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LGtouringのブログ一覧

2024年05月10日 イイね!

【車両火災】自作ホットイナズマの危険性


ホットイナズマですが、その昔発火事故を起こしてリコール騒ぎになったのは割と有名ですが、なぜ発火したのかはよくわからない、という方も意外と多いのではないでしょうか?

原因については、以前にこちらでも書いたのですが、オクなどを見ると未だに自作ホットイナズマを販売している人がいるし(本家もまだポケット型のを売ってるみたいですが)、自作に興味を持つ方もいると思うので、注意喚起も含めて「なぜホットイナズマが発火したのか?」について、再編集してお送りします。


出典「あなたの知らないオカルトチューンの世界(改定版)」
https://minkara.carview.co.jp/userid/2036415/blog/47595674/

↓↓
なお、ホットイナズマですが、回路保護設計がしょぼかったせいで(たぶんヒューズだけと思われる)、サージ電圧に耐えられず発火事故を起こして、リコール騒ぎになりました。

以下は、国交省自動車局プレスリリースから引用です。
『不具合の内容
電圧安定化装置(ホットイナズマシリーズ)において、回路保護機構の設計値を超える、バッテリから生じるサージ電圧(70V~20KV)が繰り返し印加されることにより、基板部品及び基板の一部が破損し、これをきっかけとして基板パターン間での放電が生じ、基板へ炭化導電路が生成され、トラッキング現象が起き、発熱、発煙、発火が生じるおそれがある。』



↑こちらは類似品をバラしたもの(画像はJACKING UPINGというHPより引用)一応ヒューズは付いているが・・・


「バッテリから生じるサージ電圧」という表現が意味不明ですが(国交省の担当者も、おそらく内容を正確には理解していないのでしょう)、要は開閉サージなどのノイズで間違いなく、正確に言うと「コイルから生じるサージ電圧」です。
今回は基盤のトラッキング(ショート)が発火原因ですが、サージ電圧でコンデンサ自体が破裂、発火に至る可能性もあります。



↑車のノイズは主に開閉サージ(特に遮断サージ)でしょう。ちょっと電気に詳しい人でもロードダンプぐらいしか認識していないかもしれませんが、実はA/Cを切った際など、オフ時の急激な電流変化によるリレー(コイル)の逆起電力により、過渡的な高電圧サージが発生することがあります(画像は菊水電子工業のPDF資料より引用)



↑純正パーツ、あるいは社外品でも真っ当なメーカーの製品であれば、EMS(Electromagnetic Susceptibility)を考慮して当然各種バリスタやツェナーダイオードなどでサージ対策がされていますが、それ以外だと何も考えておらず(あるいは知らないだけか)、素人DIYレベルの設計なので回路保護はヒューズのみという場合があります。その手のメーカーの後付パーツや、自作品を取り付ける場合は気をつけてください(画像はTDKのHPより引用)


なお、リコールなので現在でもメーカーに言えば対策部品(事故以降の製品にはツェナーダイオードが付いているようなので、たぶんそれを仕込んだだけのバイパス線)を無償配布して貰えるようですが、類似品や自作品にも同じリスクがありますので、未だにコンデンサチューンをやってる人はもう殆どいないとは思いますが、一応注意喚起しておきます(このメーカーの製品は販売数が多かったので、たまたま発火事故が続いただけでしょう)
↑↑


という訳で、サージ対策をしていない自作ホットイナズマは発火の危険性があります(同じ理由から、中華激安HIDなども怖くてつけられません・・・実際、燃えていますし)


そもそもコンデンサチューンですが、
(1)走行中のバッテリーを電源と見做している時点で、論理が破綻している。
(2)バッテリー端子部に並列接続したら、充電電流を平滑化(リップルの波を穏やかに)して終わり。

つまり、国交省自動車局のいう「電圧安定化装置」なるモノの真の目的及び効果は、
充電電流の電圧を安定化させる事だったというオチです。



↑平滑コンデンサの回路図の例(画像は「やさしい電気回路」というHPより引用)

※バッテリーの寿命を延ばす効果も期待できないようです。
参考)https://www.chuden.co.jp/resource/seicho_kaihatsu/kaihatsu/kai_library/news/news_2020/news_151_13.pdf


にもかかわらず、ネットを見ると、EDLCのようなキャパシタで容量アップした自作イナズマの効果を意気揚々と説く人がいたり、かと思えば、ご丁寧にオシロまで使って効果検証にチャレンジしている人がいたり・・・そういう人の中には、整備士や(回路設計をしているという)エンジニアもいて、更にはご自身のブログまで持ってるという方もいる。

理系、しかも整備士や電気を本業とする人が、なぜこの事実(=充電電流を平滑化するだけ)に気が付かないのか、文系の私には不思議で仕方がないのですが、逆に言うと、アーシングの時にも書いた通り「バッテリーは常に電源である」という間違った認識を持つ人(「充放電を細かく繰り返している」という人も含む)が、理系の人にも案外多いからでしょう。

これみよがしに、本体から太いケーブルが出ていますが、専門家が見れば「こんな物をバッテリーに付けても何の意味もない」と一目で解る代物ですから、そりゃ排除命令の対象にもなりますよ・・・


もっとも、単に車の電気の流れを勘違いしていた人を除けば、(陰謀論と一緒で)こういうのにハマる人はそれでも信じるのでしょうから、取り付けるなら、せめて対策済みの本家の商品(ホットイナズマポケットスーパー)にした方がよろしいかと。

ちなみに、スーパーでない旧タイプのポケットをバラした人のブログを見ると、構成部品は470μFのコンデンサ、インジケーターのLEDと抵抗、あとはツェナーダイオードだけだったそうです(簡単に言えば、コンデンサがあることで、LEDがディレイ方式で点消灯するだけの室内照明アクセサリーだという話)


(おまけ)
ネット上で、ホットイナズマ(ポケットじゃない方)の秘密は内臓されたICにあって、そのICからの信号でECUを誤作動させ云々・・・と長々と主張する暇人(自称元電気屋で運行管理者)を見かけましたが、タチの悪いブラックジョークでなければ、かなり重症の人です。
あのICはNE555という昔からあるタイマーICで、インジケーターのLEDを点滅させるために付いている事ぐらい、電子工作の知識がある人なら誰でも解る話なので。

※タイマーICについて
参考)https://engineer-education.com/timer-ic/


ちなみに電子工作と言うと、小学校高学年の頃、エレキットを2~3個作ったほか(本当はもっと欲しかったが、高かった)、中3の時に技術の授業でハンダごてとインターホンを作って以来やってませんが、懐かしい画像が見つかったのでupしておきます。


↑これはイラストの感じからすると、自分が中学生の頃の製品?年代によってケースが違ったりするみたいですが、自分が作った80~81年頃もこの青いケースでした。あと、80年代半ば頃には、鳥山明さんのイラストが描かれた「電脳小箱」というカセットケースサイズのも出ていたみたいです(画像はELEKIT VOICEというHPより引用)

Posted at 2024/05/10 08:19:39 | トラックバック(0) | 日記
2024年05月05日 イイね!

アーシングを科学する(番外編)


本編では、走行中の電気の流れを考えれば、「バッテリーのマイナス端子に電気を戻す」という発想のアーシングが、いかにバカバカしい疑似科学(しかも確信犯)であるかを書きましたが(※1)、最近はアイストを含む充電制御車(以下、充電制御車等)も増えたので、下手なアーシングをすると「百害あって一利なし」になるので、オマケで書いておきます。


充電制御車等は、簡単に言えば、加速時などに発電電圧を下げて(即ち充電を制御し)、エンジンの回転に対する負荷を減らしてスロットル開度を抑えることで、燃費を向上させています(更にアイストなら停車時にエンジン自体を切る)

で、バッテリーへの充電を制御して良いか否かの判断を、走行状態等だけではなく、まずバッテリーの充電状況で判断しています(※2)
つまりは、充電制御とは、「バッテリーが満充電なのに高い発電電圧を維持するのはムダ」という考え方なのですが、逆に、放電状態なのに充電制御を続けたらバッテリーが上がってしまうため、充電制御の作動をキャンセルします。

具体的には、以前バッテリーへの充電電流は、電位差とバッテリーの充電状況(受入れ能力)で決まると書きましたが、満充電に近くなるとせいぜい1Aぐらいしか流れないので、充電電流をセンシングすることで充電状態を判断しているのです。
それでバッテリーが放電気味と判断すれば、充電制御を作動させない訳です。

で、このセンサー(カレントセンサー)が、オルタからバッテリーへの配線(+側)にある車と、バッテリーからボディまでの配線(ー側、つまりは純正アース線)にある車があって、ー側の車の場合、アーシングでバイパスを作っていると、正確な充電電流を判断できなくなります。


例えば、アーシングケーブルをエンジンと繋ぐように追加すると、充電電流がそちらへも流れてしまうので、センサー上の電流は減少し、「本当は充電率が下がっているのに、満充電と判断して」充電制御が働いてしまい、結果としてバッテリーが上がりやすくなります。

逆にボディと繋ぐように追加すれば、そのアーシングケーブルを通じてバッテリーのマイナスターミナルに集まった電気が、充電電流と共にセンサー上を流れるので、「本当は満充電なのに、充電率が低いと判断して」充電制御が働かないといった事象が起きます(※3)


なので、もし充電制御車等でアーシングをされていて、偶然こちらのブログが目に留まった方は、
即刻、取り外されたほうが良いかと。


実際、ネット上でアーシングをした方が、その効果を測定しようと、クランプメーターを使ってピンポイントで電流測定をしていましたが、画像を見ると、ボディ(バルクヘッド近辺)とバッテリー間のアーシングケーブルには、ボディ側から約2Aが流れ、バッテリーとエンジン間のアーシングケーブルには、バッテリー側から約3.5Aが流れていました。

なお、この方は電流の数値を測るだけで満足され、肝心の電流の向きには関心がなかったようで、そもそも電気の流れが逆であるというアーシングの矛盾点には、残念ながら気が付かなかったようです(←折角のクランプメーターも、宝の持ち腐れ?)


注釈
(※1)
あるアフターパーツ会社が、「新型車へのアース追加時のご注意」と題して、「アーシングする場合は電流(カレント)センサーを避けて配線しないと、充電制御が最適に行えず性能に影響する可能性があります」とリリースしていることからも、少なくとも販売側は電気の流れを正確に把握しており、その上で無知な人を騙そうという商売なのは明らか。

(※2)
マツダ辺りはi-Eloopとかいうキャパシタを組み込んだ複雑なシステムを採用していますが、そのシステムを作動させるかどうか判断する基本に「バッテリーの充電状況」があるのは皆同じです(累計作動時間なども管理しているようですが)

(※3)
逆に、アイスト付きの車で、煩わしいアイストを敢えて作動させないために、わざとバッテリーに電気が集まるようにアーシングする手もあるかもしれません。
ただし、アイストだけでなく充電制御も働かなくなるだろうから、燃費はいくらか悪化するでしょう(もっとも個人的に言わせてもらえば、これらはガラパゴス規格であるJC08モードを改善するための似非技術で、実燃費には大して影響しない「消費者を惑わす紛い物」ですが・・・)

Posted at 2024/05/05 11:22:06 | トラックバック(0) | 日記
2024年05月04日 イイね!

アーシングを科学する(後編)


(続き)


(3)導体抵抗が減ると何が変わるか?

中学だか高校だかの物理で、V=I✕Rと学びましたが、「同じ電圧であれば、抵抗が減ると電流が増える」ことになります。

オルタネーターの調整電圧は基本的に一定を保つようになっているので(※1)、導体抵抗が減れば電流が増える訳ですが、そうなると電気が余るため、結果として電圧が上がり、オルタネーターは電圧を下げようと発電量を減らします。
つまり、フィールド電流を抑える事ができるので、その分エンジンの駆動力に対する抵抗が減るので、燃費の向上とパワーロスを抑える事ができます。

一方、その他の負荷については、導体抵抗の減少により電圧降下が抑えられるため、わかり易い例でいうとヘッドライトが明るくなったりします(※2)


(4)結論:上記(3)の理論上の効果は、実際に得られるのか?

まあ、ここからが一番肝心なのですが、まず施工前後で電位差(記憶によるとヘボメカニック・・・じゃなかったオートメカニック誌の記事では0.02Vとかの僅差)が出たとしても、それは測定誤差(テスターピンの接触抵抗)の範囲内です。

そもそも僅かな導体抵抗を減らす事よりも、電圧を上げたほうが効果があるはずですが、実際には電圧が多少上下しても、今時の電装品には、少なくとも体感できるほどの影響はありません(※3)

また、導体抵抗についても、導線内部の抵抗よりも、実は接点などの接触抵抗のほうが大きいんです(※4)

そんな訳で、仮に電気の流れに沿って正しく(?)アーシングしたところで、
実際には何の効果も得られません。


【それでもまだ納得できない方へ】
そんなアーシングですが、当初は「効果がある」の一点張りだったのですが、普及するに従って効果がないと言う人が増えたので、苦し紛れに「昨今の新車だと純正アース線もしっかりしたものが付いているし、劣化もないので効果が感じられないかもしれないが、古い車だと確実に効果がある」などという主張に変遷していきました。

確かに古い車だと純正アースが劣化して、見た目が黒くなっていたりするのでそう感じるかもしれませんが、あれは表面が酸化しただけの話で(酸化膜は薄い)、断面積で言ったら無視できるレベルなので、抵抗は変わりません(※5)

ちなみに、より線(のうちの何本か)が断線しているかを、抵抗を測って判断することは現実的には難しいそうです。
・芯線切れを電気的検査(抵抗値測定)で判定することは難しい
参考URL)https://www.naccorporation.com/learning-center/electrical-knowledge/3281

また、接触抵抗についても、中古車のハーネスを回収してコネクターの抵抗を調べた所、特に問題となるような劣化はなかったそうです。
・端子抵抗の平均値、最大値とも高くなるが、その値はいずれも信頼性が問題となる値ではなかった。
参考URL)https://sei.co.jp/technology/tr/bn187/pdf/sei10851.pdf


以上から、「新車では効果は感じられないが、古い車なら効果が感じられる」というのも嘘です(もっとも、端子が錆びちゃってるような旧車になると話は別です。但し、その場合はアーシングではなくレストアと呼びます)


【結論】
という訳で、そもそもの理論の出発点である「電気の流れ」からして間違っているので、
実際の効果の方も、やはり予想通りだった・・・
というのが、アーシングを科学した結論です。


↑有名な?DIYラボでも、電気の流れについて間違った説明をしている。この調子では他の記事の信憑性も低いだろうから、オートメカニックと同様に、DIYラボはDIYの参考にしない方が良いと思う(画像はDIYラボより引用)



(5)最後に

ちなみに、以前に別なブログでも書きましたが・・・

アーシング以外にもチューニングヒューズなどのように、導電性の向上を謳っている商品では必ず「アクセルレスポンスの向上」をメリットに挙げていますが、導電性の問題以前に、気筒内への空気の流入速度(アクセルを踏んでから約1/10秒のタイムラグ)を改善しない限り、アクセルレスポンスを上げることは不可能です。

なぜなら、電気の伝わる速さ≒光速、つまり1秒間で地球を7周半出来るので(現実には導体抵抗があるからもう少し遅く4~5周位としても、それでもレベルが違う)
中には、「量子力学的に電子を動すので効率的で速い動きになる」などと怪しげで意味不明な説明をしている商品もありますが、それがたとえ1秒で6~7周出来る速さになったとして、何か意味があるのでしょうか?


【結論】導電性云々を謳う商品は、全てオカルトです。
(文系で騙される人は仕方がないですが、理系だと結構恥ずかしいと思う・・・)



注釈
※1
ちなみに、充電制御以前でも、概ね90年代以降の車に搭載されていた「バッテリー電圧センシングタイプ(三菱。デンソーだとM型ICレギュレータがこれに相当)」のオルタネーターは、レギュレーターのケース温度が上がると、調整電圧を0.5Vほど下げるようになっていた。

※2
当時はHIDが出始めの頃で(最初に標準化したのは、記憶が正しければ三菱ふそうの大型で90年代半ばぐらい、乗用車だと20系セルシオ後期だったはず)、圧倒的にハロゲンが主流だったので、電圧が上がれば明るくなった(エンジン停止時=バッテリー電圧時よりも、アイドル時=オルタネーター電圧時のほうがいくらか明るくはなった)

※3
某メーカーが謳う銅純度99.99%のアーシングケーブルを、ボディ全体から見たらごく一部でしかない場所に部分的に用いたところで、全体の導体抵抗の差は、接触抵抗との相殺分も考慮すればほぼ無視できるレベルでしょうが、13.5Vを14.0Vにすれば、それだけで約3.7%の改善が見込める。

一方、バッテリー電圧センシングタイプのオルタネーターで調整電圧が0.5V程度下がった時に、加速が悪くなったとか、ライトが暗くなったとかの不具合が出たという話は聞いたことがないので、逆に電圧を3.7%改善したところで、実際は何も体感できない(ましてや、今時の充電制御車なら1.5Vぐらい下げるので、当然そういう不具合が多く寄せられるはずだが・・・)

なお、銅純度99.99%のアーシングケーブルって何だか凄そうですが、これは無酸素銅(4N)と呼ばれるもので、スピーカーケーブルやRCAケーブルなどでも使われている一般的な素材ですから、騙されてはいけません。

※4
こういう商品の場合、「これは効きそうだ」という視覚効果がまず重要だが、接触抵抗改善では外観上のチューニング効果が得られないので、基本的に流行らないうえ、せいぜい「ウルトラ・スペシャルマイティ・ストロングスーパー接点復活剤」なる商品(わからない人はドラえもんで検索)を数千円で売るのが限度なので、大した商売になりません。

ちなみに当時は、車種別専用アーシングキットと銘打って、中身は導線を切り貼りしただけなのに数万円もする商品が、量販店だけでなくディーラーなどでも販売されていましたが、あのホットイナズマも、過去にディーラーがオリジナルブランドで販売していたようです(三菱のROAR HESシステムとか、他にもスバル用品㈱でも扱っていたらしい←ディーラーも商売なので、売れれば何でも扱う)

※5
アーシングする人の中に「電気は表面を流れる性質がある」と蘊蓄を垂れる人がいましたが、それは表皮効果といって交流の話で、車のような直流の場合は導体断面をほぼ均一に流れます(交流でも周波数が低い場合は、表皮効果の影響は少ない)

オカルトチューンにハマる人は、何も知らない文系の人よりも、中途半端に知識のある理系の人の方が、むしろ自分の知識を過信してヤケドする傾向にあるようです(ちなみに陰謀論や疑似科学にハマりやすい人は、(1)確証バイアスに陥っている、(2)懐疑的な思考をほとんど行わない、(3)妙な自信にあふれている、だそうです)

Posted at 2024/05/04 08:51:38 | トラックバック(0) | 日記
2024年05月03日 イイね!

アーシングを科学する(中編)


(続き)

さて、前回の図のどこがおかしいのかですが、電気や車の構造に詳しい方ならピンと来たと思いますが、解らなかった方にヒントを。

車好きなら「バッテリーは走行中は充電される」は常識だと思いますが・・・


↑画像はライズオイルのHPより(再掲載)

解りましたか?
そうです、ボディアースからバッテリーのマイナスに電気が戻っている点です。

つまりは、この図は(描いた人は気付いていないでしょうが)オルタネーターとバッテリーという2つの電源が並列に並んだ「並列回路」に他ならないのです(小学校で直列と並列の違いを勉強する時に学んだ、乾電池を2つ並べて電球を点けるのと同じ)

しかし、これではバッテリーは放電し続けているので、いずれバッテリー上がりを起こします(当たり前ですが、発電した電気が一度バッテリーに行けばそれで充電される訳ではなく、電流の流れが逆にならないと充電されない)


実は、車のバッテリーはオルタネーターが稼働している限り、
電源ではなく負荷の一つに過ぎないのです。
これを浮動充電(フロート充電)といいますが、電気の流れは次の図のようになります。


↑公益社団法人日本電気技術者協会の画像を加工したもの(以下、同じ)。停電時とあるのはエンジン停止時と読み替えてください。なぜこの図のように電流が流れるのかは、電位差を考えればわかるはず。


という訳で、
そもそもの前提である電気の流れを正しく理解していないのです。
要は「車の電気の流れを知っておこう」と言っている本人が知らないというオチ・・・

面白いことに、「バッテリーでは瞬時に必要な電気を流せないので(コンデンサが必要)」とか言っていたコンデンサチューンもこれと全く同じで、
「車の電気は常時バッテリーが担っている」という素人考えでした。
だから、電気をバッテリーに戻すという間違った発想を持ってしまうのです(本来は、オルタネーターの取付ボルト辺りへ戻さないと意味がない)


実をいうと、文系の自分はその昔、バッテリーをコップ、オルタネーターを蛇口になぞらえて「コップから溢れた水で電装品を動かしている」という、まさにこのライズオイルの図のような曖昧なイメージで理解していましたが、多分そういう風に考えている人が多いのではないでしょうか?
しかし、そのためには充電と放電を同時に出来るバッテリーが必要になりますが、そんなバッテリーはこの世に存在しません(もし作れたらノーベル賞ものです)

また理系でも、中途半端な知識しかなく、基本が解っていない人が意外と多いようです(※1)
現に知恵袋では、ある質問に対して、車の電気の流れを正しく理解して回答している人がカテマスを含めて一人もおらず、このような充放電同時説だけでなく、「オルタネーターの発電は不安定なので、バッテリーが細かく充放電を繰り返してオルタを補完している」という補助電源説を主張する人や、更には「バッテリーは大きなコンデンサで、高速で充放電を繰り返してオルタネーターのリップルの平滑化を担っている」という驚きの主張をする(自称)電子回路設計のエンジニアなどがいました。

確かに車のオルタネーターは三相全波整流で、リップル電圧は多少残りますが、それでも電装品はきちんと動きますし、だいいちリップル電圧は1山0.2V以下なので、発電電圧が14Ⅴとして13.9~14.1Vなのだから、脈流の残ったままバッテリーに充電されるだけです。
エンジニアが嘘でないなら、高校や大学で一体何を学んできたのでしょうか?(笑)


↑画像はステップカーサービスのHPより


要するに、彼らは「三相全波整流」あるいは「フロート充電」という言葉は知っているが、その仕組みや目的を正しく理解していない。
更に言えば、「電気は電位の低い方へ流れる」すら理解しているのか怪しい(このように説明をしても、尚も「バッテリーは電源だよ」と聞く耳を持たない人が一定数いる)

そういう人にはいくら説明しても「文系ごときが何を言う」と言って解ってもらえないと思いますので、例えば三相交流やリップル電圧については、こちらをご参照ください↓
https://www.kaise.com/car-info/alt3.html


では、なぜ今までこのような根本的な誤りが放置されたままだったのでしょうか?
おそらく、本当に電気や車の構造に詳しい人なら、アーシングなんて言葉を聞いても端から興味を持たないか、あるいはバッテリーに戻すと聞いた時点で「アホくさ・・・」と相手にしなくなるので、誰からも訂正されないまま、こういう怪しげな理論がまかり通ってきたのではないでしょうか(※2)


(閑話休題)

この時点で肝心な理論の前提が崩れたので、「バッテリーのマイナス端子に電気を戻す」という発想のアーシングが、疑似科学であると決定したも同然だと思います。
ですが、ここで話を打ち切ってもつまらないので、実際にアーシングをしたときの効果を検証してみます。


(2)アーシングを行うと、電気の流れはどう変わるのか?


(イ)まずは基本と言われる、純正アースのバイパス線(赤線)を1本追加した場合


電気は抵抗の低い方へより多く流れるので、新たに追加した導線の抵抗が低いアーシングケーブルの方へ充電電流が多く流れますが、そもそも純正のアース線と比べ導体抵抗の差がごく僅かなため、流れる量は殆ど変わらないでしょう(同じ長さの場合。下手に長く配線してしまえば、アーシングケーブルのほうが電流量は少なくなる)

一方、この状態では負荷(=電装品)については何ら変化はありません。
強いて言えば、理論上は充電効率がいくらか上がるので、その分負荷へ電気が流れやすくなると言えるかもしれませんが、現実的にはこの程度の導体抵抗の差は無視できるレベルのため、電装品に性能向上の余地はありません。
つまり、そもそもの前提が間違っているから、こういう意味のないアーシングになってしまうのです。


(ロ)次に、負荷とバッテリーの間にもアーシング(黄線)を追加した場合


新たに設置したアーシングケーブル内をどちら方向に電気が流れるかですが、基本的には左向きに流れます。
なので、負荷についても導体抵抗が多少なりとも減るので、これでようやくアーシングの意味が少しは出てきます。

ただし、負荷がエンジンブロックと直結している場合、例えばスパークを改善しようと、シリンダーヘッド付近のエンジンブロックとバッテリーを繋いだ場合などは、逆向き(右向き)に流れることになります。
要は、バッテリーの充電電流(や他の黄線を通って集まった負荷電流)をエンジンブロック、つまりはそれと直結しているオルタネーターへ戻すだけです。
それなのに「スパークが改善され、トルクが太くなった」などと言っている人がいますが、それこそがプラシーボと呼ばれているものです。


(ハ)最後に、オルタネーターとバッテリーの間にもアーシング(青線)を追加した場合


この場合は、負荷側とオルタネーターがアーシングケーブルでつながるので、ようやくアーシング本来の意味が出てきます。

もっとも、全ての電気がアーシングケーブルを流れる訳ではありません。
ボディ(炭素鋼)はケーブルより電気を通しにくいですが断面積は大きいため、導体抵抗の差はそれほど大きくないでしょうから、アーシングケーブルの方に多めに電流が流れる程度だと思います。
更に言えば、(ロ)で指摘したようにエンジンブロックと直結した負荷だと全く流れないし、燃ポンみたいに車両後方にある負荷の場合は殆ど恩恵を得られないので、全体としてどれだけ導体抵抗が減少するかは不明です。


・・・ここまで読んで、「それなら、電気をバッテリーへ戻すという誤った考えを捨て、電気の流れを考えたうえでアーシングすれば、効果があるのでは?」と思った方もいると思います。

では、導体抵抗が減ると何が変わるのでしょうか?

(続く)


注釈
(※1)
理系を含めて基本が解っていないカーマニアが多かったからこそ、バッテリーを電源に見立てたアーシングやコンデンサチューンが流行った訳ですが、知恵袋で補助電源説を主張する人の中には「充放電を制御ユニットで細かく制御している」という妄想を自信満々で回答する、自称自動車メーカーの電池研究職なる人までいました・・・

余談ですが、コロナ禍でも医師あるいは医療関係者を名乗る多数の者が、ネット上で24時間休みなく活躍していましたが、当時の医療関係者がそんなに暇だったはずはなく、「自己の承認欲求を満たすため」に、ネット上で成りすましをする人がいかに多いかを物語っていたように思う(専門家が見ればすぐ嘘だとわかりますが)

(※2)
改めてネットで検索しても、前出のカーメディアだけでなく、自動車ジャーナリスト個人が書いたり配信したりしている物も含めて、車の電気の流れを正しく解説しているサイト等は見つかりませんでした。
車の電気の流れすら理解していない自動車ジャーナリストが、今や電気自動車を解説しないといけない時代ですから、彼らも大変ですね(もっとも、広報資料を書き写すだけの人が殆どなので、あまり影響ないでしょうが)

それにしても、文系はともかくとして理系、更には整備士の方でも、車の電気の流れを正確に理解している人は案外少ないように思う。
実際「トヨタ技能検定1級保持」とプロフに書いている人(恐らく自称ではなく本当)でも、「(アーシングとは)正常な配線がなされた車両において、様々なアース回路をバッテリーマイナス端子に直接接続するものだが、こんな僅かな効果を過大な宣伝をしたり、それを信じて金を投じるユーザーがいるが、まったく気が知れない方々だと感じている」などと発信していた(←突っ込むなら、そこじゃないでしょ!)

Posted at 2024/05/03 10:21:02 | トラックバック(0) | 日記
2024年05月02日 イイね!

アーシングを科学する(前編)


アーシングが流行ったのは、2000年代の始め頃だったと思います。
当時の自分はいわゆるメカ音痴でした(例えば、DOHCやマルチリンクの構造がどうとかいう類の蘊蓄はあったが、実際に車いじりとなると、せいぜいオイルやタイヤの交換、オーディオの取付ぐらいだった)

ただ、車いじりに興味が出てきた頃で、オートメカニックという雑誌を読んで参考にしていたのですが(※1)、当然のようにアーシングについてもしばしば特集していて、「アーシングの秘密は(確か0.02V程度の)電位差にある」とかもっともらしい記事を載せていたので、自分もやってみた訳です。

で、とりあえずは基本であるバッテリーとボディを繋ぐアースケーブルを1本設置して試走したところ、「確かにアクセルレスポンスだけでなくトルクも上がった。おまけにオーディオの音も澄んで聞こえる」と言う具合に、思っていた以上に良かったので、更に効果があると書かれていた箇所に軒並みアーシングをして「お~、もっと良くなったぞ!」と満足して、しばらくその状態で乗っていました(※2)

ですが、車検に出す前に(配線だらけで少しみっともなかったので)一旦外したところ、何の変化も感じられず???
・・・それ以来、この手のオカルトチューニングに手を出すことは二度となくなりました(笑)


さて、今回はその時のリベンジ(?)ということで、ちょっと大げさな表題ですが、アーシングについて真面目に考察しようと思います。


(1)アーシングの概念

アーシングについてネットで調べると、以下のような答えが出てきます。

まずは検索トップで出てきた、CAR NALISM(カーナリズム)のページから
「アーシングとは、車で電気を使う部分にスムーズに電気を流すために、バッテリーのマイナス極から各部に電気抵抗の低い線を繋げる事を言います。ライトやプラグなどに流れた電気は消費された後、車体を通してバッテリーに戻るのですが、マイナス極側にアーシングケーブルを追加して、直接バッテリーに戻す方法がアーシングと言われるものになります(中略)元々はレーシングカーなどレースに勝つために活用されていたアーシングですが、現在は一般の新車にも取り付けられています。」(※3)

次はRIZOIL(ライズオイル)のページから
「アーシングとは電気の流れを手助けするためにバッテリーのマイナスに各部から線をつなぐことです。バイクや車の発電された電気はバッテリーに行きバッテリーのプラス端子から各部所に流れていきます。流れた電気はライトやプラグなど電気を消費して、マイナス端子へ戻ってきます。消費された電気が戻るときバイクや車のボディを通って帰ってきています。」
ご丁寧に、図解で電気の流れまで説明されています(下図)

割と有名どころのメディアで言うと、カーネクストが運営するCAR ME(カーミー)から
「アーシングとは、自動車の電気系統にあるマイナス極への抵抗を軽減させて、電気の流れをスムーズにする方法です。もう少し詳しく説明すると、バッテリーから出てくる電気をボディを通して戻すのではなく、アーシング線を追加して直接バッテリーに電気を戻す方法です。」

お次は、更に有名なグーグルが運営するRESPONSE(レスポンス)から
「通常クルマはボディ1~2カ所から、バッテリーのマイナス端子にケーブルが接続されている。電装品やエンジンなど、各パーツはボディにアースケーブルをつなげている。いわばボディ自体が大きなアースケーブルになっていて、最終的にボディからまたバッテリーにアースケーブルでまた電気を戻しているわけである。チューニングのアーシングは、このボディを介して戻している電気を直接戻そうというもの。エンジンから直接バッテリーにケーブルを引いたり、ボディの違う場所からもバッテリーに直接ケーブルを引くのだ。」
ちなみに、こちらだけ記名記事になっていましたが、書いたのは自動車雑誌編集部出身という自動車ジャーナリストでした。


上記全てに共通しているのは、「電源であるバッテリーに効率よく電気を戻す」というものですが、一見すると正論に思えますが、先のライズオイルが掲載していた下の図を見て、どこかおかしいと思いませんか?




(続く)

注釈
※1
この雑誌が今思えば「ダメなお手本」の典型で、オカルトパーツの広告を載せるだけでなく積極的にPR記事を書いていたり、肝心の車いじりの方も、例えば「ブレーキパッドが鳴かないようにグリスを塗りまくれ」みたいに書かれていたりと、我流整備が多いダメメカニック本でした。

※2
当時は形から入るタイプだったので、わざわざこの為だけにロブスターの圧着工具を買って配線を加工して取り付けたため、その分の期待効果が入ってしまったのだと思う。

※3
ちなみに、この続きを読んでいくと「一般的な電気はプラスとマイナスを接続して電気を流すのですが、車の場合は各部からのケーブルをプラスとマイナスの両方に接続するのでケーブルが2本必要となります。(中略)家電にも漏電防止などのためアースケーブルが備えられていますが、繋げていなくても家電製品は稼働します。しかし、車の電子機器の場合はアースケーブルがなければ作動しません。」と書いてありました。

思わず読み返しちゃいましたが、さすがに「直流と交流の区別すら曖昧な人」がアーシングの記事をまとめちゃマズイでしょ(AIの方がマシ)
というより、こういう中身のないページがトップで出てくる検索サイトって一体何なの??
Posted at 2024/05/02 19:17:18 | トラックバック(0) | 日記

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「過積載だとなぜ止まれないか? http://cvw.jp/b/2036415/48486763/
何シテル?   06/15 08:57
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