で、最後に汎用スペーサーの話。

↑アフターパーツメーカーとしては有名な、K社製のスペーサー
いわゆる汎用スペーサー、有名メーカー製ならまあ安心かと思い、以前にネットで入手したことがあるが、とてもじゃないが怖くて使えない代物だった。
何が怖いかというと、表側を切削加工しているのだが、その加工精度が低くて造りがフラットじゃないんですね。
内側と外側で厚みが違っており、公称3mmの製品だったが、実際は内側が3.5mmで、外側が3.35mmあった(なお、メーカーにメールで問い合わせたら、公差の範囲内で不良品ではないと)

↑横から図解するとこんな感じ
図は誇張しているものの、実際に重ねてみると目視でも隙間がわかるほどの傾斜があるので、これだと中心部だけが当たって、周辺部は浮いてしまう。
つまり、線接触の当たりになる。
ホイールが摩擦接合という話は前回&前々回にもしたが、そのためにはある程度面で接触している必要があるが、これだとまともに当たってないので、ナットを適正トルクで締めても必要な摩擦力が得られない、あるいは接触している部分に応力が集中することで変形(陥没)が起こり、ナットが緩んでくる危険性がある。
実際、ネットを見るとスペーサーを使うことでナットが緩むケースも多いらしく、摩擦接合を知識として知らないチューニングショップのオーナーなどは「スペーサーを使うと一般的にナットが緩みやすくなるが、その分増締めする回数を増やせば問題ない」などと、何が原因で緩みやすくなるのか考えもせず、無責任なアドバイスをしている。
しかし、仮に増し締め回数を増やしてナットの緩みを防げても、中心部に応力が集中することに変わりはなく、今度は割れが生じる恐れがある。
実際、ネット上には「通勤途中でタイヤが外れたが、スペーサーが割れたせいだった」という事例があった(どこのメーカーの物かは不明)
あるいは増し締め(実は髪の毛1本ほど=コンマ1ミリ以下の隙間でも、増し締め出来る余地が出る)を繰り返すことによってハブフランジが無理に引っ張られ、その根本に応力が集中して・・・となると、三菱の大型と同じ理屈となり、いずれにしてもタイヤが飛ぶ(もっともハブフランジが割れる前に、確実にスペーサーの方が割れるだろうが←そもそも必要とされる強度があるのかも不明)
ちなみにこのメーカー、ハブリングも作っているが、「(ハブリングがないと)ハブ径が合ってないので、クルマはハブボルトだけでタイヤ、ホイールを支えてる」などとHP上で堂々と説明しているので、先のチューニングショップのオーナーと同様、この会社には摩擦接合を理解している社員がいないのだろう。

↑同社のHPより
ただし、これはこの会社だけの話ではなく、同業他社の製品も似たり寄ったりで、実際気になったので後日ホームセンターで売られていた他社製品を調べてみたら、袋の上から重ねて触っただけで、同じように外周側に隙間があるのが簡単に解るような代物だった。
これ以外にも、この手の社外アフターパーツは、保安基準やメーカーの高い要求品質に適合することが求められる純正品とは違って、作り手の材料力学等に関する見識も十分ではないのか、材料の選定や許容応力の検討などもきちんとされているのか不安になるような代物もある。
従って、スペーサーに限らず、ワイトレやロングハブボルトなども、加工精度が低く面接触しないとか、そもそも設計段階で強度が足りていないなど、同様の危険性をはらんだ製品が市場に多く出回っている可能性が高い。
もちろん全てのメーカーの製品がダメというのではなく、中には保安基準に適合している商品もあるが、逆にいうとそれ以外は全て不適合ということ(※)
そもそも優秀な技術者と高度なコンピューターシミュレーションを備えた三菱ですら、ハブが破断したのですから、
不適合品の品質など推して知るべし。
確率論で言えばタイヤが飛ぶのは稀かもしれないが、自分の車が壊れるだけなら「自己責任」で済むが、他人を巻き込まない保証はないし、実際に事故を起こせば、十中八九整備不良で片付けられてしまう。
・・・ユーザー側も、よく考えるべきだと思う。
(※)
ちなみに、KSPエンジニアリングという会社がリリースするREALワイドトレッドスペーサーは、ワイトレとして唯一保安基準に適合しているし、適合していないスペーサー(プレートスペーサー)の方も問題はなさそうに思う。
Posted at 2024/03/16 09:37:16 |
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