• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

LGtouringのブログ一覧

2025年06月14日 イイね!

荷重移動についての力学的考察


前回EBDの話をした時に、荷重移動についてきちんと理解できていなかったため、タイヤと同じように回転モーメントだけで考え、「前後の重量配分が5:5で、かつミッドシップのように重心の近くに荷重が集まっている車が理想」みたいな事を書きましたが、誤りでした(該当部分は削除済)

そこで今回は、荷重移動について、改めて力学的に考察します。


【仮説】
ネットで調べると、どうやら次が正答のようです。
・⊿W=Mαh/L(荷重移動=質量×加速度×重心高さ÷ホイールベース)
では、なぜこの式が導き出されるのかを考えてみます。
※以下、⊿Wは⊿Fで表します(個人の趣味)


【仮説の証明】
まず、停止状態での重心まわりのモーメントを考えます。
図1のように、単純化して1本の赤い棒として捉えると、各モーメントが釣り合っている状態です。

図1

なお、ここで前輪と後輪の反力をそれぞれf1,f2とし、重心からの距離をl1,l2とすると、モーメントのつり合い式は、f1×l1=f2×l2となります。


次に、ブレーキによる慣性力が働くと、図2のように重心を中心にして前のめり=転倒させるモーメントが働きます。
このモーメントは、質量×加速度×腕の長さ(重心高さ)=Mαhで表せます(①)

図2

この時、前輪には圧縮荷重(⊿f1×l1)が、後輪には引張荷重(⊿f2×l2)が掛かります。

圧縮荷重と引張荷重の合計(荷重移動量)は、図3のように⊿F×Lとなります(②)

図3

そして、①(転倒させるモーメント)=②(荷重移動量)のため、Mαh=⊿FLになるので、
・⊿F=Mαh/L
(証明終わり)


【結論】
荷重移動は、
・質量と加速度(減速G)、及び重心の高さに比例する。
・ホイールベースの長さに反比例する。


よって、車重が軽く、重心が低く、ホイールベースが長い車の方が、荷重移動量は少ないことになります。


なお、前に紹介したリンク先(クルマが重くなっても制動距離は変わらない)には「前輪荷重が大きい車ほど、荷重移動により制動距離は長くなる」と書かれていましたが、上記の式を見ても解るように、これも誤りです。
※荷重移動量が同じなら重心が前後どちらにあっても前傾角度は同じなので、それよりも荷重移動量の大小の方が重要。もっとも、同じ荷重移動量の車同士の比較であれば、重心が前にある車ほど後輪の引張荷重が大きくなるので、(EBDがないと)制動距離が延びる可能性はある。

つまり、空荷の軽バンの制動距離が他の軽乗用車に比べて長かったからと、「前輪荷重が大きい車ほど、荷重移動により制動距離は長くなる」と結論付けるのは、少々乱暴です。
※ちなみに、前傾角度はサスペンションの固さにもよるので、前傾角度の大きさ=荷重移動の大きさではなく、レーシングカーのように姿勢変化が少ない車でも荷重移動は確実に起こっています。

Posted at 2025/06/14 08:56:49 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月10日 イイね!

荷重移動を考えて走ろう(EBDの誤解)


EBDについては、よく下のようなグラフで説明がなされます。
※Electronic Brakeforce Distribution(電子制御制動力配分装置)



本田技研工業のHPより


つまり、「積載荷重が大きくなると、後輪は前輪よりも制動時の荷重がより増大するので、EBDにより後輪の制動力配分を増大させることで、停止距離を短くできる」といった説明です。

しかし、これは「重ければ重いほど、ブレーキが効かなくなる(のでブレーキを強くする必要がある)」という、一般ユーザーの誤解に基づいた間違った説明です。
※なぜ誤解であるかについては、前回までのブログで書いた通り。

本田が「難しい話をしてもどうせ一般ユーザーには伝わらないだろうから」と、敢えて(ユーザーの誤解に迎合して)解りやすく説明したのか、あるいは文系の広報担当者が勝手に要約(解釈変更)したのかは解りませんが、いずれにしても「自動車メーカーなのに正確な情報を伝えていない」という点で、いかがなものかと思います。


積載時に後輪へのブレーキ配分を増すのは、正しくは「荷重移動量が増えることで、前輪の荷重が増す一方、後輪の荷重が減るため」であり、言い換えれば、
前のめりが酷くなるからです。

前のめりが酷くなると、前輪の荷重=摩擦力は増えるが、後輪の荷重=摩擦力は減るので、簡単に言うと前はブレーキがモロに効くが、後ろは浮いちゃって効かない状態になります。
※つまり、本田の説明は真逆だということ。

そこで、前輪に対して後輪のブレーキの効きを強くする(同じ踏み込み量でも後輪を早めに効かせる)ことで後輪の摩擦力を上げ、制動距離を短くしようという仕組みが、EBDです。
※ちなみにマツダは、ミレーニアのビデオカタログの中で「(定員乗車時に)EBD非装着車だと、車の荷重移動によって後輪のブレーキ力が不足し、制動距離が延びてしまいます」と正しく説明しています。


本物のプロドライバーは、このような物理の原則をまさしく身をもって体感しているため、次のような自動車評論家には決して真似の出来ない素晴らしい話ができるのです。




SCORPION MAGAZINEより


全文はこちら↓
プロに教わるドライブルートの走り方①【ドライビングポジション&視線の置き方】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5168

プロに教わるドライブルートの走り方②【コーナーのライン取り&ステアリング操作】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5229

プロに教わるドライブルートの走り方③【ブレーキング&荷重移動】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5304

Posted at 2025/06/10 16:44:15 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月09日 イイね!

ブレーキの話(追記)


前回までに「制動距離に、車重は影響しない」と書きましたが、「じゃあ、なぜ大型車はエアブレーキのような強力なブレーキを備える必要があるのか?話が矛盾しているじゃないか」と納得できない人もいると思うので、おまけで。

おそらくそういう人は、ブレーキによってタイヤの回転を止めるのと、タイヤによって車を停止させるのとを混同しているのではないでしょうか?(実際、ネット上にはそういう論調のサイトが多い)


1 ブレーキによってタイヤの回転を止めるには?【ブレーキの制動力】

ディスクブレーキなら、ブレーキによってローター(タイヤ)の回転を止めるには、ローターとパッドとの間の摩擦力を考える必要があります。

タイヤがロック、つまり回転が止まった状態の最大静止摩擦力(F=μN)において、μはローターとパッドの間の摩擦係数、Nはパッドを押し付ける力(正式にはその反力)ですが、大型車ほどタイヤの慣性モーメントが大きいので、ローターの回転を止めるにはより大きな垂直抗力、つまりは油圧よりも強力なエアが必要になります。
※なお、「ローターやパッドを大型化して接触面積を増やし、(ブレーキの)制動力を上げる」などと平気で言う自動車評論家もいますが、接触面積がいくら増えようが摩擦力は上がりません(∵F=μN)


2 タイヤによって車を停止させるには?【タイヤの制動力】

この場合には、ブレーキそのものではなく、(前回までに書いたように)タイヤと路面との間の摩擦力を考える必要があります。

タイヤと路面間の摩擦力は車重と比例関係にあり(タイヤに掛かる荷重が垂直抗力となるため)、車重が倍になれば運動エネルギーも倍になりますが、同時に摩擦力(⇔制動力)も倍になるので、制動距離は同じという事です。
・F’=μ’N(動摩擦力=滑り摩擦係数×垂直抗力)
 ここでN=Mg(垂直抗力=質量×重力加速度)より、F’=μ’Mg
※厳密にはタイヤ(ゴム)の摩擦係数は荷重に対して一定ではなく、また荷重移動の程度によっても各タイヤの滑り摩擦係数は変化するため、完全な比例関係にはならない。


要は、車の制動力(制動距離)を考えるにあたっては、
・ブレーキはローター(タイヤ)の回転さえ止められれば十分で、それ以上に強力であっても宝の持ち腐れである。
・車の制動力は、タイヤが同じなら(荷重移動等を考えなければ)車重に関わらず一定である。
という話です。


P.S.
前に紹介したリンク先が、過去に価格コム上で炎上していたようです(笑)
真っ向否定する人も多いようですが、「ブレーキ強化→制動距離が短縮される」と思い込んでいる人は、まず1と2を区別できていないのだと思う。

かつてブリヂストンが、「タイヤは(ハガキ1枚に)命を乗せている」とCMしていましたが、走る・曲がる・止まるはタイヤと路面と間の摩擦力があるから可能な訳で、いかに高性能なエンジンやブレーキの車であろうとも、タイヤの能力以上のことは出来ません。

Posted at 2025/06/09 17:03:32 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月06日 イイね!

フルブレーキングできますか?(3)


リンク先の記事、いかがでしたか?

ひとつ付け加えるならば、『推測ですが、ABSが効いているとはいえ、もしかしたら急制動の場合、タイヤが熱で融け始めて路面にへばり着こうとして、普段より摩擦係数が高くなるのかもしれません。』と書かれていましたが、理由はともかく、実はタイヤの摩擦係数は、スリップ率15~20%(概ねABSが効いている領域)で最大になります。


画像は「タイヤのおはなし(日本規格協会)」より
※脱線しますが、「マンガだとタイヤがロックしてキキーと急停止するが、実際にタイヤがロックすると自動車を止めようとする力は走行抵抗だけになるので、中々停止しない」などと書かれた、大学教授が監修した一般向けの本もありますが、表のとおりロック時でもタイヤの摩擦係数は十分に高く、「物理の一般原則を当てはめるだけで、常に正しい答えが得られる訳ではない」という一例でしょう(餅は餅屋)


一般的には、「ABSはフルブレーキ時でもハンドル操作ができる」という程度の認識でしかありませんが、上記のようにABS作動時に制動距離が最も短くなります。
※ABSも早めに作動する車や遅めの車など、メーカー等により微妙に癖があるようですが、このスリップ率15~20%を正確にキープできるABSを備えた車こそが、本当の意味での高性能なブレーキを持つ車だと思う。


いずれにせよ、自動車評論家の言う「ドイツ車はブレーキの効きが良い」は、摩擦係数の高いセミメタルパッドを採用するなどして、踏み始めの効き(食いつき)が良いという所謂感覚上の話に過ぎず、ブレーキ本来の効き(フルブレーキ時の車の制動力)とは無関係の話だったのです。
※車検のブレーキテストで、タイヤロック時の制動力を確認するのはこのためです。

【結論】
「日本車のブレーキは効きが悪く危ない」などと、さも解ったかのようにいう人は、
ブレーキがきちんと踏めていないだけの人です。
※正確には「踏み始めの効き(初期制動力)が弱い」と表現すべきでしょう。


とは言っても、表題の「フルブレーキングできますか?」のとおり、一度も経験したことがないと、いざという時に思い切りブレーキが踏めないのではないでしょうか?

金と時間さえあれば、サーキット場でJAFなどがやっているドライビングレッスンを受けることもできますが、そこまでやる人は少ないと思います。
なので、教習所での(初速40キロからで良いので)フルブレーキング体験を義務化しても良いように思う。


【ここからは余談】
さて、前回紹介したサイトですが、そこの管理人の方が自動車評論家への提言を書かれていましたので、引用します。



私自身、過去のブログで自動車評論家の事を「(アルミテープチューンに簡単に騙されるように)大した感性もないくせに、剛性感だリニアリティだとさも解ったかのような記事を書く」だとか、「車の電気の流れも知らないようなメカ音痴なので、技術系の解説はメーカーの広報資料を書き写すだけ」などと散々批判してきましたが、その辺りも明解にまとめられているように思います。

Posted at 2025/06/06 08:17:18 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月05日 イイね!

フルブレーキングできますか?(2)


自分は免許を取って約37年、その間30万キロ以上は走ってきましたが、実は一度もフルブレーキングを経験したことがありません。

そういう人は意外と多い、というよりは、フルブレーキングを経験したことのある人の方が、圧倒的に少ないのではないでしょうか?


さて、前回の最初の質問である(走ったり止まったりに欠かせないモノ)の答えですが、
摩擦力が正解です。

摩擦力があるからこそ、その反力として駆動力や制動力が得られる訳です。


で、次の質問である(制動距離を短くするにはどうしたら良いか?)ですが、力学に詳しい人は勿論、勘の良い人ならもう気付いたと思いますが、答えは摩擦力を上げれば良いわけで、
3の「タイヤのグリップ力を上げる」が正解です。

つまり、制動距離は、道路構造令にあるように「車両速度、運転手の反応時間、すべり摩擦係数」の3要素で決まるのですが、反応時間という人的要素を除けば、
L= v0^2 /(2×g×f)となります。
※道路構造令の解説と運用より
L:制動距離(m)
v0:制動開始時の速度(m/s)
g:重力加速度(9.8m/s^2)
f:すべり摩擦係数

ここで重要なのは、fはタイヤと路面間のすべり摩擦係数なので(制動力=路面との摩擦力の反力)、フルブレーキでタイヤがロックする(あるいはABSでロック寸前)までブレーキを踏めば、欧州製のスーパーカーだろうが軽自動車だろうが、タイヤが一緒なら同じ値になります。

つまり、ブレーキ性能を上げたところで制動距離は縮まらないが、タイヤのグリップ力を上げれば縮められるという事です。


また、質量の影響についても、高校で習ったエネルギー保存の法則から「運動エネルギーが熱エネルギー等に変換されたから車が止まるのであって、運動エネルギーとは質量×速さの二乗÷2なのだから、質量に比例して制動距離が延びるはず」と安直に考える人も多いですが、それも誤りです。
※教習所や免許更新の際に、「制動距離は速度の二乗に比例して延びる」と習いますが、質量はどこにも出てこない事を思い出してください。

この運動エネルギーに関して言うと、ブレーキが運動エネルギーと同じ大きさで反対向きの仕事(=質量×加速度×距離)をしたから、運動エネルギーが減少して熱エネルギー等となり、車が止まるのです。

ですから、運動エネルギー=(負の)仕事となるため、質量は相殺されて、速さの二乗÷2=加速度×距離、つまりV^2×1/2=α×Xとなり、V=v0、α=g×f、X=Lを当てはめれば、上記の式L= v0^2 /(2×g×f)が得られます。
※ここでは空気抵抗などは考慮しない。

従って、質量は制動距離には影響しません。
つまり、車体を軽量化したところで、同様に制動距離は縮まらないのです。
※荷重移動による影響については、別掲します。


この件については、下記のサイトで実例を基に非常に解りやすく説明されていますので、「難しい数式を示されてもよく理解できないよ」という方も、下記リンク先を参照いただければ、目から鱗が落ちること請け合いです。

(また続く)


【リンク】
クルマが重くなっても制動距離は変わらない
(常識を覆す車両重量と制動距離の関係)
https://vehicle-cafeteria.com/braking.html

Posted at 2025/06/05 07:43:51 | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「バッテリー交換時、スパークさせないためには? http://cvw.jp/b/2036415/48812316/
何シテル?   12/16 09:31
ネット上には、車の情報に関する様々な誤解やデマ、更にはオカルトチューン (疑似科学)が大手を振ってまかり通っているので、本音で書きます 皮肉屋なので...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/12 >>

 123 456
78910 11 1213
1415 1617181920
21222324252627
28293031   

愛車一覧

日産 セドリック 日産 セドリック
18年ぶりのY32 しかも、Ⅴ30E「グランツーリスモ」anniversary これでY ...
トヨタ クラウンハードトップ トヨタ クラウンハードトップ
 短命だったデボネアVに代わり、新たに戦列に加わりました。  13系では希少な前期の7M ...
三菱 デボネア 三菱 デボネア
【長所】  ボディ剛性は、この年式にしてはしっかりしてます(実際、Bピラーはかなり太い) ...
トヨタ マークII トヨタ マークII
 GX81でネオヒスに片足突っ込んだ後に購入。  当時はハチマルヒーローも創刊されておら ...

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2024年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2021年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2017年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation