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2014年09月03日

これぞ、クラスレス・カー。カローラの歴史的快挙に脱帽する

これぞ、クラスレス・カー。カローラの歴史的快挙に脱帽する §日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

新しいトヨタのカローラ/スプリンターは、本年の問題作である。

90年代へ向けてのジャストフィット商品として、正しすぎるほどに正しいとも言えるし、これはウルトラ級の時代錯誤だと思えないこともない。……てな具合に思いが揺れてしまうのだ、ほんとに。

たとえば、これは細かいところにカネと手間がかかっているクルマ。内装の見た目ばかりでなく、フラッシュサーフェス化やらサブフレームの設定やら静粛化やら、ヤンなるくらいにていねいで、実にまったく「大衆車」ではない。

もちろん、これこそが新カローラ/スプリンターの意図したもので、「新しい車格の創造」「クラスを超えた世界のハイクォリティ車」がそのテーマなのだ。試作を重ねつつ比べていたのは、旧型や同級他社モデルではなく、マークⅡやクラウンだったというのだから恐れ入る。

エンジンも、主力となる1500の、つまり普通のカローラ用のユニットとして「5A型」という新機種を開発。これがツインカム4バルブで、しかもツインカムをスポーツ性に使うんじゃなく、実用そのもののために用いる(高効率 → 省燃費)というゼイタクさも、ただごとではない。そして、それでいて価格は大衆車レベルのままなのだ。

全世界で数百万台をさばこうとするスケールメリットゆえのなし得るワザとはいうものの、これはオキテ破りの「大衆車」である。「クラスレス・カー」とは、西独某小型車が盛んに用いるフレーズであるけれど、カローラは、より日本人にわかりやすいかたちでクラスを超えたというわけだ。このクルマの出現で食われるのは? あるトヨタ関係者は、他社モデルの名をいくつか挙げた後、「そして、カリーナ、コロナ」と小声で付け加えた。

積極的かつ肯定的に、この新型車を捉え直してみると、どうなるだろう。たとえば、ぼくらは「小さな高級車」が欲しくはなかったか? クルマのサイズは過度に大きい必要はない。しかし、いかにもチャチな、またコドモだましのディテールやパッケージングは、日常使用においてやっぱり不満が残る。聞けば、かの英国には、ヴァンデン・プラというコンパクトな高級車がかつてあったそうな……。

そのような少量生産の稀少車と比べてはいけないだろうか? しかし、超・大量生産車で同じような思想が実現されているとしたら、それこそニッポン自動車産業の成し得た快挙ではないのか? 

また、既にして「大衆」は存在せず、日本全国「中流」だらけ。いわば、庶民の底上げがなされている現在、カローラ・サイズのクルマでもきっちりと“身だしなみ”を整えて当たり前。もはや、単なるジーンズでは誰も穿かない……という認識も、これまた正しい。そして“ジーンズ・カー”なら、カローラより小さいクラスに数限りないアイテムがある。これもまた、事実である。

追いつき追い越せ、いつかは上級車に。このようなニッポン市場に、作り手として対応するなら、「上」での技術や仕上げ、パッケージングを、さらに「下」まで降ろすべし。これまた、正しい──もし、可能ならば。(カローラなら)スケールメリットでできる? おお、それは素晴らしい! 

豊かな時代のコンパクト・カーとして、カローラ/スプリンターのスタンスは見事極まるものだ。走りの洗練度も、パッケージングに勝るとも劣らず、気持ちよく走れる仕上がりであることも特筆したい。

カローラは、やはり日本市場で売りたいクルマなのだと、主査の斎藤明彦氏は明言した。そして「日本のクルマの新しい物語が始まる」と、広告は言う。ここには、旧型の、欧州車風と言ってもいい造型と国際性が、イマイチ日本市場ではウケなかった反省もこめられているという。その意味では、カローラは「日本」へ回帰したのだ。

ただ、大筋で正しいと見えるニッポン観だが、ひとつブキミな要素をカローラは見逃したかもしれない。あるいは「豊かさ」の程度を誤認したかもしれない。(つまり、もっとカネモチなんだワ、いまは!)

トヨタの言う、クラスを超えたクォリティを求める人々は、クラスを自ら超えて、もう既にマークⅡやクラウンという彼方に去っているのではないか。そして、100万円のクルマは100万円らしい方がいい。要するに、ソアラの意味を失わせないでもらいたい。このような今日のネオ・サベツ主義的潮流も、カローラの視界外であったように思う。

良いクルマが、どんどん安くなっていく! “民主主義者”のひとりとして、このようにニュー・カローラを支持するが、このフクザツな時代に、奇妙な反発の風がこのクルマを取り巻く。そんな懸念も、なしとしない。もし、このクルマがカローラという名でなかったら『カー・オブ・ザ・イヤー』だというジョークには、素直に笑えない妙なリアリティがあるのだ。

(1987/06/16)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
カローラ/スプリンター(87年5月~  )
◆このクルマの「作り込み」(トヨタの用語)はたしかに凄い。ていねい極まりない。この達成のレベルは絶対に軽視できない。あのトヨタ・セルシオに初めて試乗した時、ぼくがどのトヨタ車を想起したかというと、何を隠そうカローラだった。セルシオは「大きなカローラ」だったと言うとヒンシュクを買いそうだが、でも、トヨタ・マンはむしろ静かに微笑むのではないか。カローラという「大衆車」をここまで作り込めるメーカーだからこそ、当然のように、セルシオが出現するのだ。
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Posted at 2014/09/03 09:35:00

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