その昔、クロノス系などに積まれたK型V6エンジンというと、よく言われたのが「非常にパワフルで、雨の日などは気をつけないとすぐにホイールスピンを起こす」とか、「吹き上がりも非常にスムーズで、さすがはポルシェの技術が入っているだけの事はある」という評価でした。
実際、当時の試乗記を見ると、多くの自動車評論家が口を揃えて「2Lでも低速からトルクがありレスポンスも良いため、アクセルに軽く足を乗せるだけで流れをリードできる実力を持ったエンジン」だなどと評する反面、「低速トルクがありすぎるが故に、タウンユースや渋滞時などではアクセルワークに気をつけないと、ギクシャクした走りになってしまうので、初心者には不向き」などと書いていた。

↑萩原秀輝氏によるオートザムクレフ2.5Lのインプレ(ドライバーから)

↑佐藤久美氏によるユーノス500 2Lのインプレ(CARトップから)
さて、本当にポルシェの技術が入っているのかはともかく、自分がミレーニアのユーザーになって感じたのは、確かにスムーズですが、同世代の他社製V6(VQやMZ)に比べて特段優れているとまでは言えず、また評論家諸氏が褒め称えていた「低速域からの豊かなトルク」についても、むしろ細いと言うか、回転で稼ぐタイプのエンジンと言う印象でした。
じゃあ、評論家も含めて嘘を言っていたのかというと、そうではなく、
実は、スロットルのトリックに騙されていた人が多かったのだと思います。
どういう事かというと、実はこの車、ワイヤーの遊びを極限にまで縮めて、しかもスロットルレバーのワイヤーを巻くボビンのような部品(アクセルドラムあるいはスロットルドラムというらしい。以下、ドラムと称す)を小径化することで、アクセルに足を乗せた瞬間からスロットルバルブが開き、その後も一気に吹け上がるという、MTのスポーツカーみたいなセッティングになっていたのです。
実際、修理書を見ると遊びの基準値が、何と1~3ミリになっています(3ミリはともかく、1ミリなんて遊びがないに等しい・・・)
ちなみに、ATのセダンならば遊びは5~7ミリ程度が普通で、レスポンスを重視してちょっと詰め気味にしても、3~5ミリ程度。
なお、昔の王道を歩んでいた頃のベンツなどは、扱いやすさ=長距離を運転しても疲れないように、この遊びを結構大きめに取っていたそうです。
また、ドラムの半径も実測で約26ミリと小さくなっています。
これもちなみに、手近にあった他の車の半径を測ったら、約29~約33ミリでした。
つまり、ミレーニアの場合、アクセルに足を乗せた瞬間からエンジンが反応し、その後もアクセルを同じ量だけ踏んだとしても、他車より1~2.5割ぐらい余計にスロットルバルブが開くようになっているのです(=ドッカンアクセル)
そりゃあ速く感じますよ・・・
もっとも、注意深く観察すれば、たとえ短時間の試乗だったとしても、これらの挙動がエンジンの特性のせいではなく、スロットルの方をいじってるんじゃないか?と見抜けるはずですが・・・
そもそも、自動車評論家を名乗るなら「可変バルタイも付いていないのに(※1)、ちょっと変だな?」と思わないと失格ですよね。
もちろん中には、「もう少し穏やかなペダル(特性)のほうが良い」と言うベテラン評論家もいるにはいましたが、若手は軒並み「エンジンのトルクがありすぎるが故に、アクセルワークに気をつけないとギクシャクした走りになる」なんて書いていました(※2)
続く
注釈
※1
VRISなる可変共鳴過給システムはついていましたが、これも80年代なら自慢できましたが(例えば87年のトヨタACIS)、84年の可変バルブのシリウスダッシュ以降、88年のNVCSをはじめ、V-TECやMIVEC、VVTなど、各社から可変バルタイが出揃った90年代には陳腐化し、いつまでもカタログに堂々と記載していたのはマツダぐらいです。
※2
彼ら若手評論家も、今ではAJAJの理事(萩原氏)だったり、World Car Awardsの選考委員(佐藤氏)だったりと、もはやベテランの領域ですので、きっと違いのわかる男(女)になっているとは思います(笑)
なお、カーマニアの中には、「(ミレーニアは)オルガン式ペダルだから微妙なアクセルワークが難しい」という人もいますが、オルガン式か吊り下げ式かは(スロットルの動きには)影響しません。
Posted at 2024/04/07 10:59:27 |
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