2017年01月16日
ゴルフR一日試乗
先日、ゴルフ7CLの一日試乗を終えたあと、担当の方から実に感銘深い話を聞くことが出来た。その一つは私が所有するゴルフ6を洗車していた際、リアハッチとボディの間にあるゴム部品が欠落していたのを見つけた事に起因している。その部品は価格もそれなりであった事から何か意図があるのかも知れないと、ずっと気になっていた。だが正確にはそれは、ゴム部分とボディの間にある複雑な形状の部品であった。
その部品の意図するものを、担当の方に質問してみると、私が辿り着いた答えと同じものが返ってきたが、それを上回るこんな答えも返ってきた、その幾つかを紹介しよう。『ええ、そうなんです。その部品は万が一お客様が事故に遭われた際、衝撃を吸収する作りになっており、ボディとハッチが喰いこみ合って開かなくなるのを防止す為、あのような形になっています』と。その上でさらにこんなお話をお聞きすることが出来た。『ですが現実は厳しいです。我々はあらゆるお客様のニーズにお応えする為、実に様々な付加価値を追求して行かなければ、お選び頂く事は出来ないのです』とも。そんな対話の中で私は、確たる安全哲学を持っていながらも信頼を大きく失う事を招き、それを回復する為、進み続けるVW社の今とこれからを私なりに感じることが出来た。
そこでゴルフRの一日試乗である。
この試乗記を書くのに、この数日間何とか気持ちを落ち着かせるため、仕事を挟み込んではボーっと過ごしてきた。出来る限り、ひいき無しにそして正確に書きたかった事から、このタイミングでのアップとなった。
結果から言うと、このクルマはエンジニアの技術の結晶なんだと、そう感じた。このクルマを作るのに携わった、そのすべてのエンジニア、人、モノ。それらを、最適に極限まで追求した技術の結晶。その宝石のようなこのクルマにほぼ一日、自由に試乗することが出来、いっときでもオーナー気分を味わう機会を与えて下さった事に感謝である。
そのクルマは派手さは無いものの、ベーシックモデルとは少し違った外観を、静かなオーラを身にまとい、その場に佇んでいた。秘めたる闘志、さしわけ羊の皮を被った狼とでも言ったところか。
担当の方からキーを渡されハッと我に返る。
ラピスブルーMのボディカラー故か、見慣れたはずのボディラインが実は複雑な線や面の集合体である事に改めて気が付く。リアフェンダーとキャビンへの絞り込みが特に美しいと感じた。
2016年1/11 晴天 ゴルフR 2016モデル 走行約500キロ ラピスブルーM タイヤBS S-01 9部山
天井まで黒で統一されたインテリアがベーシックモデルのそれとは違った印象を与え、加えて320kmまで刻まれたアナログメーターが、こいつは地上の戦闘機である事を教えてくれる。
エンジンを始動してみる。スタートボタンを押すや、キュキュ、ブフォッ!!と低い唸り声と共にタコメーターの針がギュインと跳ね上がる。少し身じろぎしながら、フルレザーのパワーシートをいつもよりタイトなポジションに合わせたい気分になる。さぁ、走り出してみよう。
ボロロロロォーン…と、言う割れのある低い音質で市街地を駆け抜ける。ベーシックモデルには無い心地よい音振が,逆に特別感を感じるものになっている。ここでの乗り心地はさすがに硬く感じる。が、拾っても一発で収束する為、揺さぶられる事は無い。バイパスを通過する速度域になると、快適さは一層増していく。スパルタンな乗り心地を想像していたが、そんな事はなく日常使用に耐えうるタフさを併せ持つ限りない懐の深さを感じることが出来る。ふとメーターに目をやると、もうこんなスピードが出ている事に気が付く、そんな具合だ。
今回は市街地を抜け、バイパスを通過し、内房なぎさラインから房総スカイラインを抜けるコース。先日の積雪で箱根ターンパイクの走行が厳しく思われたため、こちらを選んだ。
シフトレバーをSレンジにはたき込み、アクセルペダルをベタリ!と踏み込む。それまで多少割れのあった音質は一気に雑味が消え、クァーン!とまるで、すべての抵抗マスを無くしたように中心に向かって、滑らかとも言えるような金切り声をあげていく。そこにガソリンの一滴も無駄にせず最高且つ、最適なパワーを絞り出し、果てしなく回っていくようだ。と、同時にまるで超強力な磁石に、地中奥深くから引っ張られるかのように、だがしかし実に滑らかに加速して行く。そこに恐怖感は全く無かった。自分が操作ミスしなければ絶対に死なないであろう信頼感がこの精密機械の塊にはある。コーナリングは荷重移動と言うよりまるでワープのようだた。ブレーキもペダル剛性と共に頼もしいものであったかつてポルシェボクスターや911で感じた、あの4輪が沈み込むような感覚を久しぶりに感じた。
がっしりとしたステアリングのインフォメーションも素晴らしい。
決してあり得えない事でだが、自分の血がこのクルマに通い、体の一部になったような錯覚さえ覚える一体感を感じ、ディーラーへの帰り道で感極まった。正直、クルマを返したくない衝動にかられた。お借りする条件であるガス満返しも、オーナー気分を味わえる瞬間に一役買っている気がした。
ゴルフR。なんと恐ろしいクルマか。けれどそれは乗り手を選ぶような危うさは無かったように思える。むしろ日常から遠距離ツアラーと色んなシチュエーションで活躍でき、且つストレスが溜まるような事の無い、オールラウンダーのように感じた。周囲に気を使わせ、驚かせるような事もほとんど無い、そんな事も付け加えるべきだろう。きっとそんなものを求めるオーナーの元に、幸せに嫁いでいくのだろうと。そんな想いを馳せながらこの試乗記をまとめてみた。
最後まで読んで下さり、ありがとうございました!
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Posted at
2017/01/16 21:09:30
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