何かに憑りつかれたようにブレーキの話ばかりしてますが、最後に。
ブレーキのフェード(fade)と言うと、数年前、ふじあざみラインで観光バスが横転した事故が記憶に新しいですが、フェードはなぜ起こるのでしょうか?
1 ブレーキを踏むと熱エネルギーに変わるから?
NHKラジオでこの件について取り上げたとき、NHK御用達の自動車評論家である
雉沢国沢さんが、ゲストで電話出演し解説されていましたが、「ブレーキを踏むとですね、熱エネルギーに変わるんですね・・・」「で、その熱エネルギーが・・・」「熱エネルギーが・・・」と言うばかりで、全く要領の得ない話をしていました。
この時スタジオにいたのは真下さんというベテランアナで、この方は頭の回転も早く、普段は「~という事ですね?」とゲストの話の要点を上手くまとめて聞き返し、視聴者に解りやすく伝えるのが得意な方でしたが、さすがに国沢さんの難解な話はまとめられず、困っている様子でした。
まあ、私が聞いていても、何を言ってるか全く解らなかったぐらいなので、真下さんはもちろん、車に詳しくない一般視聴者はチンプンカンプンだった事でしょう(苦笑)
2 パッドの表面が高温になってツルツルに滑るから?
と直感的に思う方もいるでしょうが、パッドの場合は摩擦係数と温度の関係をグラフにすると通常は山型になるようで、摩擦係数のピークをどこに持っていくかで、街乗り用とレース用とでは違いを持たせているようです(後者の方が、より高い温度にピークを置く設計)
つまり、「高温になるとツルツルに滑る」は間違いです。
なお、ローターのような金属の場合は、温度が上がれば摩擦係数も上がるのが一般的なようです(下図参照)

↑摺動用銅合金の高温環境下における摩擦摩耗特性より
3 パッドとローターの間に膜ができるから?
ブレーキを踏み続けるとパッドもローターも摩擦熱でかなりの高温になりますが、ローターは鉄(鋳鉄)なのでさすがに溶ける温度まで行きませんが、パッドは結合剤に使われるフェノール樹脂などの化学物質が溶解(気化)し、その気化した化学物質等が間に挟まれることで、摩擦係数が低下します。
そのため、ブレーキを踏んでも効かない状態になります。
その昔、最初のマイカー(HC型マツダルーチェSG-X)でフェードしかかったことがあります。
もちろんエンジンブレーキも効かせていたんですが、それでもダメでした。
※フロントはベンチレーテッドディスクでしたが、昔の車なんで14インチ用で厚みも薄く、放熱性能が低かった。
ターンパイクや箱根新道だとフェードした車のための退避路がありますが、80年代当時、あそこに突っ込んでる車(スカイラインRS)を見た事があります。
ですが、昨今ではどの車もブレーキの大型化により耐フェード性が大幅に向上しているので、あの退避路が何のためにあるのか解らない、若い一般ユーザーも多いのではないでしょうか?
※事故を起こした運転手も確か25歳だったと思うが、さすがにプロだからフェードを知らないはずはないが、頭では解っていても経験がなかったのでしょう。
4 ウォーターフェードとは?
同じ理屈で、ウォーターフェードという現象もあります。
水たまりを派手に走行したときなどに、パッドとローターの間に水(の膜)が挟まれるからですが、ネットで「ウォーターフェード」と検索すると、なぜかトップに表示されるのがGAZOOのページ。

↑GAZOOより
「摩擦材が濡れることで、制動力が弱くなる」だなんて・・・まあ理由はともかく、肝心の対処法が逆ですね(教習所で習ったハズですが?)
ネットにはフェイクとまではいかなくても、間違った情報を流すサイトがあまりにも多く、有名企業でも実際に書くのは下請けライターだったり、それをチェックするのも文系の広報担当だったりするので、当てにならないものが多いが、昨今は検索するとそういうサイトばかりが上位に表示されるので、実に困ったものです。
※その企業あるいは製品への信頼性にも関わると思うので、もっとしっかりチェック体制を整えて欲しいですね。
Posted at 2025/06/21 09:10:55 |
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