2025年03月11日
【保存版】 誰でも解る!バッテリーの充放電の仕組み(サルフェーション編)
(続き)
(5)よく聞くサルフェーションって?
サルフェーションとは、極板表面に付く白っぽい粉のようなもので、正体は硫酸鉛の結晶化が進行してこびり付いたものです(サルフェート=硫酸塩。ちなみに、鉛は灰色、酸化鉛は褐色で、硫酸鉛は白色)
放電した際に極板に付着した硫酸鉛は、通常は充電により逆反応を起こして溶解しますが、充電せずに長い間放電状態が続くなどすると強固化してこびり付き、逆反応を起こせなくなります。
そのため、極板の反応面積(≒活物質)が減り、電解液中のイオンも減るため、性能劣化する事になります(※1)
なお、経年劣化等によりバッテリー端子の隙間から電解液が漏れ出たりすると、端子部分(これも鉛ですね)で極板と同じ化学反応が起こり、硫酸鉛の白い粉を吹くことがありますが(※2)、この場合は寿命ですから早めに交換した方が良いです。
(6)サルフェーションだけが悪者?
「サルフェーションさえ除去できれば、バッテリーは復活する」みたいな記事を最近よく目にしますが、バッテリーの劣化原因はそれだけではなく、例えば振動等で活物質(実際のバッテリーの極板は、例えばカルシウム合金製のグリッドに、ペースト状の鉛等を練りつけ乾燥させている)の脱落なども起きるため、仮にサルフェーションだけを完全除去できたとしても、バッテリーは元どおりにはなりません。
また、パルス充電等によってサルフェーションを除去、つまり硫酸鉛の結晶を剥がせる事ができたとしても、溶解したのは強固化した結晶の一部で、残りは沈殿するだけなので、極板の反応面積は広がっても電解液中のイオン濃度は低いままですから、効果は半分程度だと思っておいた方がいいでしょう。
更に、電解液中に沈殿した硫酸鉛が多いと、樹枝状の結晶(デンドライト)がセパレータを貫通して、端子間ショート(デンドライトショート)が起こる可能性もあるので、藪蛇になることも・・・
(7)サルフェーション除去グッズって効くの?
サルフェーション除去を謳う商品の中には、「リヴァゲインは第3のイオン溶媒和電子です。イオン電子を還元しバッテリーのサルフェーションを溶解・除去します」などとする商品もありますが、溶媒和電子という言葉はありますが、イオン溶媒和電子なんて言葉は聞いたことがありません(イオン電子も同じ。イオン電子マネー=ワオンなら知っているが)
因みにその原理をHPで見ると、なんでも「鉛と硫酸が結合する時に、放出される電子2個は、バラバラに放出されるのではなく、ペア電子として放出されます。フェルミ粒子の電子がペアを組むと、ボーズ粒子として振舞うという宇宙の法則が存在します。ボーズ粒子としての放電に対して、現状はフェルミ粒子の電子のまま充電しているため、硫酸鉛の結晶サルフェーションを解消することが出来なかったのです「リヴァゲイン」の主成分である(溶媒和電子)は、必ずペアで存在するという特性を持っていますので、電解液中に存在させることで、簡単にサルフェーションを解消出来ます(原文ママ)」だそうです。
さすがにこの説明では、よほどのSFマニア?ぐらいしか飛びつかないでしょうけど(笑)、有名な電撃丸なんかは「特殊硫酸化合物がバッテリー液に作用し、充放電能力を低下させるサルフェーションを分解&除去(原文ママ)」と、普通の消費者なら何となく納得しそうな事を書いています。
ですが、「化合物」って何かは高校化学で学んだと思いますが、100%の硫酸は化合物(純物質)ですが、何かが混じっていれば、それは混合物です(例:希硫酸)
特殊~の意味が解りませんが、100%の硫酸じゃないなら硫酸混合物ですし、逆に硫酸化合物なら凝固点が約10℃なので錠剤の訳がありませんし、そもそもそんな劇物は店頭では売っていません(笑)
・・・という訳で、電撃丸にも気を付けてください(※3)
正直、サルフェーションを溶解するという錠剤や、パルスで除去するという装置を買う金があったら、
早めにバッテリーを買い替える方がよほど得だと思う(精神衛生上も)
注釈
(※1)
ちなみに性能劣化の理由について、「サルフェーションは電気を通さないので、電気の流れが悪くなるため」と書いているサイトも多いですが、バッテリーの充放電の仕組み(酸化還元反応)を正しく理解できれば、電気を通すか否かという単純な話ではない事が解るでしょう(なお、硫酸鉛は不導体ですが、層が薄いので電気を通します)
(※2)
ネット上では、この端子に付く白い粉の事を「過充電により希硫酸が蒸発して吹き出し、その希硫酸の塩分が乾燥したもの」だと得意げに解説する(自称)専門家を名乗る者もいましたが、そもそも硫酸は沸点が337℃であるため、仮に蒸発するとすれば希硫酸ではなく、希硫酸中の水分です。
おそらく人伝に聞いた話を中途半端に理解したつもりになって、すぐに他人に吹聴したがるタイプの人なのでしょうが(落語に出てくる、長屋の八つぁんみたいな人)、冗談はともかく、塩(えん)と塩(しお)は別物であり、硫酸塩(えん)の一つである硫酸鉛に、塩分つまり塩(しお=NaCl)の成分が含まれている訳ではありません。
なお、同じように端子に付く粉でも、青緑っぽい粉は緑青(ろくしょう。毒性なし)で、これはバッテリーターミナルによく使われる銅が酸化して発生する錆、つまり酸化銅です(10円玉にも発生する。なお、古い車だとターミナルも鉛だったりしますが、バランスウエイトと同様に脱鉛化の流れで、今は銅だけではなく鉄にメッキというのも増えているようです)
ちなみに、整備士辺りでもその辺の違いを解っていない人が多く、サイトや動画を手広く運営されているMHOさんのように、緑青の事を硫酸鉛で有害だとする間違った情報を流す人も見受けられます。
(※3)
姉妹品で電撃ゲルマというのもありますが、「有機ゲルマニウムがバッテリー内の分極化現象を加えて自己放電を強力に防止します(原文ママ)」も意味不明で、分極現象という言葉はあるが(誘電分極のこと)、分極化現象って社会学か何かの用語では?
(このように勝手な造語を用いるのは、自ら疑似科学だと言っているようなもの)
なお、自己放電は、電解液の温度あるいは比重が高いことによって促進されますが(=化学反応が活発になるため)、電解液中に不純物(異種金属)があると、それが極板表面に付着し局部電池を形成することによって、自己放電が促進されるケースもあります。
(一般的には電食あるいは電蝕と呼ばれますが、JISによれば電食とは迷走電流腐食のことで、このような異種金属接触腐食はガルバニック腐食と定義されている)
もっともゲルマニウム自体は半導体だし、この手の商品はメーカー側も損害賠償請求とかされないように、害になるようなものは入れないのが鉄則なので、それほど心配する必要はないでしょうが(要は毒にも薬にもならない)、「バッテリーに蒸留水以外は入れるな」と言われているのは何故かを考えれば、余計な添加物は入れない方がいいでしょう(下手すりゃ百害あって一利なし)
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Posted at
2025/03/11 16:58:36
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