もちろん、「通達は法規ではないので、一般国民は直接拘束されない」からと言って、全て無視して良い訳でもありません。
というのも、それが各種税法における法令解釈通達(※1)のようなものであれば、それに従わずに独自に法令を解釈し主張したとしても、その主張が認められることはまずなく、行政側から法令違反に問われ行政処分を受けたり、検察に告発されて、起訴され有罪が確定すれば、最終的には法令に基づく罰則を受けることになるからです(もっとも、行政が常に正しいわけではないので、裁判で争う価値がないとはいえない←裁判官構文になってしまってスミマセン)
そういう意味では、法令解釈通達等の場合は、事実上国民を(間接的に)拘束していると言えます。
一方で、この「自動車検査業務等実施要領について」は、法令の解釈について定めたものではなく、実際の事務要領を定めたもので、事務運営指針なり事務連絡と呼ばれる類の通達(※2)なので、これを根拠に道路運送車両法第66条違反に問われることはありません。
現に国交省の周知文書を読むと、「正式な場所に貼らないと罰則を受ける可能性があります」とは一切書かれていないうえ、「視界を遮る場合は・・・」と例外を認めた記載をしていますので、このことからも明白です。
なお、一部に「警察官に捕まるのでは」と誤解している人もいますが、この法第66条違反という行為自体が、軽微な道路交通法違反のように警察官が行う青切符即ち行政処分の対象ではないので、仮に同法違反に問う場合、裁判を経る必要があります(※3)
例えば、族車(不正改造)の取り締まりは警察と国交省が合同でやっていますが、あれは道路運送車両法(及び保安基準)に違反する場合、基本的にはスピード違反のように警察官が青キップなどの行政処分をすることができないので、国交省の職員が第一段階として是正勧告を行っているのです。
もちろん法令違反が明らかであれば送検はもちろん、場合によっては逮捕も可能と言えば可能ですが、抵抗して公務執行妨害でもしない限り、現実的な話ではありません。

不正改造車に出される是正勧告(画像は国交省のHPより引用)
そもそも今回の改正に至った経緯は、国交省の通知文書を読むと「車検更新のうっかり忘れを防ぐため」だそうで、つまり昨今やたらと増えた「余計なお節介(※4)」の一つとも言えますが、特に最近のホンダ車などに多い濃色トップシェード入りガラスの場合はかなり下に貼らないといけないので(※5)、冒頭で書いたように安全運転の妨げになる可能性があり、明らかに本末転倒です。
(※1)
中学の時に流行ったアンチョコ本(指導者用の教科書)に書かれている注釈と同じ。
法令に基づき具体例等を交えながら解説されており、民間実務者レベルでも必携。
(※2)
下級官庁の官吏向けの、いわば業務マニュアル。
(※3)
行政と言えど、(国税徴収法など一部を除いて)自力執行が認められている訳ではないので、行政処分が認められているケースを除き、法令違反を理由に裁判を経ずに勝手に処分や罰則を科すことは出来ません。
但し、道路運送車両法違反に当たる不正改造でも、マフラーを外したりした場合など一部の違反に関しては、青切符の対象になります(消音機不備違反。交通反則通告制度にその定めがあるため)
(※4)
注意書きに車内アナウンス…街に溢れる“過剰な親切”の異常性。自ら考え判断できない日本人の危機(ヤフーニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/962e7be9c24e3e05e933e68a986038f852644868
(※5)
定期点検ステッカーとともに濃色トップシェードの内側に貼る人(業者?)もいますが、これでは外から有効期限等が判別できないため「表示」に当たらず、それこそ法第66条違反に問われる可能性あり。
Posted at 2024/11/05 13:20:31 |
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