2025年04月09日
バッテリーの性能ランクに騙されるな!
以前書いたように、性能ランクは昔は規格もなかったが、2006年版のJISでようやく定義されました。
ですが、この前後で性能ランクを見直したバッテリーメーカーは(記憶の限りでは)存在しませんし、多くのメーカー、特に国内メーカーは、CCAもRCも公表していません(※1)
前回、VARTAとBOSCH、ACデルコの比較をした際にも、「性能ランク」に関してJISに準拠していない点を指摘しましたが、今度は国内メーカー主要2社に関して、性能ランクを比較検証してみたいと思います。
【概要】
・ACデルコが、CCAだけでなくRCも公表していましたので、この会社のバッテリーを基準に他社の同等バッテリーを検証。
・今回は、充電制御車用=「竹」クラスの商品。
(基準品)ACデルコ プレミアムゴールド PG80D23(なお、AMS80D23はルート違いの同等品)
公表5時間率容量 56Ah
公表CCA 650
公表RC 116分
つまり、
・11.2Aで放電した場合は5h持ち、そのときの容量は56Ah
・25Aで放電した場合は116分(1.94h)持つので、そのときの容量は48.5Ah
よって、11.2Aで放電した場合に比べ、25Aで放電した場合の放電容量は86.6%
(1)パナソニックオートモーティブシステムズ(※2)
カオス N-100D23(C8)
公表5時間率容量 58Ah
当方の実測CCA 約600(冬場、サーフェイス分を除く)
性能ランクとCCAから計算したRC 約130分
・25Aで放電した場合の放電容量は、25A×2.17h=54.25Ah
よって、11.6Aで放電した場合に比べ、25Aで放電した場合の放電容量は93.5%とやや高い。
(ACデルコの86.6%を基に計算すると、RCは約120分)
(2)GSユアサ
エコRハイクラス EC-90D23
公表5時間率容量 56Ah
当方の実測CCA 約600(同上)
性能ランクとCCAから計算したRC 約105分
・25Aで放電した場合の放電容量は、25A×1.75h=43.75Ah
よって、11.2Aで放電した場合に比べ、25Aで放電した場合の放電容量は78.1%とやや低い。
(ACデルコの86.6%を基に計算すると、RCは約116分)
以上より、ざっくり言って、
(1)が80なら、(2)は85、(3)は80辺りでしょう。
ちなみに、JISの規定に従って計算すると、ACデルコは95でいいはずなので、
(1)が95で、この場合(2)と(3)は其々100、90でいいと思う。
このように、JISで定義された後もメーカーが異なると直接比較ができないため、
はっきり言って意味がない、消費者を惑わすだけの数値です。
一方で、RCは(オルタが壊れた場合に)何分間走り続ける事が出来るか?という指標とも言われており、消費者の利益の確保を考えるなら(※3)、曖昧な性能ランクなどはやめて、RCの表示を義務化したうえで、
RCで性能表記すればよいと思う。
(※1)
RCつまり定格リザーブキャパシティとは、満充電にしたバッテリーを25℃(±2℃)で、25Aの電流で放電終止電圧の10.5Vになるまで連続放電させた場合、何分持続できるかを表す指標です。
一方、5時間率容量は、満充電にしたバッテリーを温度25℃で、5時間率容量の1/5の電流で、電圧が同じく10.5Vに降下するまで放電したときのバッテリーの容量を指します。
要は「25Aで放電した場合に、何分間放電できるか?」と、「ちょうど5時間で放電させる場合に、何Aで放電できるか?」の違いですが、放電電流を増やすと持ちはずっと悪くなるため、放電電流を2倍にしたら1/2倍の時間持つわけではありません(もっと短くなる)
いずれにせよ、CCAもRCも公表していないメーカー同士を比較する場合、当てにならない性能ランクではなく、単純に5時間率容量で比較する方が良いと思う。
(※2)
ネット上では、「カオスは今は松下ではなくGSユアサ製」だとかの噂が色々言われていますが、製造元の持株会社が変わり、GSユアサの傘下になったため社名変更しただけで、実質的には変わっていません。
販売元:パナソニックオートモーティブシステムズ㈱(松下グループ)
製造元:㈱GSユアサエナジー(旧:パナソニックストレージバッテリー㈱。現在は事業売却で松下グループを離れ、GSユアサ傘下となりGSユアサエナジーに社名変更)
(※3)
一般財団法人日本規格協会によれば、JISとは何かというと(以下、引用)
『標準化の意義は、自由に放置すれば、多様化・複雑化・無秩序化してしまうモノやコトについて、
・経済・社会活動の利便性の確保(互換性の確保等)
・生産の効率化(品種削減を通じての量産化等)
・公正性を確保(消費者の利益の確保、取引の単純化等)
・技術進歩の促進(新しい知識の創造や新技術の開発・普及の支援等)
・安全や健康の保持
・環境の保全等
上記の観点から、技術文書として国レベルの「規格」を制定し、これを全国的に「統一」または「単純化」することです。』
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Posted at
2025/04/09 15:24:55
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