事故が起きると、マスコミにも彼らが「専門家」と称して登場するが、高校の物理すらロクに覚えていない評論家より、自動車工学にも詳しい大学教授などの「本物の専門家」を招いたほうがいいと思う。
※2
個人的には、トヨタイムズも含めたカーメディアを使っての「(大企業の会長と言っても雲の上の人ではなく)あなた方と同じただの車好き、庶民派なんですよ」アピールは、ハッキリ言って食傷気味。
※3
ラグボルトの緩みが生じた詳しいメカニズムは公表していないようだが、原因はホイール形状の設計ミスと、ボルトの強度不足とのこと。
まさかホイール形状を変更して接触面積を増やしたせいで、面圧が想定より低くなり、より強度の高いボルト(軸力)で押さえつける必要性が判明した・・・なんてオチじゃないですよね?
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2024/04/15 10:39:15