2011年03月17日
連投です。
今、被災地以外の医療機関が抱えている問題を少し書きたいと思います。
今、実施されている輪番停電。
病院には、自家発電設備があるので、基本的は病院の電気が途絶えることはありません。そのことに間違えはありません。
でも、この自家発電設備。どのように動いているかご存知ですか?
ディーゼル発電機を使用しています。その燃料は、ご存知軽油。
数日は自家発電で電力はまかなえます。でも、電気が来ている時の様な環境ではなく、必要最低限の電力確保しか出来ません。
緊急の手術や生命維持装置(人工呼吸器や人工透析等)等、電気が途絶えては困る患者さんや部署にのみ電力が供給される最低限の確保が前提です。
今後、輪番停電が続けば、自家発電装置を作動せざるを得ません。でも、その燃料となる軽油も手に入りにくい状況。病院もいつ機能不全に陥るか、その不安と恐怖に隣り合わせに居る状況であると言っても過言ではありません。
今すぐ、被災地以外の病院全てが機能不全に陥るわけではありません。もう少ししたら、ガソリンや軽油などの供給も回復するとは思います。
でも、もしかしたらということを考えなければいけないんです。
守るべき命を守るためには、「多分、大丈夫」では、だめなんです。絶対大丈夫にしなければ、病院という使命を守ることは出来ないんです。
実際に、被災地にある災害拠点病院22箇所は、ほぼ全滅です。
現在は、被災地以外の災害拠点病院が中心となって、被災地の重症患者を受け入れています。被災地以外の病院は、被災地の重症患者と共に自病院周辺の患者も見なければいけない状況なんです。
今日もくりこが働いている病院では、輪番停電があり、外来患者の受診が大幅に制限されました。
受付では、病院の体制に不満を爆発した方も居たと聞きました。正直、悲しい出来事です。
明日は、通常の外来がされるのに・・・。ずっと外来受診の制限をしているわけではないのにと。
大いに、そのようなクレームを言う人は、生命の危機には瀕していませんが。
本当に生命の危機にさらされている患者さんを病院は見捨てません。
被災地では、従来では助けらた患者さんも助けられない現実がありましたが、被災地以外では、そのようなことは起きていません。
みなさんに仕事があり、生活があることは我々も重々理解しています。
でも、命をあずかる場所である以上、多分大丈夫では命は守れません。
だから、外来受診を制限する必要があるんです。病院側も何も備えをしていない訳ではないんです。
文句を言いたくなる気持ちも分かりますが、我々も好きで制限をしているわけではないですし、やむを無くギリギリの線を歩くしかない状況もあるわけです。
これは、どこの病院も同じです。同じ思いです。
一般市民の皆さんには、そこはぜひ理解していただきたいと思います。
病院に来られるからには、どこか不調なのは理解しています。でも、病院は万能施設ではありません。出来ることには限界があります。
大きな病院であれば大丈夫と殺到されては、病院はパンクします。
どうぞ、風邪など軽症の方は開業医をご利用ください。大きな総合病院は、開業医で対応が難しい患者さんは、責任を持って診察します。
こういう時だからこそ、一人一人が冷静に判断していただきたいと思います。
これは、自分だけでなく、日本で働く多くの医療者のお願いでもあります。
どうぞ、ご理解ください。よろしくお願いします。
かたのくりこ
Posted at 2011/03/17 01:09:53 | |
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医療問題 | 日記
2009年02月02日
ミルクシーフードヌードルが以外にミルクっぽくて、とほほな感じのかたのくりこです。おはようございます。
さて、今、実はお薬業界がにわかに騒がしくなっています。
それは、市販薬の販売方法が変わるとのこと。
日本では、薬を売るにもルールがあります。これが薬事法。
日本には、大きく分けて3つの薬の分類があります。
一つは処方薬。つまり、医師の処方箋がないと貰えない薬。
二つ目は、市販医薬品。これは、誰でも買えますが、薬剤師の居る薬局でないと買えない薬。
3つ目は医薬部外品。栄養ドリンクとかハンドクリームとか。コンビにでも買えます。
で、今問題になっているのが、2つ目の市販医薬品。実は、今までの薬事法では通信販売や通販でも買えました。
これを禁止する法改正があったんです。
この背景には、市販医薬品が昔に比べ多くの薬品が出ていること、今まで処方薬であった薬が市販薬として出回っていることにあります。
つまり、副作用の事故が実は多いんですね。
本来、市販医薬品は薬剤師の指導の下、販売することが原則です。でも、実際は消費者が自由に選らんで買うことが可能。
病院にいくまでもなく、市販薬を飲んで様子を見ようとだらだたとのみ続けたことにより症状が悪化したり、副作用が出てしまったりしていたわけです。
これに、厚生労働省が待ったをかけたわけですね。
また、いわゆる「秘伝薬」といわれる薬なんかもこの対象になるわけです。よく地方などには、歴史のある薬屋さんが作っている「○○薬」みたいな物がありますよね。
これも、ほとんどが通販に頼っているのが実情。普通の薬局なんかには売ってませんからね。
通販で買えなくなると困ると言っている人たちは、障害者の方々や小さな子どもを抱える主婦などとのこと。
また、秘伝薬を愛用している人たちも反対しています。
今回の薬事法改正は、意見が真っ二つです。
と、ここでナースくりこの意見。
市販薬は、手軽に購入することが出来、使いようによってはとても便利です。
でも、手軽がゆえに問題があるのも事実。
市販薬=怖くないという認識が多いのも事実なんですね。
処方薬だろうが市販薬だろうが、薬は薬。正しく使わないととても怖いものです。
病気を治す「作用」があるということは、逆に悪い影響を及ぼす「副作用」が必ずあるわけです。この副作用が本当に怖い。
これを知っているか知らないかで、その後の対応が大きく異なります。それを指導するのが薬剤師の役目なのです。
そう考えると、薬を通販で買うことはとても怖いこと。自己責任と言ってしまえばそれまでですが、事故を未然に防がなければいけないこともとても大切なことなんです。
なので、くりこは市販薬を使用するときは、必ず「注意書」を読みます。そこには、きちんとその点がかかれていますからね。
で、結論としては、市販薬の通販は、原則禁止すべきと。
ただ、実際には通販購入が必要な人たちも居るのは事実。
なので、この点は条件付にすべきかと思います。
たとえば、医師や薬剤師が許可した人に限って通販を許可するとか、その辺の妥協点は見出す必要はあるでしょう。
今まで、普通に買えたものが、突如として買えないというのはあまりにも唐突過ぎると言えば唐突ですから。
ただ、大切なのは市販薬でも怖い副作用が出るということを消費者が理解することだと。
みなさんは、どう思いますか?
Posted at 2009/02/02 04:32:22 | |
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医療問題 | 日記
2008年10月27日
最近、胃の調子がすこぶる悪いかたのくりこです。
先日、脳出血で無くなった妊婦さんのご主人が厚生労働省で記者会見を開きました。
これを読んで、涙が出ました。
「妻の死をきっかけに赤ちゃんが安心して産める社会を作ってほしい」
夫として父として、本当は怒りのやり場をどこに向けたらいいのか分からないはずだったでしょう。
このような気持ちにさせたのはいったい何だったのでしょうか。
現場の医師や看護師・救急隊の人たちは、本当に一生懸命にやっていると思います。マスコミで取り上げられていることは、決して東京都だけの問題ではなく、日本全国で起こっている事実です。しかし、それは現場レベルの医師・看護師・救急隊の問題ではありません。それを如何にも現場レベルの人間がどうであったか、誰が悪かったのかのような表現。いったい、なんなんでしょうか。
こんな報道ばかりしていたら、日本の医療者はみんな辞めてしまいますよ。
しまいには、厚生労働大臣と都知事の責任になすりあいのような発言。
あきれて、何もいえませんよ。
このご主人の言葉を良くかみ締めてください、大臣・都知事!
医者が足りない?看護師が足りない?
そんなこと、今更な問題ではないでしょ。
うわものばかり立派にして、肝心の医師・看護師の思い、患者・家族の思いをないがしろにしてきたのは誰ですか?
現場の医療者ですか?救急隊ですか?違いますよね。くだらん論議をしている「先生方」でしょうが!
そして、マスコミの皆さん。論点、間違っていませんか?
どれだけ日本の医療を理解していますか?
病院は無限ではありませんよ。ベッドが足りない現実をご存知ですか?
入院を受け入れたくても受け入れる事が出来ない病院の現実をご存知ですか?
どれだけ現場レベルの医療者が苦労して、患者を治療しているかご存知ですか?
不眠不休で働いている医師や救急隊がどれだけいるかご存知ですか?
「たらいまわし」を報道するのではなく、「これだけがんばっているのに受け入れられない現場」を報道したマスコミがありますか?
問題は、誰が悪かったのではなく、何が必要だったのかなんですよ!
この妊婦さんのご主人は、それを訴えているのですよ!
先生方がきちんとこのご主人の訴えに、耳を傾け、「約束」を誓ってくれる事を強く望んでいます。
Posted at 2008/10/27 22:56:16 | |
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医療問題 | 日記
2008年07月20日
今回のオフにいけなくて、いじけているかたのくりこです。こんばんは。
いやはや、昨日は暑かったです。なつ~ですねぇ。
全国でも死者が出るほど熱中症患者が多発しました。
くりこの病院でも例外ではなく、多かったです。
熱中症は、屋外だけなく屋内でも起こります。
熱中症は、簡単に言ってしまえば、体温が室温や気温、日光により急激に上昇し、発汗などにより熱を放出出来なくなった状態を言います。
軽度の熱中症は、頭痛・嘔吐・倦怠感(だるさ)・気分不快・めまいなどですが、重度になると、けいれんや意識障害、臓器不全、時には心停止も起こります。
そうなると、点滴などでは対応しきれず、時には人工透析も必要になることがあるほど怖い状態なのです。
予防法としては、以下の通りです。
30度を超える炎天下での運動は極力避ける。特に運動時には水分補給と塩分補給を十分に行うこと。気分不快を感じたら、無理をさせずに直ぐに涼しく直射日光を避けた場所で休息を取らせることです。
水分補給は頻繁に言われていますが、塩分補給は以外に知られていないのが現状です。
運動などでは、発汗が著しくなります。発汗をするということは、水分と一緒に塩分を含むミネラル分が体から失われます。
人間は、水分と同様に塩分に代表されるミネラル分が重要で、何れかが失われると急激に体力を消耗します。これが重度になると、体力にとどまらず臓器機能も失うことになるわけです。
水分補給としては、スポーツドリンクが理想です。お茶や水は、水分補給にはなりますが、ミネラル分は補給されません。なので、水分を頻繁に取っていても熱中症になってしまうわけです。
スポーツドリンクなど甘い飲み物が苦手な方は、ペットボトル500mlに対し、塩一つまみを入れて摂取してください。若干、塩味がしますが、極端に不味くはなりません。これだけで熱中症の予防としてただ水分を取るよりも数段効果が高くなります。
工事現場など屋外で仕事をされている方は、水分の傍らに塩をドカッと置いて塩をなめながら仕事をしているぐらいですからね。
また、特にお子さんなどは大人に比べ、熱に耐えられる限度が極端に低いとお考えください。大人が大丈夫でも子どもにとっては、地獄な事は少なくないのです。
水分を取りすぎるとバテルなんていうのは、一昔前のただのいじめです。
とにかく、水分補給と塩分補給はしっかりとさせてあげてください。
そして、運動の後は涼しいところで十分な休息を取らせてあげてください。
医療現場からのお願いでした。
Posted at 2008/07/20 04:27:07 | |
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医療問題 | 日記
2008年06月24日
きょう、パーテンションで指をざっくり切ったかたのくりこです。
キーボードが打ちづらい・・・。
さて、スカルさんの救急車の記事に関連して、トリアージということをすこし書いてみようと思います。
先日の秋葉原の通り魔事件でもトリアージという言葉が出てきていました。
トリアージという言葉の由来は、フランス語の「triage(選別)」から来ています。医療現場では、重傷度に応じた診察・治療の優先順位判断とでも言えばよいのでしょう。
元々、トリアージとは戦地や災害において、多数の負傷者が出た場合、治療をする傷病者の順序を決める目的として使われ始めました。最近では、患者が殺到する救急外来でも、トリアージが行われています。
患者の状態は、死亡・重症・中等症・軽症とに分けられます。
病院に運ばれた時点で、生命兆候が無い=死亡している患者は、治療の優先度的には、残念ですが第一優先患者にはなりません。
重症患者は一刻を争うため、救急においては第一優先患者として治療にあたります。これは、状態的に今すぐ治療を施さないと死に直結することを意味しており、救急車で運ばれた=重症ではありません。
救急外来に訪れる患者の多くは、治療を必要とします。しかし、緊急性が無い場合が多いのです。
重症=緊急性があるという訳ではなく、例えば骨折などは重傷ですが、生命危機になるような他の外傷等が無い限りは、緊急性は少ないと判断され、中等症と判断します。
心筋梗塞や脳出血などは、重症であり、今すぐ治療をしなければ死に直結します。これが緊急性ありとなるわけです。
ことに災害時においては、トリアージを更にシビアに行わなければ、限りある医療資器材で患者を救命することはできません。
救急外来でも同様で、来院した患者や救急車で搬送された患者を含め、状態を判断し、緊急性がある重症なのか、緊急性の無い中等症なのか、時間的猶予がある軽症なのかを判断し、治療にあたります。そうしなければ、本当に生命危機にある患者の治療が手遅れになる可能性があるからです。
一般の方には、その部分が非常に分かりにくい部分もあり、誤解を招いてしまっている状況があるのだと思います。
救急外来は、通常の外来とは異なり、この緊急性のある重症患者を最優先で診るための外来です。待たせてしまうことが、決して良いこととは思ってはいませんが、重症患者が運ばれてきた以上、そちらの患者を優先しなければいけないのです。
夜間の突然の発熱など、特にお子さんの病気は多くの親御さんが心配なため、来院されます。ご心配な気持ちも十分理解しています。
しかし、通常の外来では順番に診察を行うことと同じであり、特に夜間の救急外来は、先にも書いたように重症で緊急性のある患者が優先されるため、長時間の待ち時間になってしまう。これは、やむを得ない事実なのです。
なので、我々は、発熱などの軽症は、休日急患診療所など軽症患者を診察できる一次救急医療機関への受診を勧めているわけです。闇雲に自分たちが楽をしたい、患者が殺到すると大変だからという訳ではないことを、是非ご理解いただきたいと思います。
Posted at 2008/06/24 00:57:15 | |
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医療問題 | 日記