6〜7年ほど前に探し求めていたアルピナグリーンのB5S Supercharge。
内装はクリームベージュで右ハンドル。
もし、このクルマが現れていたら現オーナーは私だったかもしれません。
そして、アルピナフリークに磨きをかけ、Mモデルの魅力を知ることはなかったと思います。
最初に興味を持ったのは、クルマのデザインが気に入っていたE39をベースにしたB10 V8S。
限定モデルということもあり、1年以上待っても程度の良いものが出できません。
そんな状況を見透かしたかのように、
B5Sの魅力を訴えるインプレッションがインターネット上に1つだけ存在しました。
インパクトのあるこのブログがお気に入りで、当時、何度も読み返しました。
私のクルマ選びに少なからぬ影響を与えています。
また、このブログに出会っていなければ、みんカラに登録することもなかったかもしれません。
今回、そんなきっかけをいただいたアルピニストさんにお会いする夢が叶いました。
待ち合わせ場所に指定した辰巳PAに向かいますとの連絡が入り、もう間もなく到着というタイミングで、B8 4.0が入場してきました。
B8 4.0はかなり珍しいなあ、今日はアルピナ2台も見られるなんてラッキーだなあ、もしやアルピニストさんがB8 4.0のドライバーさん、などと色々なことが頭の中を駆け巡っていると、アルピナグリーンのB5Sが続いて見えてきました。
B5S をM6の隣の駐車スペースに誘導し、クルマから降りてきたアルピニストさんと挨拶を交わします。
振り向くと、一人の紳士から117クーペのラガーさんですよねと。
何と、オフ会で2度お会いしている
Oh茶無さん。
クルマ抜きの飲食会でお会いしていたから思い至らなかったというのは言い訳でして、世界で5台しか製造されていないというB8 4.0のオーナー様であることまで知っていたのに大変失礼しました。
しかし、こうなるとB8 4.0に注目が向かいます。
話の流れでエンジンルームを見せていただくことになりました。
よりハードなスペックな4.6ℓエンジンのモデルが存在するとはいえ、V8 4.0ℓエンジンでもスペース一杯に詰め込まれている印象です。
97年製のこのクルマのエンジンスペックは20年経った今でも十分なレベルです。
最高出力:315ps/5,700rpm
最大トルク:41.8kgm/4,500rpm
20年前に最大出力が300馬力を超えていたという素晴らしい性能のエンジンですが、自然吸気で40kgmを超えるトルクは流石といった印象。
アルピナ・ブルーⅡはアルピナ・ブルーⅢより濃い色合いなのでしょうか。
ゴールドというよりブロンズに近いデコレーションと似合っています。
フロントリップのALPINAロゴの周りは空力を意識しているのか、一部開いています。
クラシックⅡホイールがE36のデザインと相まってオシャレに見えます。
そんな品評を続けていると、今度はB5SやM6はどうなっているのだろうという話になります。
M6のエンジンフードにはMロゴとV10バッジが取り付けられています。
スペックは以下のとおりで、高回転域になるほど輝きを増すエンジンであることは回してみると良く分かります。
最高出力:507ps /7,750rpm
最大トルク:53.0kgm/6,100rpm
BMWが市販車に搭載する自然吸気のV10エンジンとしては、このS85B50Aという型式が最初で最後というのが残念でなりません。
次期モデルのF系でこのエンジンを進化させて採用することができたら、かなり硬派なMモデルが誕生していたのではと思うことがあります。
これに対し、ALPINAは、ご存知の通り、V8 4.4ℓエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせ、スペックはMモデルを軽く凌駕したクルマを販売しています。
最高出力:537ps /5,500rpm
最大トルク:74.0kgm/4,750rpm
スーパーチャージャーに繋ぐ吸気口、筋肉質なボディを連想させるエンジンフードなどは、ただならぬ雰囲気です。
ボンネットインシュレーターが付いていないのが、エンジンルームにぎっしりと詰まっている証拠といえると思います。
滑らかな形状になるはずのエアダクトの形状を変えているくらいなので、本当にギリギリのところで納めているのでしょう。
タイヤ幅はB5SとM6とも前245、後285と同じですが、扁平率はB5Sが前35、後30とM6より5%小さく、サイズは20インチと1インチ大きなものを履いています。
これだけ見るとB5SのほうがM6よりスポーティに設定されているように見えますが、ブレーキディスクがMモデルのようにドリルドタイプではなくソリッドになっていることから、ハードな加減速を繰り返すような走行は想定していないように思えます。
3台の鑑賞会が落ち着いた頃、外気温はかなり下がって寒くなっており、Oh茶無さんとのお別れの時間を迎えます。
B8 4.0のエキゾーストは低く、子供の頃に耳にしたE34 525iや535iの排気音を思い起こさせてくれました。
B5SオーナーとなったアルピニストさんにMモデルの印象が当時と変わらないか、もう一度確かめていただきたいと乗り比べを提案します。
土曜日の夕刻ともなると、首都高速はかなり混み合っており、大半が流すような走り方しかできずにM6の良さを引き出す領域には遠く及びませんが、それでもあのブログ当時とは印象が違っていたようです。
詳細は、ブログに綴っていただけることを期待したいと思います。
続いて、私がB5Sのステアリングを握ることになりました。
コンフォートシートに腰を下ろすと座面に革シートの柔らかさを感じ、背中を背面に付けると革のソファーに座ったときのような心地良さを感じます。
シートに張りがあり、サイドから体をしっかりと支えてくれるM6のスポーツ・シートとは方向性が全く異なります。
第一印象としては、このクルマは上質なドライビングを楽しむクルマであり、積極的に攻めていくことを狙っていないのだろうなあと。
イグニッションをオンにしてもエンジンは静かにスタートし、アイドリングですら低音のエキゾーストが響き渡るM6のような獰猛な印象もありません。
走り出しは実に滑らかで、スロットルペダルを徐々に踏み込んでいくと、これに完全に呼応するようにタイヤが回ってクルマの速度が上がっていくのが分かります。
B5 Superchargeでも以前に全く同じ感覚を経験しており、久しぶりにアルピナを運転しているという気になります。
流れに乗って走る分には気持ちを荒立てず、アルピナ社がセダンをリムジンと呼ぶ意味が分かる気がします。
ところが、スロットペダルを床まで踏みつけると、キックダウンして座面の下から蹴られたような衝撃とともに、ヴォ〜〜ヴォ〜ヴォ〜ヴォウォ〜ウォウォウォ〜〜とまるでマセラティ グランツーリズモのような官能的なエキゾーストを轟かせてグイグイと加速します。
4,000rpmを超えたあたりからレブリミットまでタコメーターの上昇スピードが加速していく印象を受けるM6と比べると、出足が強烈なだけにむしろ等速で回転数が上昇する印象のB5Sはレブリミットの6,000rpm付近までしっかりと引っ張ってシフトアップするにはタイミングが取りやすいと思います。
M6のようにヘッドアップディスプレイとにらめっこしなくても、ステアリングの裏にあるスイッチトロニックを使って上手くシフトアップできます。
M6で加速しようとすれば、2速か3速のシフトダウンは必要です。
シングルクラッチ式なのでツインクラッチを採用しているセミオートマチック車に比べるとシフトチェンジによる明らかな途切れは感じますが、一呼吸おけばエンジンがパワーバンドに乗るので、スロットルペダルを踏み込めばエキゾースト音の高まりと相まってクルマは加速を始めます。
7,000rpmを超える頃になると、スロットルペダルからエンジンパワーが振動となって伝わってくるような気がします。
また、エキゾーストよりV10特有のエンジン音が強くなり、思わず聞き入ってしまいます。
V10エンジンを搭載したカレラGT、LFA、R8、M5、ガヤルドなどのサウンドを集めた動画がYoutubeにアップされていますが、低音域ではエキゾーストの音質が違っても高回転域ではどれも良く似通っています。
V8ともV12とも異なるサウンドがV10にあります。
B5Sのステアリングは適度な軽さがあってクルージングするには快適です。
緩い高速コーナーを駆け抜けるときにドライバーに緊張が走らないように穏やかな操舵感に仕上げているといえるかもしれません。
一方、M6のステアリングは切れば切るほど重みが増し、フロントタイヤの接地感や向きなどが手のひらに伝わってきます。
ハイペースでコーナーに突入すれば、ステアリングから伝わる操舵感が緊張感となって体で受け止めながら運転することを強いられます。
ただ、ややタイトなコーナーでもタイヤやクルマの向きが手のひらで分かるので、安心してステアリングを切っていける感じがします。
このような乗り心地や操作性の違いから、アルピナとMモデルをスペックで比較することにあまり意味はないと思っています。
アルピナの哲学やクルマは今でも好きですが、Mモデルを運転して飽きがこなくてこんなに楽しいクルマと感じることになるとは思いもよりませんでした。
今回、B5S Sperchargeという貴重なクルマのハンドルを握らせていただいたアルピニストさんには大変感謝しております。
また、機会があれば、アルピナとMモデルの乗り味を研究してみたいと思っています。