
ヴァンキッシュが2015年モデルで進化するというニュースを掴んでから5か月。
ほとんど情報がないままに時間が経過しましたが、遂にこの日がやってきました。
基本的に大きな変更はなく、マイナーチェンジといえます。
エンジンは従来と同じ5,935 cc のV型12気筒です。
圧縮比の変更などはなく、排気系の見直しにより性能向上が図られています。
また、ギアボックスがZF社のTouchtronic IIの 6速ATからTouchtronic IIIの 8速ATとなり、シフトチェンジを早くしたようです。
従来モデルとの性能比較は次のとおりです。
最高出力:573ps/6,750rpm → 576ps/6,650rpm
最大トルク:63.2kgm/5,500rpm → 64.2kgm/5,500rpm
0-100km/h:4.1秒 → 3.8秒
最高速:295km/h → 324km/h
手前のブラックがLCI前、奥のシルバーがLCI後(=2015年モデル)です。
外見上は全く同じで見分けることはできません。
でも、アルミホイールに違いがあるのではとお気づきの方は鋭いです。
シルバーのクルマには、10スポークサテンブラック&ダイヤモンドターンドという2015年モデルに合わせて発表されたオプションホイールが付いています。
したがって、2015年モデルだと予想はできますが、私が一番気に入っているブラックのクルマに履かせている20スポークグロスブラック&ダイヤモンドターンドのホイールを選んだら全く見分けようがなくなります。
試乗車の外装色はTungsten Silverでした。
この色のVanquishを初めて目にしたのはとあるショールームの中でしたので、鈍い銀色であまり冴えない色だなあというのが正直な印象でした。
ところが、今回は屋外だったことも影響しているのかその印象が一変しました。
渋い落ち着いた金属色が輝きを放っていて、オールカーボンのボディーで作られたヴァンキッシュがまるで金属から削り出した造形モデルみたいに見えます。
シルバー系の中での一番のお気に入りは光の濃淡でエッジが強調されやすいSkyfall Silverでしたが、この色であればいつみても惚れ惚れする飽きのこない色といえそうです。
クルマに乗り込みシートポジションを合わせると今までの違和感はありません。
これは私にとっては大きな前進です。
アストンマーティンは正面を真っ直ぐ見るような姿勢を求められます。そこでM6に乗るときもクーペらしさを出そうとシートを一番低く設定するように変更したのですが、やっとその甲斐があったと感じました。
ただ、ルーフが前に少しせり出しているせいか、上部の視界が遮られます。
運転中も気になりますが、実用性からいうと信号に近づきすぎると見にくい場面があるかと思います。
ちなみに、サンシェードは縦幅が3㎝くらいでした。
次にミラーを確認しますが、Volanteと違ってリアビューミラーからの後方視界も確保できています。
ドアミラーからはリアフェンダーの大きな膨らみが見えるので、アストンマーティンに乗っているぞと思わずニヤリとしてしまいます。
さて、アストンマーティン独特の儀式であるクリスタルキーをセンターコンソールの上部中央にある差込口に指で長めに差し込み、エンジンをスタートさせます。
このときにブレーキを踏むのを忘れて1回目は不発。
クリスタルキーを抜いてからブレーキを踏んで改めてトライします。
するとガォーンというとてつもなく大きな咆哮を轟かせてエンジンが始動しました。
シート右手にあるシフトレバーでサイドブレーキを解除して、クリスタルキー差込口の並びにある右側のDボタンを押すと準備完了です。
ブレーキから足を離すとAT車なのでクリープで動きはじめます。
セミオートマならスポーツカーの雰囲気が出るのでしょうが、このクルマはアストンマーティンのUltimate GTなのでここは良しとするしかないでしょう。
まずは、オートマモードで普通に走りはじめます。
アクセルを意識して踏み込むとギアチェンジの切り替えが早くなって、しかも排気音がついてくることに気がつきました。
以前に気になった籠った感じがありません。
これで一番の不満点は解消されたことになります。
試乗コースは短いので2周することをお願いして、1周目はオートマモードで軽く走ることにします。
ステアリングはオールブラックレザーのOne-77スタイルのものが付いています。
握りの部分が少し独特な形状ですが、違和感もなく捌きも問題ありません。
2周目に入り、パドルを使って積極的にアクセルを踏んでみます。
少し走ってからステアリング右下にあるSボタンを押してさらにスポーツモードにしてみます。
しかし、出足は少しのっそりしているかもしれません。
(V10M6乗りに言われたくないかもしれませんが…)
これは電気自動車のTesla Model Sやターボで4WDのAudi RS7のようなハイパフォーマンスカーの運転を経験したから感じられたことだと思います。
それでも、これらのクルマより0-100km/h加速が3.8秒と凌駕しているのですから、途中からの加速は相当なものなのでしょう。
私が運転した限りでは、スタートからフルスロットルにするとホイールスピンして綺麗に走れませんでした。
排気音は今までの試乗と比べてかなり小さく感じました。
考えてみると
過去に試乗したVanquishは2度ともVolanteでCoupeは初めてです。
営業マンにも確認しましたが、やはりCoupeのほうが静かとのこと。
もう少しこだわった言い方をすれば、エキゾーストよりエンジンの機械音のほうが良く聞こえてくるので、Coupeの場合はアストンマーティンらしい独特の音をより楽しめるかもしれません。
そう、このクルマはカーボンブレーキが標準です。
強く踏む場面はありませんでしたが、ちょっと踏むと過度に効いて減速するとか、軽く踏むとスルスルと滑るようで少し強めに踏まないと効いてこないということもなく、踏めば踏むだけ効くという自然なもので違和感はありません。
もちろん、ブレーキペダルは右足で踏みやすい位置にあります。
このクルマは運転しているときより眺めているときのほうがドキドキします。
車両本体価格はCoupeが3,285万円、Volanteが3,519万円です。
オプションが200万円~400万円になりますし、諸経費も加えて…
Coupeの場合はリアシートがオプションになります。
試乗車はこの52万円強のオプションをつけず、2シーターモデルになっていました。
荷物置き場にはちょうど良いですが、要らないかなあ。
クルマを眺めているだけのほうが幸せなのかもしれません。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。