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2024年03月19日 イイね!

あなたの知らないオカルトチューンの世界【改定版】


一昔前に流行ったホットイナズマ、エコサンダーなどのコンデンサチューンですが、公取から排除命令(現在は消費者庁ができて、名称が措置命令に変わっている)が出たので、一部商品を除いて今では殆ど一掃されました。
このコンデンサチューン、元を辿ればボンファイアが元祖だと思う。

そもそも昔のポイント式の点火装置においては、一次電流の遮断を妨げ、接点を消耗させるアークを吸収する為に、コンデンサが付いていた。
ボンファイアは、これを置き換えるチューニングパーツなので、広告には「ポイント(接点)の寿命が約10倍延長する」だとか「二次電圧の増大に依りミスファイアがなく始動は一発」などと謳っていました。
見た目は何の変哲もないタダの筒型コンデンサですが、どうやら「高性能コンデンサ」だったらしい(?)

昭和40年代前半の雑誌にすでにボンファイアが登場しているので、その歴史はかなり古いですね。


↑モーターマガジン68/4号のボンファイアの広告(隣は初代フェローの広告!)


広告を見ると特殊半導体素子応用・・・などと謳ってますが、仕組み等の説明もなく一切謎です。
この商品、つまるところ(ポンコツ車の)容量抜けしたコンデンサを新品に置き換えれば・・・のシロモノだったのではと思うが、値段は結構高い(定価2,000円なので一見安く感じるかもしれないが、今の貨幣価値に直すと15,000~20,000円!)


ちなみに、通販なんかでよくある「個人の感想であり、効能ではありません」というのは、メーカー自ら効能を謳うと、それを証明できなかったときに措置命令を喰らってしまうので、それを避けるための「おまじない」みたいなもの(笑)
50年以上前の広告なので、30%馬力アップとか、燃費が5~15%改善とか、堂々と数字で効能を謳っていますが、今なら即アウトです。

それでもこのボンファイア、効果の程はともかくとして、一応は理にかなった商品だったのですが(もちろん肯定する気はなく、ただのコンデンサを理屈並べて高値で売っていたんだから、立派なボッタクリ商品ですが)、ダイレクトイグニッションが当たり前の21世紀になって、不死鳥というよりは亡霊の如く蘇った「バッテリーに並列接続するだけのコンデンサチューン」は、全くもって意味のない商品でした。


↑昔のエロ雑誌とかによく載ってた


理論的には「鉛のバッテリーでは、即時に必要な電力を出力できないので、ホットイナズマがあれば、ホットイナズマ側から出力するため、アクセルオンなどの突出した電力が必要な際に安定供給できる」んだそうです。

ここで「うん、そうだよね~」とかすぐ納得しちゃう人は、
知ったかぶりの傾向があるので、気を付けてください(※1)


まず最初に、「鉛バッテリーが即時に必要な電力を出力できない」っていうのが、何を言ってるのかさっぱり理解できません。

もし、リチウムイオン電池等と比較して放電レートの話をしているならお門違いで、EVやPHEVの駆動用バッテリーならともかく、内燃機関車の補機バッテリーであれば、エンジンを掛けるという本来の役目さえ果たせれば、それで十分ですから。
逆に言えば、走行中の電力供給はオルタネーターの役割であり、バッテリーは電力の供給を受ける側なので(つまり「必要な電力を出力」するのは鉛バッテリーじゃなくオルタネーター)、前提からして間違っており、お話になりません(※2)

もちろん細かいことを言えば、ある程度の負荷がかかっている状態で更にA/Cを掛けるなどして急に電気負荷が増え、一時的に大きく電圧降下した場合には、バッテリーから瞬間的に持ち出しになるケースも考えられますが、ICレギュレーターですぐに必要な電力が調整されますし、そもそもアクセルオン程度で持ち出しにはなりません(※3)

ついでにもう一つダメ出しすると、「470μFが低速用で4700μFが高速用」と使い分けてるみたいですが、並列で繋げれば合計されるだけなので、ここまで来ると、もはや明らかに無知な人を狙った確信犯。
逆に、もし本気でそのように意図したなら、九九を言えない理工系学生と同じで超素人レベルの設計。

・・・と、この時点で既にツッコミどころが満載なのは、
「電気や車のメカに詳しい人は買うな」というメッセージだったのでしょう(笑)


実際、アクセルを煽る程度でどれだけ消費電流が増えるか実験したことはないですが、例えばウインカーの点滅時のように、一時的に僅かな電圧降下が起きたとしても、ボンファイアの時代のポイント式ならいざ知らず、少なくとも80年代以降のフルトラ式で電子進角制御を採用している車であれば、何も影響はありません(※4)

また、その僅かな電圧降下に伴いコンデンサが放電した場合ですが、どう考えてもバッテリー端子部分で並列接続している以上、充電電流に流れて終わりです(※5)
だから、何一つ貢献しません。
つまり「トルクが上がった」は1000%プラシーボ(※6)

っていうか、鉛バッテリーが、本当に必要な電力を即時に出力できないとしたら、
そもそもエンジンが掛かりません。
(エンジンを掛けるには、アクセルオンなどより突出した大電力が瞬時に必要なので)


ここまで説明してもまだ納得できず、「トルクはともかく、アクセルレスポンスは間違いなく上がった」などと寝ぼけた主張をされる方にもう一つ付け加えると、電気の伝わる速さは光速と同じと考えられているので、それもプラシーボ以外の何物でもありません。

というのも、光速は毎秒約30万キロメートルであり、アクセルを踏んでからスロットルが開くまでの遅れ(約20~30ms=2~3/100秒)や、スロットルが開いてから気筒内に空気が取り込まれるまでの遅れ(約100ms=1/10秒)の方が、時間的なラグはずっと大きいからです(※7)

ちなみに毎秒約30万キロメートルの速さだと、なんと
一秒間に地球を7周半できます!
(現実には導体抵抗の影響を受けるので、4周か5周位かもしれませんが・・・)


特に、取り付けの容易性を狙って発売された、ホットイナズマポケット、エコサンダーミニみたいなシガーソケットに差すだけのヤツなんて、何がしたいのか全くわかりません。

ただ面白いのは、モーターマガジン68/4号を見ると、ボンファイアの類似品として、ニューサンダーボルトやE-upという商品の広告も載っていますが、このE-upという商品には「ダッシュ型」といって取り付けの容易な室内置き型の設定もあったこと。


↑モーターマガジン68/4号のE-upの広告


そう、すでに50年以上前にもホットイナズマポケットみたいな商品があったんですよ(というかこの業界、発想が何十年も変わっていない・・・)



なお、ホットイナズマですが、回路保護設計がしょぼかったせいで(たぶんヒューズだけと思われる)、サージ電圧に耐えられず発火事故を起こして、リコール騒ぎになりました。

以下は、国交省自動車局プレスリリースから引用です。
『不具合の内容
電圧安定化装置(ホットイナズマシリーズ)において、回路保護機構の設計値を超える、バッテリから生じるサージ電圧(70V~20KV)が繰り返し印加されることにより、基板部品及び基板の一部が破損し、これをきっかけとして基板パターン間での放電が生じ、基板へ炭化導電路が生成され、トラッキング現象が起き、発熱、発煙、発火が生じるおそれがある。』



↑こちらは類似品をバラしたもの(画像はJACKING UPINGというHPより引用)一応ヒューズは付いているが・・・


「バッテリから生じるサージ電圧」という表現が意味不明ですが(国交省の担当者も、おそらく内容を正確には理解していないのでしょう)、要は開閉サージなどのノイズで間違いなく、正確に言うと「コイルから生じるサージ電圧」です。
今回は基盤のトラッキング(ショート)が発火原因ですが、サージ電圧でコンデンサ自体が破裂、発火に至る可能性もあります。



↑車のノイズは主に開閉サージ(特に遮断サージ)でしょう。ちょっと電気に詳しい人でもロードダンプぐらいしか認識していないかもしれませんが、実はA/Cを切った際など、オフ時の急激な電流変化によるリレー(コイル)の逆起電力により、過渡的な高電圧サージが発生することがあります(画像は菊水電子工業のPDF資料より引用)



↑純正パーツ、あるいは社外品でも真っ当なメーカーの製品であれば、EMS(Electromagnetic Susceptibility)を考慮して当然各種バリスタやツェナーダイオードなどでサージ対策がされていますが、それ以外だと何も考えておらず(あるいは知らないだけか)、素人DIYレベルの設計なので回路保護はヒューズのみという場合があります。その手のメーカーの後付パーツや、自作品を取り付ける場合は気をつけてください(画像はTDKのHPより引用)


なお、リコールなので現在でもメーカーに言えば対策部品(事故以降の製品にはツェナーダイオードが付いているようなので、たぶんそれを仕込んだだけのバイパス線)を無償配布して貰えるようですが、類似品や自作品にも同じリスクがありますので、未だにコンデンサチューンをやってる人はもう殆どいないとは思いますが、一応注意喚起しておきます(このメーカーの製品は販売数が多かったので、たまたま発火事故が続いただけでしょう)


この手のコンデンサチューン、一昔前には結構流行ったんで、車好きには文系(orなんちゃって理系)の人が多いのか、それとも陰謀論などにハマるのと同じ理屈なのかわかりませんが・・・いずれにしても、
発火事故にだけは気をつけてください。
(確率論的には宝くじに当たるようなものかもしれませんが、愛車が燃えたらシャレになりません)

かくいう私も、20年以上前ですが「オートメカニック」に騙されて(?)アーシングをやったことがあり、直後は「なんかアクセルレスポンスがよくなったし、トルクも明らかに増えた。それにオーディオの音も澄んで聞こえる」とご満悦だったんですが、しばらく経って外したところ、何の変化もありませんでした・・・

なお、このブログは個人の感想であり、効果には個人差があります。


注釈

(※1)
自動車評論家や、チューニングショップオーナーとかでも、この文言を何の疑問もなく受け入れる人が多くいるのが現状ですが、本来は「プロ」であるべき彼らを含めて「バッテリー=電源」だと思い込んでいる人が多いから、こういうトリックに騙されるのです(何を言ってるか理解できない方は、浮動充電の回路がどうなっているかを調べてください)

(※2)
バッテリーは発電不足に陥りやすいオルタの出力を補完するための補助電源だとか、或いは常に細かく充放電を繰り返してリップルを吸収している、などと思い込んでいる人がいますが、コンデンサやキャパシタじゃあるまいし、どうしてそういう発想になるのかわかりません(バッテリーが充放電するのと、コンデンサが電荷を溜めたり放出したりするのとでは仕組みが全く違うし、そもそもの使用目的も違うのに、それを理解できていない人が理系でも何故か多い)

まず大前提として、バッテリーに一旦溜めた電気を使うよりオルタが発電した電気を直接使った方がエネルギー効率は高いのは当たり前で、わざわざ効率の低いバッテリーの電源を併用するような電源回路を設計するアホなエンジニアはいません(発電機の能力を上げればいいだけの話。充電制御は、後から付け足された考え方に過ぎない)
なお、その充電制御が良く分かっていない人に説明すると、充電制御車の場合は、加速時などに発電電圧を下げる事で充電電流をカットし、エンジンの回転負荷を減らしてスロットル開度を抑えることで燃費を向上させているので、状況によってはバッテリーが放電、つまりオルタとの並列電源になっている事もあります。

(※3)
'80年代以前の旧車はともかく、現在のオルタはSCタイプのステーターコイルが主流になっており、その発電能力はアイドリングでも結構余裕があるので、持ち出しは滅多に起きませんが、例えば激しい雷雨の夏の夜に渋滞にハマり、ブレーキ踏みっぱなしでヘッドライトやエアコン、オーディオをONしたまま、ワイパーも稼働させるような状況では、持ち出しになる可能性があります。

ちなみに、車のバッテリーは、上記のように負荷電流が増えるなどしてオルタ電圧がバッテリー電圧と同等程度に下がると持ち出し、つまり充電から放電へと変わる事になります(ここでも何を言ってるか理解できない方は、先ほどの回路図を自分でも書いてみて下さい)

(※4)
例えば、電圧に関わらずコイルの一次電流が一定となるように、ECUがコイルの通電時間を制御しているので、多少の電圧降下があっても息つきを起こすような車は、概ね80年代以降は存在しない。
・・・という具合に、オカルトパーツ業者でも思いつくレベルの弱点は、メーカーの優秀な技術者たちによって疾うの昔に対策がなされてるので、我々のような素人の出る幕はありません。

(※5)
余談ですが、ネット上でバイカー(文面から理系っぽい人)が「ジェネレーターは交流の中からプラスの電気を取り出すだけなので、0~12Vという電圧変動が生じているが、これをホットイナズマで平滑化できる」と言っていました。

確かに昔の単車には一相半波整流も多かったようですが(それでも普通は平滑化のためにコンデンサが入っているはずなので、0~12Vではない)、今時は50ccでも三相全波整流が珍しくなく、もちろん車のオルタと同様にリップル電圧は僅かに残りますが、それが問題にはなりません。
また、仮にコンデンサを平滑化のために追加接続するにしても、バッテリー端子を使って並列接続すればバッテリーに流れる充電電流を平滑化するだけで、他の負荷にはリップル電圧が残ったままの電流が流れます(バイクは今でもヘッドライトだけは別系統で交流とかもあるようですが、基本は車でもバイクでも同じ。これも回路図を書いてみてください)

ホットイナズマと同様の品を電子工作で自作できる「理系と思しき人」が、なぜこの事実に気づかないのか、文系の私から見ても不思議です。

(※6)
ダイレクトイグニッション以前の時代は、定番チューンとして高性能プラグコードがありましたが、そもそもスパークの強さと火炎核の成長過程に因果関係はなく、スパークが強くなったからと言って火炎伝播が速くなることはありません(詳しく言えば、火炎伝播速度は主にシリンダー内の渦=乱流に依存する)
つまり、正常に引火さえすれば、その後の燃え広がる早さは一緒だということ。

現に、NGKは今でもパワーケーブルを売っているが、昔は永井に対抗してパワーアップや燃費向上を声高に謳っていたと記憶するが、今はスパークが30%増とは謳っていても、その結果どうなるかは全く触れていません(「潜在能力を引き出す」という抽象的な表現のみ)
おそらく消費者庁から景品表示法絡みで照会を受けるなどして広告を自主規制し、事実のみを謳うようにしたのだと思う(プラグメーカーですから、スパークが強くなってもパワーが上がらないって事ぐらい当然知っている)

(※7)
同様に、導電性の向上によりレスポンスアップを謳うチューニングヒューズだとか、訳の解らない商品が数多く存在しますが、吸入速度を変えられない以上アクセルレスポンスが上がる事は絶対にないので、導電性云々を謳うパーツは全て「個人の感想であり、効用ではありません(1000%プラシーボ)」だと断言できます。

ちなみに、昔「1/100秒から1/1000秒の技術へ。あ、この瞬間が◯産車だね」などとCMで言っていたメーカーがありましたが、そんな僅かな瞬間は、エスパーでもない限りそもそも体感できません。

Posted at 2024/03/19 16:42:22 | トラックバック(0) | 日記
2024年03月16日 イイね!

その社外アフターパーツ、保安基準に適合していますか?


で、最後に汎用スペーサーの話。

↑アフターパーツメーカーとしては有名な、K社製のスペーサー


いわゆる汎用スペーサー、有名メーカー製ならまあ安心かと思い、以前にネットで入手したことがあるが、とてもじゃないが怖くて使えない代物だった。

何が怖いかというと、表側を切削加工しているのだが、その加工精度が低くて造りがフラットじゃないんですね。
内側と外側で厚みが違っており、公称3mmの製品だったが、実際は内側が3.5mmで、外側が3.35mmあった(なお、メーカーにメールで問い合わせたら、公差の範囲内で不良品ではないと)


↑横から図解するとこんな感じ


図は誇張しているものの、実際に重ねてみると目視でも隙間がわかるほどの傾斜があるので、これだと中心部だけが当たって、周辺部は浮いてしまう。
つまり、線接触の当たりになる。

ホイールが摩擦接合という話は前回&前々回にもしたが、そのためにはある程度面で接触している必要があるが、これだとまともに当たってないので、ナットを適正トルクで締めても必要な摩擦力が得られない、あるいは接触している部分に応力が集中することで変形(陥没)が起こり、ナットが緩んでくる危険性がある。


実際、ネットを見るとスペーサーを使うことでナットが緩むケースも多いらしく、摩擦接合を知識として知らないチューニングショップのオーナーなどは「スペーサーを使うと一般的にナットが緩みやすくなるが、その分増締めする回数を増やせば問題ない」などと、何が原因で緩みやすくなるのか考えもせず、無責任なアドバイスをしている。

しかし、仮に増し締め回数を増やしてナットの緩みを防げても、中心部に応力が集中することに変わりはなく、今度は割れが生じる恐れがある。
実際、ネット上には「通勤途中でタイヤが外れたが、スペーサーが割れたせいだった」という事例があった(どこのメーカーの物かは不明)

あるいは増し締め(実は髪の毛1本ほど=コンマ1ミリ以下の隙間でも、増し締め出来る余地が出る)を繰り返すことによってハブフランジが無理に引っ張られ、その根本に応力が集中して・・・となると、三菱の大型と同じ理屈となり、いずれにしてもタイヤが飛ぶ(もっともハブフランジが割れる前に、確実にスペーサーの方が割れるだろうが←そもそも必要とされる強度があるのかも不明)


ちなみにこのメーカー、ハブリングも作っているが、「(ハブリングがないと)ハブ径が合ってないので、クルマはハブボルトだけでタイヤ、ホイールを支えてる」などとHP上で堂々と説明しているので、先のチューニングショップのオーナーと同様、この会社には摩擦接合を理解している社員がいないのだろう。


↑同社のHPより

ただし、これはこの会社だけの話ではなく、同業他社の製品も似たり寄ったりで、実際気になったので後日ホームセンターで売られていた他社製品を調べてみたら、袋の上から重ねて触っただけで、同じように外周側に隙間があるのが簡単に解るような代物だった。


これ以外にも、この手の社外アフターパーツは、保安基準やメーカーの高い要求品質に適合することが求められる純正品とは違って、作り手の材料力学等に関する見識も十分ではないのか、材料の選定や許容応力の検討などもきちんとされているのか不安になるような代物もある。

従って、スペーサーに限らず、ワイトレやロングハブボルトなども、加工精度が低く面接触しないとか、そもそも設計段階で強度が足りていないなど、同様の危険性をはらんだ製品が市場に多く出回っている可能性が高い。

もちろん全てのメーカーの製品がダメというのではなく、中には保安基準に適合している商品もあるが、逆にいうとそれ以外は全て不適合ということ(※)
そもそも優秀な技術者と高度なコンピューターシミュレーションを備えた三菱ですら、ハブが破断したのですから、
不適合品の品質など推して知るべし。


確率論で言えばタイヤが飛ぶのは稀かもしれないが、自分の車が壊れるだけなら「自己責任」で済むが、他人を巻き込まない保証はないし、実際に事故を起こせば、十中八九整備不良で片付けられてしまう。
・・・ユーザー側も、よく考えるべきだと思う。


(※)
ちなみに、KSPエンジニアリングという会社がリリースするREALワイドトレッドスペーサーは、ワイトレとして唯一保安基準に適合しているし、適合していないスペーサー(プレートスペーサー)の方も問題はなさそうに思う。

Posted at 2024/03/16 09:37:16 | トラックバック(0) | 日記
2024年03月15日 イイね!

ボルト強度区分、理解していますか?


前回、ハブリングの話のときに摩擦接合にちょこっと触れたが、機械の集合体である自動車の場合、ホイールだけでなく多くの部品が、構造力学で言う所の摩擦接合(=接触面の摩擦力で支える)によって取り付けられている。

この事実を知らないと、「サブフレームを留めるボルト孔は、組付けしやすさを考慮してバカ穴になっている。そのせいで段差を超える度にフレームがズレて動くので、挙動が不安定になる」とか、「特に日本車は組付けを重視して大きめの穴になっているので欧州車よりもズレやすく、それが剛性感の低い走りにつながっている」などというバカバカしい話を信じてしまい、「そのボルト孔の隙間を埋めてズレを防止し、足回りの剛性を上げる」というリジットカラーなる謎のオカルトパーツに手を出してしまう。


まあ、その程度なら(散財以外に)実害はないかもしれないが、最近はYoutubeなどの動画を見て、それこそ初心者が見様見真似で車を弄るケースが増えたが、中には危ないケースもある。

例えば「取り外したボルトが錆びていた(or舐めた)ので、ホームセンターで新しいボルトを買ってきて取り付けた」などとネットに意気揚々と上げたり・・・
知恵袋の車検・メンテカテを見ても、似たような質問で、質問者はもちろん、8割方の回答者はホムセンのボルトで代用してはいけない事すら知らない、という現実・・・(なぜいけないか解からない人は、最後まで読むべし!)


摩擦接合というのは、簡単に言えば、強度の高いボルト(≒高力ボルト)を使って強い軸力(≒締め付けトルク)で締め付けることで、必要な摩擦力を得ている。
解りやすく言うなら、壁に本を強く押し当てると、例えば辞書のような重い物でも落ちないというのと一緒(高校で学んだクーロンの摩擦法則を思い出してほしいが、ここで重要なのは垂直抗力)

ちなみに半可通の人(自動車評論家を含む)が「欧州車のホイールボルトの方が部品点数が少ないため剛性が高く、そのため剛性感の高い足回りになる」などと平気で言うが、摩擦接合で重要なのは軸力であり、そのためボルトに求められるのは「剛性ではなく強度」である(・・・この件に限らず、自動車評論家はあまりにも無知すぎる)


で、車の場合は頭に数字や記号が書いてあったりするボルトが多いが、これが強度区分で、交換するなら同等以上の強度区分のボルトを選ばないといけない。
(なお、組み合わせるナットもボルトと同等以上の強度が必要)


↑強度区分の刻印例


一方、ホムセンで一般的に売られているのは、頭に4.8と刻印されているように、強度の低いボルト(≒普通ボルト)なので、特に指定トルクが高い箇所の場合、その軸力に耐えられず、塑性域まで伸び切ってしまい、必要な摩擦力が得られずに母材間にすべりが生じて支圧接合(ボルトの耐せん断力で支える状態)に移行する。
こうなると、ボルトが折れるのは時間の問題。

正直、それがエンジンルーム内だったらまだしも、
足回り関係だとどうなるか?(※)

昨年、札幌で改造ジムニーのタイヤが飛ぶ事故があったのは記憶に新しいが、個人的には報道で言われたような「単なる整備不良」によるナットの緩みではなく、摩擦接合をろくに理解していないアフターパーツメーカー製のロングハブボルトやスペーサー、ワイトレ等を使ったこと自体が怪しいのではと思っている。

その話はまた今度。


注釈
(※)
純正ハブボルトには強度区分10.9の高力ボルトが使われていますが、社外品はHPなどを見ると材質は表示されている物が多いが、強度区分はまず明記されていません。
なお、強度区分10.9とは引張強度1000 N/mm²、降伏強度900 N/mm²です。

Posted at 2024/03/15 10:10:00 | トラックバック(0) | 日記
2024年03月13日 イイね!

ハブリングの役割を正しく理解しよう


youtubeなどを見ると「ハブリングがないと、ボルトだけでホイールを支えているので危険」という人が、タイヤショップやチューニングショップのオーナーなど、本来はプロであるべき人の中にも結構いる。
でも実はコレ、ボルト・ナットによる接合(理論)を理解していない素人の意見。

ホイールは、素人考えではボルト(の耐せん断力)で支えているように思うが、実はハブとホイールの垂直接触面の摩擦力で支えており(構造力学で言うところの摩擦接合。機械設計などの分野では一般的)、決してボルトで支えているのではない。
ましてや、センターハブは単にセンタリングを行っているだけなので、ホイールを支えてなどいない。

なので、純正ホイールでも、センターハブとホイールの間には0.1ミリの隙間がある(だいいち公差もあるので隙間がないと嵌らない。無理に叩き込めば入るかもしれないが、今度は外せなくなる)


で、社外ホイールでよくあるのは、ハブ径が73Φ(pcd114.3)と67Φ(pcd100)の二種類。


↑73Φの方は、元々ハブ径が73ミリと一番大きかったセドグロにも履けるように出来たのだが、ホイール側は上記の理由から、(純正と同じく)正確には73Φではなく73.1Φになっている


なので、例えば「73-60」と謳っている汎用ハブリングは、73.1Φのホイールに合うように作られているので、外径が73.0ミリで、内径が60.1ミリというように、各々0.1ミリずつ隙間が出来るようになっている。


ところが、今回BSのエコフォルムSE-15というホイールを中古で買ったら、その汎用ハブリングが奥まで入らない。
ノギスで測ってみたところ、ハブリングには特に問題がなかった(昔は、例えば樹脂製の中華ハブリングは巣だらけで寸法差もあったが、さすがに今はほとんど淘汰された)

そこでホイールを検証したところ、ホイールボアの手前側は確かに73.1ミリあるが、奥がだんだん細くなっていて、深さ9ミリぐらいのところでは72.9ミリしかない。
ホイールボアは通常仕上げ段階で切削加工されるが、このホイールは奥側が僅かにすり鉢状というかテーパー形状になっているようだ・・・


実は、冬タイヤ用に持っているSE-12には、BS純正のハブカラー(BSでは昔からこう呼ぶ)を嵌めているのだが、今回汎用にしたのは、そのハブカラーが1本1,100円→1,980円と、大幅値上げされていたから。

BS純正のハブカラーだと、もしかしたらテーパー形状になっていて合うのかもしれないが、嵌めるときにそんな印象は受けなかったし、純正品を使わせるために(?)テーパー加工しているとも思えず、わざわざタイヤを外して検証するほどでもない(交換するときに再度検証してみたいとは思う)
実際、「BS製以外のハブカラーは使えません」といった注意書きも書かれておらず、現時点で断定はできないが、ホイール側の加工精度に難があるのではないだろうか。

だとすると、SE-15固有の問題か特定の時期の製造ロットの問題かわからないが、SE-15と同型のホイールは今も売られているので、ハブリング必須派の人は購入時に確認されたし。


↑ちなみに、BSのホイールは昔からすべて製造委託(外注)になっている


みんカラを見ると、「(BSのホイールに限らず)ハブリングがキツキツだったので、ハンマーで打ち込んだ」という投稿があったりするが、通常はそういう事はありえないので、その場合、ハブリングかホイールかどちらかの加工精度が甘いのだと思う。
Posted at 2024/03/13 15:14:14 | トラックバック(0) | 日記
2024年03月09日 イイね!

電装品いじり 車両用配線の種類とスケアなど(兼備忘録)


電装品いじりの際に使う車両用の配線ですが、一般的にはAVSかAVSS(いずれもJIS規格)が多い。

AVS 外径2.0ミリ 0.5sq 12A(周囲温度40℃、以下同)、6A(70℃)
   外径2.2ミリ 0.85sq 16A(40℃)、8A(70℃)
   外径2.5ミリ 1.25sq 20A(40℃)、10A(70℃)
※許容電流は各周囲温度の下で、導体飽和温度が耐熱温度80℃となる電流

ちなみに、手に入りやすいエーモンのだと外径2.1ミリのがAVSの0.75sqで、許容電流は6.7Aと記載されているが、これはあくまで周囲温度70℃での数値(室内で使うオーディオ配線などの場合は40℃で考えれば良いので、14AぐらいまではOKか?)


AVSS 外径1.6ミリ 0.5sq 11A(40℃)、5A(70℃)
   外径1.8ミリ 0.85sq 14A(40℃)、7A(70℃)
   外径2.1ミリ 1.25sq 19A(40℃)、9A(70℃)

なお、上記の外径は標準寸法なので、例えばAVSSの1.25sqだと、最大外径2.2ミリまでは許されるので、例えば外径2.2ミリのものだと、AVSの0.85sqなのかAVSSの1.25sqなのか判断がつかない。
なので、最終的には剥いて線径を図る必要がある。



↑音響メーカー(カロ)のオーディオハーネスだと、安全性を見越してか常時電源&アースはAVS1.25sq、ほかは0.5sqが多い


↑最近の社外変換ハーネスは、同じくAVSS0.85sq、0.5sqを使う所が多い


ただ、エーモン製のAODEAオーディオハーネスは、コスト重視なのか、常時電源にもAVS0.5sqを使っていたりするが(黄色線に「AVS 0.5 SQ」と印字されているので間違いない)、カーオーディオはMAX10Aが多く、許容電流が12A(周囲温度40℃)なので、まあ問題ないという事だろうが、ちょっと心許ない気もする。

もっとも、実際にはカーナビしながらラジオ聞くぐらいなら~2A、同じくCDを結構な音量で鳴らしても3~4Aぐらいしか使わないので、逆に言うとカロなどが過剰品質という事になる。
Posted at 2024/03/09 17:22:55 | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「過積載だとなぜ止まれないか? http://cvw.jp/b/2036415/48486763/
何シテル?   06/15 08:57
ネットを見てると、車の情報に関する様々な誤解やデマ、更には疑似科学であるオカルト チューンが大手を振ってまかり通っているので、本音で書きます 皮肉屋...
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