
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申しあげます。
年末年始は9連休でのんびりと過ごしましたが、このイベントは今年を振り返ったときに最も心に残る出来事となるかもしれません。
この日が訪れるのを5年ほど心待ちにしていたと言っても過言でありません。
オーナーさんと知り合ったのは5年半ほど前。
私がE63M6に乗りながら117 Coupeを維持しているということを知ると、自宅に良いものがあるので見に来てくださいとご招待いただきました。
何も知らないまま3か月後にお宅に伺うと、車庫からシルバーのトヨタ2000GTが出てきました。
軽く走らせましょうと助手席に乗せていただきましたが、少し走ったところで運転してみますかと。
2000GTとの対面すら想定外で、クルマに乗せてもらって満足感で一杯。
心の準備はできておらず、夏場でクルマのコンディションが難しい状況にあったことから、涼しくなったらツーリングしましょうと辞退しました。
その後、トラブルが出て4年半ほど整備へでていたそうです。
久しぶりに復帰を果たしたものの新たな整備が必要となり、次の入庫が迫るなか、年末にお声がけいただきました。
オーナーさんと話して首都高を走らせることに決定。
ルートはお任せいただけるとのことで、辰巳PAを目指すことにしました。
助手席に乗ったときの印象は117 Coupeよりもロードノイズがお尻から伝わるなあというもの。
今回はそれを感じませんでした。
タイヤをスポーツタイプのダンロップから柔らかいミシュランに変えたということと、117 Coupeの足回りを当時と変えてしまったことも影響しているかもしれません。
シートのホールド感はしっかりとあり、スポンジのようにふかふかした117 Coupeとは雲泥の差です。
大きな曲面のガラスのおかげで、前方視界は良好です。
ただし、フェンダーミラーが手前側で目線を正面から意識的に向けないと視界に情報が入ってきません。
その点、117 Coupeのフェンダーミラーは目線を大きく動かさなくても視界に入ってくるので秀逸な設計だと思います。
フロントフェンダーの峰とボンネットのダクトを見ながら運転できるのが羨ましい。
エンジンは、ヤマハと共同開発した1,988ccの直列6気筒DOHC。
スペックは、最高出力150ps/6, 600rpm、最大トルク18.0kg・m/5,000rpmと日産のGT-RやZ432に搭載されているS20型エンジンに見劣りしない高性能なものです。
矢田部のトライアルにおいて、巡航速度で200km/hを超える世界的な記録を残したことは有名ですね。
GT-RやZ432はエンジンルームの縦方向にギリギリ収まっている感じですが、このクルマはフロントミッドに近い印象を受けます。
直列6気筒といえば最も滑らかに回転するエンジンの代表格ですが、アイドリングを1,000rpm程度に設定するとかなりの振動があり、街中を安心して走るには1,500rpmは欲しいです。
117 Coupeに搭載された直列4気筒DOHCのいすゞ社製エンジンは、メーカー推奨から200rpmほど落として700rpm位で設定してもこれほど振動しません。
キャブレターの調整で落ち着かせられる面もあるのでしょうが、使い勝手の良さはいすゞに分があるように思います。
2000GTのエキゾーストはかなり勇ましく、上質なGTを狙った117 Coupeとの思想の違いを感じます。
エンジン音もエキゾーストと一緒に後方から響いてくる感じで、リアエンジンだったかなあと。
エンジン音が小刻みで、1フレーズが長く感じるのは気筒数の違いでしょうか。
2000GTは低回転域でもスロットル操作に反応してエンジン出力が上がってくれるので、シフトダウンやキックダウンは不要。
このあたりは117 Coupeより遥かに運転しやすいです。
ちなみに、シフトノブはPレンジからDレンジまでの間はノブを上方に引いて動かします。
最大のネックは、オーナーさんが心配していたブレーキ。
後輪がドラムの117 Coupeと異なり、2000GTは当時の国産車としては希少な4輪ディスクブレーキを採用しています。
効きが悪いといっても要領は同じだろうと高を括っていましたが、その見込みはすぐに崩れ去りました。
117 Coupeはストロークが長く、ペダルを3分の2ほど踏み込むまで制動力はほとんど得られません。
かといって、減速が遅れた分を取り戻そうと焦って強くペダルを踏めば、最悪はタイヤがロックして車体ごと路面を滑ってアンコントローラブルになりかねません。
真っ黒くなった消しゴムで力加減を調整しながら文字を消すようなイメージです。
一方、2000GTは3分の1くらいペダルを踏めばブレーキは効き始めます。
ただ、それほど強い制動力ではないのでもう少しとペダルを踏み増しても、効きはあまり強くなりません。
硬くなった消しゴムを使っている感じ、少し力を入れても消え具合が変わらないイメージでしょうか。
最近のクルマでいえば、冷えたカーボンブレーキだと効きがイマイチな感じに似ています。
合流と分岐でカオスの動きをする首都高では十分な車間が必要で、普段の3倍ほど空けたくなります。
それでも車間があると余裕で止まれると誤解するのでブレーキが遅れ、その後にこのままで大丈夫かなあと恐怖の時間を過ごすことになります。
ダッシュボードからセンターコンソールにかけてパネルはウッド。
ウッドステアリングと相俟って、とても良い雰囲気です。
サイドブレーキのステッキも高級感があり、当時238万円という国産車の中でも群を抜く高値で販売されたのも納得できるレベルに仕上げられています。
以前のブログでもご紹介したとおり、117クーペが172万円、ハコスカGT-Rが150万円、マツダコスモスポーツが148万円です。
ステアリングがテレスコピックなことにも驚きました。
重ステなのにステアリングは細目に作られています。
リアに向かっての造形はとても美しいです。
ミニカーで良いのでこの角度から眺めていたくなります。
ドア形状から左足を踏み入れてから乗り込んでいましたが、どういう手順で乗るのがスマートなのでしょう。
ロングノーズ・ショートデッキのクルマが3台並んでいます。
2000GTが50年前に製造されたクルマだとは思えないほど、美しいデザインをしています。
サイドからみると見事なプロポーションです。
連続する曲面で柔らかい印象を与えるデザインに仕上げられていながら、スポーツカーであることをしっかりと伝えてくれます。
0系の新幹線が同じような要素をもっているのではないでしょうか。
ジョルジェット・ジウジアーロといえば、ウェッジシェイプの作品が数多くあります。
その中で117 Coupeは流麗にデザインされた例外的な作品であると思っていました。
ところが、この2000GTと並べてしまうと、その認識は必ずしも正しいとはいえないのではないかと思い直すに至りました。
比較の対象として適当かどうかは別にして、2000GTというクルマに触れることによって117 Coupeをより知るための材料を沢山得たのではないかという気がしています。
2000GTのハンドルを握る機会を与えていただいたオーナーさんには、この場を借りて感謝の意を表したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。