
さて、後編です。
白鳥のように両扉を広げて美しい姿を披露していたのが、ジャガーE-type ロードスター。
1974年式のシリーズⅢで、フロントに格子状のグリルが埋め込まれ、ホイールアーチにフレアが付いているあたりが見分けるポイントになるでしょうか。
当初のシンプルなデザインの良さが失われたと人気の面ではシリーズⅠに譲るようですが、パワフルなV型12気筒エンジンが積まれているという魅力があります。
この時代の国産車に革張りの内装は望めません。
分厚いサイドシルにも革が張られ、とても豪華に見えます。
ATのシフトノブの長さが優雅さの象徴のようにも思います。
国産旧車との当時の価格差で考えると、販売価格1,320万円はお買い得な気がします。
クーラーがどれくらい効くのか気になりますが、オープンカー乗りには関係ないですかね。
2000GTのオープンカーといえば、日本が舞台となった「007は二度死ぬ」で登場したクルマです。
映画用に2台が用意され、劇中で実際に使用された車両はトヨタ博物館に所蔵されています。
こちらはプロモーション用に使用された車両です。
一時期は行方不明になっていて、かなり痛んだ状態で発見されたもののレストアしてピカピカにしたようです。
2000GTの試作車という位置付けであり、市販するクーペの屋根を外したオープンモデルという設計ではないようです。
フロントガラスはクーペより寝ているみたい。
ホイールは映画車両と同様、マグネシウム製のオリジナルではなく、スピンナット式のワイヤーホイールに入れ替えられています。
5月にはRMサザビーズのオークションで左ハンドルの赤い2000GTが出品されるそうですが、果たしていくらで落札されるのでしょうか。
サーキットの狼ミュージアムからの展示車両であるロータスヨーロッパスペシャル。
原作者の池沢早人氏の監修も受けた主人公が操る愛車の風吹裕矢仕様です。
赤いストライプには29個の撃墜マークが入れられています。
特にGTウィングにはこだわって製作されているようです。
ルーチェロータリークーペはかなり希少ではないでしょうか。
どことなく117クーペを思わせるデザインですが、ジョルジェット・ジウジアーロが在籍していた時代のベルトーネ社がデザインしたルーチェを原型に社内デザイナーが手を加えて仕上げたようです。
ロータリーエンジンを積んだ前輪駆動の市販車といえば世界でこのクルマだけではないでしょうか。
エンジンは、コスモスポーツやファミリアを大型化し、最大出力126PS/6,000rpm、最大トルク17.5kgm/3,500rpm、最高速190km/h、0-400m加速17.1秒となると、当時の国産スポーツカーに匹敵する性能です。
カタログのキャッチコピーは「ハイウェイの貴公子」。
1969年当時の発売価格は、スーパーデラックスが175万円、デラックスが145万円と、ハコスカGT-Rや117クーペとほぼ同水準。
展示車は屋根が革張りになるスーパーデラックスです。
残念ながら販売は振るわず、生産は3年で打ち切られ、生産台数は僅か976台。
滅多に目にできないはずなのに、思いの外、通り過ぎる方が多いような気がして哀愁を感じてしまいます。
通路を隔てた「表紙を飾ったクルマたち」と銘打たれたひな壇のようなスペースのほぼ向かいにハンドメイド117クーペが飾らせています。
ボディカラーの影響もあるのかもしれませんが、ハンドメイドを見るとボディの曲面やプレスラインに量産丸目型より柔らかさを感じます。
SOHCエンジンの廉価モデルの追加もあって2,458台が販売されており、量産丸目型や角目型より高値で取引されているとはいえ、当時の販売価格からするとかなり手頃な価格で手に入ると思います。
真っ赤なコスモスポーツはとても目を惹きます。
トヨタ2000GTもそうですが、白のイメージが強過ぎて、スポーツカーには赤が似合うという方程式が成り立ちません。
少し大げさにいえば、真っ白なコスモスポーツとは別のクルマに見えます。
一方、ハンドメイド117クーペはスタンダード5色、オプション9色の14色がカタログにラインナップしており、昨年に開催された117クーペ生誕50周年記念イベントで集まった35台は色とりどり。
イメージカラーはカタログカラーの薄いイエローになるのでしょうか。
スカイラインRSターボも並びに飾られていました。
R30専門店がミッションのオーバーホールとボディのレストアを手掛けた珠玉の一台は699.8万円。
地道に作業してかかった費用を加算していくと、こういう販売価格になってしまうのでしょう。
メーカー供給が止まり現品を補修するので新品へ交換するより高くついてしまうというケースが増えているようです。
ちょっと乗ってみたい人向けではなく、RSターボに乗り続けたいと強く願う人がオーナーになるのでしょう。
西部警察の繋がりでいえば、石原裕次郎が扮する木暮課長専用車の初代ガゼール。
ドラマでは、白と黒のツートンカラーのクルマの白いボンネットにガゼルが描かれ、特別仕様のオープンカーになっていました。
小暮課長が片手をついてドア越しに飛び乗る姿は、2000GTのドアを開けて乗り込むジェームズ・ボンドより決まっているかな、と。
グリーンのクーペは味があってとても良いと思います。
欲しいとなると、198.8万円であれば即決できてしてしまうかもしれませんね。
ヨコハマを舞台にした刑事ドラマといえば、あぶない刑事でしょうか。
舘ひろしと柴田恭平が共演で鷹山と大下という刑事役で捜査車両として乗り回すのが、2代目レパードのアルティマ。
展示車はオリジナルのパールツートンから劇場車と同じゴールドツートンに塗り替えられています。
走行距離も17.5万kmと国産高級セダンの中古車としては嵩んでいるほうですが、車両価格は737万円と高値が付いています。
ちなみに、アルティマとは、英語で究極を意味するUltimateから派生した造語で、レパードの最上級モデルに付けられたグレードです。
2台先に並べられた同型の1986年式アルティマもパールツートンからゴールドツートンに塗り替えられたようです。
こちらは後期型からサンルーフを移植し、より豪華仕様になっています。
走行距離14.6万kmで車両価格は755万円。
あぶない刑事シリーズが放送されるたびに古き良き時代のクルマとして改めて注目を惹くのに、当時は対抗車のソアラのように販売面では振るわなかったこともあり、稀少車となって価格形成に有利に働くのでしょう。
このお店の社長個人が所有するのは日産自動車で1台のみ生産されたアルティマ グランドセレクション。
その隣には社長と同じボディカラーにとのお客さまの声に応えてワインレッドにペイントされた1台が飾られていました。
レパードの専門店として、マニアに満足してもらえるレベルのいわゆるコンクールコンディションを目指してフルレストアするとなると、こういう販売価格になるのも当然なのかもしれません。
当時の対抗車のソアラ。
こちらは2代目なので、厳密にいえば、ライバルは2代目レパードでも後期型になります。
ワンオーナーの1988年式3000GTリミテッドは走行距離1.9万km。
車両価格318万円は安いように思えてしまいます。
今でもお気に入りのA70スープラ。
初めて車雑誌で目にしたときに惹かれました。
展示車は後期型3.0GTターボリミテッドで230万円。
デザインに溶け込んだブリスターフェンダーも過度な誇張にならずに自然と決まっています。
発売当時のスープラはソアラと並んでトヨタが誇る高級車だったこともあり、ホワイトの外装色でも自然に受け入れられましたが、グループAのホモロゲーションモデルであるターボAの登場もあり、高性能スポーツカーというイメージが強く残る今となっては、清潔感ある上品なクルマに見えます。
個人的には、2.5GTツインターボエンジンを搭載し、ダークグリーンマイカという専用色が塗られたターボRが理想です。
ロールスロイス カマルグは1977年式で走行距離は3.2万km。
カマルグは、南仏プロヴァンス地方の高級リゾート地で海塩の産地でも有名なカマルグに由来しています。
デザインは、ロールスロイス社からピニンファリーナに「最高級の名に相応しい威厳を保ちつつ、決して古臭くならないデザインを持つ4シータークーペ」というリクエストで依頼したようです。
日本で最初に販売されたときに設定された価格は4,500万円。バンパーは1本もので、バブル当時にディーラーに交換をお願いしたら見積が500万円だったと紹介しているブログもありました。
シートの革に柔らかがあり座り心地が良さそう。
藍色かかった色目は目を惹きますが、ボディカラーに合わせられていて納得いきます。
この時代の高級車にウッドパネルは鉄板ですね。
ステアリングが左にオフセットしているように見えるのが気になります。
世界一高価な乗用車といわれたカマルグは、生産期間13年で僅かに525台しか販売されていないようです。
全長は5mを超え、横幅は192cmと現在の高性能スポーツカーと変わらないサイズにも驚きます。
この超高級車が車両価格880万円で購入できるのであればお買い得に思えてしまいます。
今回のイベントで欲しいクルマNo.1です。
ただ、身の丈に合わないクルマは手元にあっても使う場面が全く思いつかないという実用性からの課題を克服しなければなりません。
駐車スペースを探すだけでも一苦労しそうです。
その隣には1976年式マツダカペラロータリークーペが並べられていました。
コンパクトなボディサイズでも、外装色がオレンジなのでインパクトがあります。
走行距離3.7万kmで880万円とカマルグと同じ価格。
中古車の評価とは難しいものだとこの2台を何度も行き来して品定めしまいました。
フォードGT40が会場に現れて所定の展示場所までゆっくりと移動する後ろを多くの方が付いて歩いていました。
爆音を響かせるような脚色はなく、タンタンタンタンとメカニカルな音が場内をこだましてるのが印象的でした。
運転席のある右側のドアはルーフから開くようになっていますが、助手席になる左側のドアは普通に開くようになっています。
内装が赤に統一され、革シートが採用された1981年式117クーペリミテッドエディション。
クラシカルな印象の強いハンドメイドと比べると、後期型の角目は近代的にモディファイされていることを感じます。
販売開始の1968年12月から12年以上も後に販売されたクルマなので、自動車メーカーからすると現代流にデザインを見直すのも必然なのかもしれません。
とはいえ、2度のマイナーチェンジを経たといっても、オリジナルのデザインから大きくは変わっていません。
普段から117クーペに気楽に乗りたいと考えるのであれば、後期型は賢い選択だと思います。
117クーペの後継モデルのピアッツア。
このクルマもジョルジェット・ジウジアーロがデザインして1981年5月から販売が開始されています。
オリジナルに忠実な初期型は、半開きの2灯のセミリトラクタブルライトが採用されており、フロントマスクは眠たげな表情にも感じますが、ヤナセが販売したピアッツア・ネロに採用された角型4灯はシャープに見えます。
また、販売当初はフェンダーミラーでデザインに溶け込んでいない印象でしたが、1983年3月の解禁を受け、5月のマイナーチェンジから採用したドアミラーになってラインがスッキリとしました。
チューニングメーカーのイルムシャーが足回りに手を入れたイルムシャー仕様のホイールは、ボディカラーとお揃いの独特なものが装着されています。
好みのホイール形状ではないのですが、真っ赤なボディと相まってオシャレに決まっています。
最後に紹介するのは、同じ赤つながりでアウディクワトロ。
遊び心を感じる真っ赤なボディに精悍な印象を与える角張ったデザインが相乗効果となって、とても格好良く見えます。
写真では捉えきれませんが、どの角度から見てもバランス良く見える造形が秀逸です。
そして、何と言ってもフルタイム4WDを採用した世界初の乗用車という意味で、歴史的な価値があるクルマだと思います。
最高出力200馬力のインタークーラー付きターボチャージャーの2,144cc直列5気筒SOHCエンジンはオーバーハングより前のエンジンベイぎりぎりの前輪より前に搭載されています。
これは、当時タイヤのグリップが弱くて自重も軽かったので駆動輪である前輪に重さをかけて空転を防ぐという目的があったようです。
その一方、このままではアンダーステアが強くてコーナリングで不利になることから、強大なエンジンパワーを使い切るには四輪駆動にせざるを得なかったという推察も成り立ちます。
いずれにせよ、アウディクワトロはWRCで成功を収め、ラリーで四輪駆動が主流になったのはご存知の通りです。
このクルマの魅力に惹かれて何度か行ったり来たりしましたが、アウディを所有するような機会があったら、このクルマも手に入れたくなるだろうと感じさせられました。
まだ紹介したいクルマはあるのですが、長くなってきたので、2回に渡って取り上げたnostalgic 2daysのブログは終了します。
最後まで目を通していただきありがとうございました。