
§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection
ニュー・トゥデイの内容豊富なマイナーチェンジは、ホンダというメーカーのフレキシビリティと、エンジン製作陣の恐るべき“クイック・サービス”ぶりが発揮された好例だろう。この作り手のパワーについては、もう素直に認めざるを得ないんじゃないかと、感心しつつ、そう思う。
ホンダのデザイナーっていうのは、かなり自由な線を引いても、それをハード屋さんの方が可能にしてくれるから、いいですねえ! ──こう、同社のデザイン・スタッフのひとりに言ったら、彼は一瞬だけ複雑な表情を見せた後でニコッとし、「そう、ですね」と応じた後で、次のように付け加えた。「でも、エンジン屋だけじゃないですよ。スタッフ全員で、こうしよう、こういうクルマに作ろうとしてやってるんで……」
……というわけで、デザイナーだけがワガママを通してるんじゃないそうだが、でも他社の場合、ニューモデルの造型に関して、まず使用するエンジンが決定していて、それにデザインを合わせなければならないという事例は少なくないと聞く。つまり、手持ちのハードが絶対的に優先されるクルマの作り方をすることが多いのだ。だが、ホンダは違う。
そもそもトゥデイというクルマは、ごく短いハナ先と広いキャビン、長いルーフという、居住性の方向に極端にツメた造型でスタートしている。そのような、どこにエンジンがあるの?……というカタチを可能にするために、水平2気筒、エンジンの下にデフを配するという“二階建て”パワーユニットとしてデビューした。
その時点で、エンジンルームは既にギリギリであり、大胆ながらまとまりのあるデザインの見事さはともかく、他車に対してのパワー的な物足りなさは、このデザインを許容する限り、やむを得ないのではなかろうか。……と、そういうクルマであったわけです。(注1)
そいつが、ボディワークはそのままに、ニュー・エンジンを積んで来た。それも、3気筒。ついでに3速AT、得意のPGM-FIまでも一緒に。これがまた、見事にボンネットの中に収まっているんですねえ!
「軽」のパワーウォーズには参加しないと言いつつも、4バルブ(1カムシャフト)×3の12バルブ・エンジンで、もうトロさはカケラもない。足まわりも負けていず、バランスの取れたいい走りをする。室内も、より落ち着いて、オトナである。
軽自動車いえども遅くてはイカン!という日本的ニーズに対してはハードで応え、軽自動車であるからケバくてもいい(?)という一部のニーズには、HONDAとしてピシャリと拒否する。ニュー・トゥデイは、そんな「軽」でありましょう。さて、ゴーカなセルボと、そしてこのトゥデイと──。女性たちは果たして、どちらを選ぶのか?
(1988/03/22)
○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
トゥデイ(88年2月~ )
◆「あ、※※が来た!」と車名でいわれるのではなく、「あ、ホンダが来た!」と言われたい。こういう意見を、ぼくはホンダのデザイナーから聞いた。なるほど、メーカーとしての「ID」であろう、それを決めたいのであろう。ところで、欧州メーカーが、ひと目でそれとわかる「ID」の主張を“大・中・小”みたいな感じでやると、むしろ歓迎(称賛)されるのに、日本のホンダや、あるいはトヨタがそれをやると、「金太郎飴」だというような不満と非難の声が上がることが多いのは、何故なのだろうか?
○注1:このコラム集でも、トゥデイは登場時に採り上げています。「80年代こんなコラムを」のカテゴリーをご参照ください。
https://minkara.carview.co.jp/userid/2106389/blog/c919223/p11/
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80年代こんなコラムを | 日記
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2014/10/07 12:25:13