前にSEVの話をしたときに、昔流行ったマイナスイオンブームが背景にあるのではと書きましたが、今回はイオン界の大御所である(?)プラズマクラスターについて取り上げてみます。
(1)そもそもマイナスイオンとは?
マイナスイオンというのは学術用語ではなく商業的な造語なので、正確な定義と言うのも難しいですが、一般的には大気イオンのうち、マイナスの電荷を帯びたイオンを指すようです。
この大気イオンには小イオンと大イオンの2種類がありますが、小イオンのうちプラスの電荷を帯びたのが[H3O+・(H2O)n]、マイナスの電荷を帯びたのが [O2-・(H2O)n]です。
なお、マイナスの小イオンには[CO4-・(H2O)n]も存在します。
※(H2O)n:水和イオン。
因みに、大イオンは、空気中に浮遊する微粒子にこの小イオンが衝突して出来たものです。
(2)イオンの発生方法は?
大気イオンは、(自然界では)宇宙線などの高エネルギーの放射線によって、大気が電離されることにより生じます。
※上空に電離層があるのはそのため。
つまり、大気を電離させることが出来れば人工的に作る事も可能であり、実際に静電気除去に使われるイオナイザー(電圧印可式=コロナ放電式)は、針先のような電極に高電圧を掛けてコロナ放電を起こし、大気を電離させて大気イオン(小イオン)を発生させています。

春日電機株式会社のHPより(AC式)
で、シャープのプラズマクラスターも、実はこのイオナイザーと同じ原理の物です。
※コロナは放電状態、プラズマはそれによる物質状態を指すので、コロナ放電によりプラズマが形成されるというイメージ。

シャープのHPより
ちなみにシャープですが、除電特化型プラズマクラスターイオン発生機なる製品も作っていますが、むしろ順番は逆で、イオナイザーを除菌ブームに便乗し白物家電に転用しただけのように思います(その理由は最後に)

シャープのHPより
シャープの説明では、プラスイオンは簡易的に[H+・(H2O)n]となっていますが、現実には水素イオンは単独では存在できないため、正しくは[H3O+・(H2O)n]です。
※つまり、元々空気中に存在する大気イオン(小イオン)と同じ物が生成される。
(3)イオナイザーの種類は?
次に、イオナイザーの電源方式ですが、下記のサイトで詳しく解説されていますので、興味のある方はそちらをご覧ください。
https://www.keyence.co.jp/ss/products/static/static-electricity/ionizer/method.jsp
プラズマクラスターは上の説明図のとおり針が2本あるのでDC式ですが、プラスとマイナスのイオンを同時に同量出す(通常モード)とのことから、おそらくSSDC式だと思います。
因みに、AC式は針が1本+対向電極、DC式は針がプラスとマイナスの2本ですが、実際のイオナイザーはそれらが連結された多極型になっています。
※つまり、除電特化型プラズマクラスターとは単に電極を連結しただけ。
SSDC方式のデメリットは、『常時すべての電極針に電圧をかけているため、発生したプラスイオンとマイナスイオンが引きつけ合ってしまい、イオンバランスは悪くなります。(上記サイトより引用)』だそうですが、プラズマクラスターの電極部はかなり小さいので、確かにイオンバランスは悪そうです。

イオン発生器(電極部)
(4)クラスターは独自技術でも何でもない?

シャープのHPより
HPを見ると、「そうか、シャープのプラズマクラスターが生成したイオンは、クラスター化するのが特徴なのか(だから効くんだ)」と一般消費者に勘違いを誘発させるような表記ですが、前述のとおり、小イオンは水和イオンの状態で存在しており、イオナイザーで生成したイオンもクラスター化します。
なら、他になにか独自の構造でもあるのかと思い、手持ちの初代ティアナの新型車解説書に回路図が載っていたので、念のため確認しましたが、電源回路で昇圧→放電する以外に特段の仕掛けはありませんでした。

回路図
いずれにしても、生成物を見ても構造を見ても、プラズマクラスターには独自技術と呼べるものはなく、イオナイザーと全く同じ物だと理解できると思います。
(つづく)
Posted at 2025/10/23 12:46:24 |
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