理系、というか電気について学んだ事のある方なら、並列電源と常時負荷から成り立つ回路において、2つの電源間に電圧差がある場合に、低い方の電源に対してどちら向きに電流が流れるかを考えれば、答えはわかるはずです。
当たり前ですが、電流は放電ではなく、充電方向に流れます(但し、常時負荷側の抵抗が非常に大きく、回路全体に電圧降下が起きるような場合を除く)
以下に、車の電源(充電)装置である浮動充電回路を図示します。

公益社団法人日本電気技術者協会の画像を加工したもの(停電時とあるのはエンジン停止時と読み替えてください)
つまり、エンジンがかかっている限り、バッテリーは電源ではなく負荷の一つなんです(でなければ充電されない。なお、充電制御の話はここでは除外する)
・・・という訳で、電気の流れは正しく理解できたとして、ではオルタネーター稼働中にバッテリー端子を外すと何がいけないのでしょうか?
理由は、一時的にロードダンプと呼ばれる高電圧が発生し、オルタネーターのICレギュレーターや、最悪の場合はECUを壊すからです。
ロードダンプとは、簡単に言うと、バッテリー端子を外すことで負荷電流(上の図の充電電流)が突然行き場を失い、時には100V超という高電圧が一時的に発生することを指します(※)
これが、他の負荷(上の図の常時負荷)などに流れます。
雷などのサージもそうですが、ロードダンプは雷サージなどより電圧は低いものの、持続時間が長いのでダメージが大きくなります(特にエンジン始動直後は、多くの充電電流が流れるため問題となる)

画像は菊水電子工業のPDF資料より引用。
ECUなども当然外来ノイズ対策はしていますが、始動直後や放電気味のバッテリーなど、外したときに流れていた充電電流が多ければ多いほど、ダメージを受ける可能性が高くなります。
「今までやってたけど、別に問題なかったぞ」と高を括っていると、いずれ手痛い目に会います。
実は修理書などにも絶対やるなと書いてあるんですが、理由まで書かれていないので理解してる(覚えてる)人が少ないのでしょうか、量販店だけでなく、整備工場の整備士あたりでもやってる人が意外と多いのが現実のようです。
そのような不勉強な整備工場や整備士は、病院や医師に例えれば、ヤブ病院のヤブ医者です。
そんな医者に大事な(愛車の)命を預けますか?
また、DIYの場合でも、普段はエンジンオイルの交換程度しかしない初心者の方が、エンジン回転中にバッテリー端子を外すなどそもそも論外です(エンジン稼働中はマイナス端子を外してもボディには電気が流れているため、ショートの危険性が高まる。またベルトへの衣服の巻き込みなどの危険もある)
という訳で、バッテリー交換時は面倒でもバックアップを取るか、交換後に必要な初期設定をするか、どちらかにしましょう。
(※)
より正確に言うと、ロードダンプは負荷電流が急減することで、電源の出力電圧が急上昇するという過渡現象です。
過渡現象とは、ある定常状態から別の定常状態に移行するまでに起こる現象(電圧や電流などの時間的な変化)のことをいいますが、負荷電流が急に必要になった場合は、電源供給が追いつかないため出力電圧が下がりますが、逆に急に不要になった場合は、供給過多になった分だけ出力電圧が上がるという訳です。
冒頭で「まずは車の電気の流れについて、正しく理解する必要があります」と書いたのは、前頁で書いた充放電同時説などのように、「バッテリーは常に電源である」という誤った考え方を採っていると、このロードダンプについて説明しても、理解できないからです。
P.S.
車の電気の流れについて、まだ納得できない方は、こちらもご参照ください(少々難しいかもしれませんが)
↓「並列接続されたアンバランスな電池に電流が逆流する条件」
https://tma.main.jp/science/para_battery.php
解り易く例えるなら、集中豪雨などの時に本流から支流に水が逆流するバックウォーター現象でしょうか。
そもそも乾電池を並列で繋げるのは小学校の理科の実験ぐらいですが、新旧を混ぜると循環電流が生じてしまう恐れもあるので、やめたほうが良いかと。
もっとも、普通の乾電池程度であれば、(この方も書かれているように)循環電流は生じませんが。
Posted at 2024/08/24 08:58:59 |
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