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2025年06月10日 イイね!

荷重移動を考えて走ろう(EBDの誤解)


EBDについては、よく下のようなグラフで説明がなされます。
※Electronic Brakeforce Distribution(電子制御制動力配分装置)



本田技研工業のHPより


つまり、「積載荷重が大きくなると、後輪は前輪よりも制動時の荷重がより増大するので、EBDにより後輪の制動力配分を増大させることで、停止距離を短くできる」といった説明です。

しかし、これは「重ければ重いほど、ブレーキが効かなくなる(のでブレーキを強くする必要がある)」という、一般ユーザーの誤解に基づいた間違った説明です。
※なぜ誤解であるかについては、前回までのブログで書いた通り。

本田が「難しい話をしてもどうせ一般ユーザーには伝わらないだろうから」と、敢えて(ユーザーの誤解に迎合して)解りやすく説明したのか、あるいは文系の広報担当者が勝手に要約(解釈変更)したのかは解りませんが、いずれにしても「自動車メーカーなのに正確な情報を伝えていない」という点で、いかがなものかと思います。


積載時に後輪へのブレーキ配分を増すのは、正しくは「荷重移動量が増えることで、前輪の荷重が増す一方、後輪の荷重が減るため」であり、言い換えれば、
前のめりが酷くなるからです。

前のめりが酷くなると、前輪の荷重=摩擦力は増えるが、後輪の荷重=摩擦力は減るので、簡単に言うと前はブレーキがモロに効くが、後ろは浮いちゃって効かない状態になります。
※つまり、本田の説明は真逆だということ。

そこで、前輪に対して後輪のブレーキの効きを強くする(同じ踏み込み量でも後輪を早めに効かせる)ことで後輪の摩擦力を上げ、制動距離を短くしようという仕組みが、EBDです。
※ちなみにマツダは、ミレーニアのビデオカタログの中で「(定員乗車時に)EBD非装着車だと、車の荷重移動によって後輪のブレーキ力が不足し、制動距離が延びてしまいます」と正しく説明しています。


本物のプロドライバーは、このような物理の原則をまさしく身をもって体感しているため、次のような自動車評論家には決して真似の出来ない素晴らしい話ができるのです。




SCORPION MAGAZINEより


全文はこちら↓
プロに教わるドライブルートの走り方①【ドライビングポジション&視線の置き方】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5168

プロに教わるドライブルートの走り方②【コーナーのライン取り&ステアリング操作】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5229

プロに教わるドライブルートの走り方③【ブレーキング&荷重移動】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5304

Posted at 2025/06/10 16:44:15 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月09日 イイね!

ブレーキの話(追記)


前回までに「制動距離に、車重は影響しない」と書きましたが、「じゃあ、なぜ大型車はエアブレーキのような強力なブレーキを備える必要があるのか?話が矛盾しているじゃないか」と納得できない人もいると思うので、おまけで。

おそらくそういう人は、ブレーキによってタイヤの回転を止めるのと、タイヤによって車を停止させるのとを混同しているのではないでしょうか?(実際、ネット上にはそういう論調のサイトが多い)


1 ブレーキによってタイヤの回転を止めるには?【ブレーキの制動力】

ディスクブレーキなら、ブレーキによってローター(タイヤ)の回転を止めるには、ローターとパッドとの間の摩擦力を考える必要があります。

この場合、最大静止摩擦力(F=μN)において、μはローターとパッドの間の摩擦係数、Nはパッドを押し付ける力(正式にはその反力)ですが、大型車ほどタイヤの慣性モーメントが大きいので、ローターの回転を止めるにはより大きな垂直抗力、つまりは油圧よりも強力なエアが必要になります。
※なお、「ローターやパッドを大型化して接触面積を増やし、(ブレーキの)制動力を上げる」などと平気で言う自動車評論家もいますが、接触面積がいくら増えようが摩擦力は上がりません(∵F=μN)


2 タイヤによって車を停止させるには?【車(タイヤ)の制動力】

この場合には、ブレーキそのものではなく、(前回までに書いたように)タイヤと路面との間の摩擦力を考える必要があります。

タイヤと路面間の摩擦力は車重と比例関係にあり(タイヤに掛かる荷重が垂直抗力となるため)、車重が倍になれば運動エネルギーも倍になりますが、同時に摩擦力(⇔制動力)も倍になるので、制動距離は同じという事です。
・F’=μ’N(動摩擦力=滑り摩擦係数×垂直抗力)
 ここでN=Mg(垂直抗力=質量×重力加速度)より、F’=μ’Mg
※厳密にはタイヤ(ゴム)の摩擦係数は荷重に対して一定ではなく、また荷重移動の程度によっても各タイヤの滑り摩擦係数は変化するため、完全な比例関係にはならない。


要は、車の制動力(制動距離)を考えるにあたっては、
・ブレーキはローター(タイヤ)の回転さえ止められれば十分で、それ以上に強力であっても宝の持ち腐れである。
・車の制動力は、タイヤが同じなら(荷重移動等を考えなければ)車重に関わらず一定である。
という話です。


P.S.
前に紹介したリンク先が、過去に価格コム上で炎上していたようです(笑)
真っ向否定する人も多いようですが、「ブレーキ強化→制動距離が短縮される」と思い込んでいる人は、まず1と2を区別できていないのだと思う。

かつてブリヂストンが、「タイヤは(ハガキ1枚に)命を乗せている」とCMしていましたが、走る・曲がる・止まるはタイヤと路面と間の摩擦力があるから可能な訳で、いかに高性能なエンジンやブレーキの車であろうとも、タイヤの能力以上のことは出来ません。

Posted at 2025/06/09 17:03:32 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月06日 イイね!

フルブレーキングできますか?(3)


リンク先の記事、いかがでしたか?

ひとつ付け加えるならば、『推測ですが、ABSが効いているとはいえ、もしかしたら急制動の場合、タイヤが熱で融け始めて路面にへばり着こうとして、普段より摩擦係数が高くなるのかもしれません。』と書かれていましたが、理由はともかく、実はタイヤの摩擦係数は、スリップ率15~20%(概ねABSが効いている領域)で最大になります。


画像は「タイヤのおはなし(日本規格協会)」より
※脱線しますが、「マンガだとタイヤがロックしてキキーと急停止するが、実際にタイヤがロックすると自動車を止めようとする力は走行抵抗だけになるので、中々停止しない」などと書かれた、大学教授が監修した一般向けの本もありますが、表のとおりロック時でもタイヤの摩擦係数は十分に高く、「物理の一般原則を当てはめるだけで、常に正しい答えが得られる訳ではない」という一例でしょう(餅は餅屋)


一般的には、「ABSはフルブレーキ時でもハンドル操作ができる」という程度の認識でしかありませんが、上記のようにABS作動時に制動距離が最も短くなります。
※ABSも早めに作動する車や遅めの車など、メーカー等により微妙に癖があるようですが、このスリップ率15~20%を正確にキープできるABSを備えた車こそが、本当の意味での高性能なブレーキを持つ車だと思う。


いずれにせよ、自動車評論家の言う「ドイツ車はブレーキの効きが良い」は、摩擦係数の高いセミメタルパッドを採用するなどして、踏み始めの効き(食いつき)が良いという所謂感覚上の話に過ぎず、ブレーキ本来の効き(フルブレーキ時の車の制動力)とは無関係の話だったのです。
※車検のブレーキテストで、タイヤロック時の制動力を確認するのはこのためです。

【結論】
「日本車のブレーキは効きが悪い」などと、さも解ったかのようにいう人は、
ブレーキがきちんと踏めていないだけの人です。
※正確には「踏み始めの効きが悪い」と表現すべきでしょう。


とは言っても、表題の「フルブレーキングできますか?」のとおり、一度も経験したことがないと、いざという時に思い切りブレーキが踏めないのではないでしょうか?

金と時間さえあれば、サーキット場でJAFなどがやっているドライビングレッスンを受けることもできますが、そこまでやる人は少ないと思います。
なので、教習所での(初速40キロからで良いので)フルブレーキング体験を義務化しても良いように思う。


【ここからは余談】
さて、前回紹介したサイトですが、そこの管理人の方が自動車評論家への提言を書かれていましたので、引用します。



私自身、過去のブログで自動車評論家の事を「(アルミテープチューンに簡単に騙されるように)大した感性もないくせに、剛性感だリニアリティだとさも解ったかのような記事を書く」だとか、「車の電気の流れも知らないようなメカ音痴なので、技術系の解説はメーカーの広報資料を書き写すだけ」などと散々批判してきましたが、その辺りも明解にまとめられているように思います。

Posted at 2025/06/06 08:17:18 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月05日 イイね!

フルブレーキングできますか?(2)


自分は免許を取って約37年、その間30万キロ以上は走ってきましたが、実は一度もフルブレーキングを経験したことがありません。

そういう人は意外と多い、というよりは、フルブレーキングを経験したことのある人の方が、圧倒的に少ないのではないでしょうか?


さて、前回の最初の質問である(走ったり止まったりに欠かせないモノ)の答えですが、
摩擦力が正解です。

摩擦力があるからこそ、その反力として駆動力や制動力が得られる訳です。


で、次の質問である(制動距離を短くするにはどうしたら良いか?)ですが、力学に詳しい人は勿論、勘の良い人ならもう気付いたと思いますが、答えは、
3の「タイヤのグリップ力を上げる」が正解です。

つまり、制動距離L(m)は、
L= v0^2 /(2×g×f)
※道路構造令の解説と運用より

v0:制動開始時の速度(m/s)
g:重力加速度(9.8m/s^2)
f:滑り摩擦係数

ここで重要なのは、fはタイヤと路面との間の摩擦係数なので(制動力=路面との摩擦力の反力)、フルブレーキでタイヤがロックする(あるいはABSでロック寸前)までブレーキを踏めば、欧州製のスーパーカーだろうが軽自動車だろうが、タイヤが一緒なら同じ値になります。
つまり、ブレーキ性能を上げたところで、制動距離は縮まらないのです。

また、高校で習ったエネルギー保存の法則から、「運動エネルギー(=質量×速さの二乗÷2)が熱エネルギーに変換されたから車が止まるのであって、当然質量が関係するはず」と安直に考える人も多いですが、そもそもブレーキが運動エネルギーと同じ大きさで反対向きの仕事(=質量×加速度×距離)をしたから、運動エネルギーが減少して熱エネルギー等となり、車が止まるのです。

ですから、運動エネルギー=(負の)仕事となるため、質量は相殺されて、速さの二乗÷2=加速度×距離、つまりV^2×1/2=α×Xとなり、V=v0、α=g×f、X=Lを当てはめれば、上記の式L= v0^2 /(2×g×f)が得られます。
※ここでは空気抵抗などは考慮しない。

従って、質量は制動距離には影響しません。
つまり、車体を軽量化したところで、同様に制動距離は縮まらないのです。
※荷重移動による影響については、別掲します。


この件については、下記のサイトで実例を基に非常に解りやすく説明されていますので、「難しい数式を示されてもよく理解できないよ」という方も、下記リンク先を参照いただければ、目から鱗が落ちること請け合いです。

(また続く)


【リンク】
クルマが重くなっても制動距離は変わらない
(常識を覆す車両重量と制動距離の関係)
https://vehicle-cafeteria.com/braking.html

Posted at 2025/06/05 07:43:51 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月04日 イイね!

フルブレーキングできますか?


突然ですが、「車は何故走ったり、止まったりできるのか?」と聞かれたら、何と答えますか?

「そりゃ、エンジンとブレーキがあるからだろ」という答えが返ってきそうですが、実はもっと重要、というかもしこれがなければ、いくらエンジンやブレーキがあっても、走ったり止まったりができないモノがあります。

何だか分かりますか?(禅問答ではなく、真面目な質問です)



さて、あなたが今乗っている車の時速100キロからの制動距離が、40Mを超えていたとします。
今時そんなんじゃ危ないから、もっと短くしたいと思ったら、次のうちどれを選択しますか?
(一つだけ選べるとして)

1 スポーツパッドとスリット入りローターに替えて、とにかくブレーキ性能を上げる。
2 内装等を外せるだけ外して、徹底的に軽量化する。
3 とりあえず、タイヤをハイグリップタイヤに替える。


どれももっともらしいですが、一つだけ選ぶなら、ここはやっぱり1ですよね?

実際、欧州車(特にアウトバーンの本拠地であるドイツ車)などは強力なブレーキが魅力の一つですが、自動車評論家も「(欧州車に比べて)日本車のブレーキはプアーで全然効かず、安全性が低い」などと常々批判してきましたので、「ブレーキが強力なほど、制動距離は短くなる」と考える人が多いと思います(実は、自分も昔はそう考えていました)

・・・が、果たしてブレーキを強化すれば、目論見通り制動距離は縮まるのでしょうか?

(続く)
Posted at 2025/06/04 15:56:35 | トラックバック(0) | 日記

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