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2015年02月06日

軽量車の時代は去りつつあるのか? カルタス・エスティームの今日性

軽量車の時代は去りつつあるのか? カルタス・エスティームの今日性 §日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

「軽量車」であることの快感と不安……。コンパクトカー・クラスにスズキが送り出した小さなセダン、カルタス・エスティームの良所と不満は、すべて、この「軽量車」というキーワードに帰することができるだろう。

この「軽量車」」という言い方には、若干の説明が要るかもしれない。たとえば、これの反対語は、単純な「重量車」ではないからだ。

クルマというものを作るにあたって、パワー・ウェイト・レシオなる比較の方法もあることであり、車体は可能な限り軽量であればいいのかというと、今日では、どうもそうではない。敢えて過激な表現を使えば、クルマはむしろ、重ければ重いほどいい! 現在はそういう時代である。

ボディの剛性という要素を極端に重視する、西ドイツ的なクルマ作りが、この国のメーカーにも波及して、はや十余年……(1974年のVWゴルフを、その端緒とすれば)。モノコック・ボディの各所に強固な補強部材を配し、コンピュータによる解析も加えて、とにかく揺るがず、キシまず、歪まぬボディを構成し、それにエンジンなどを載せる。これが新時代の「重量車」のコンセプトである。

補強部材とは、要するに付加物であって、強くすればするほど、重量は増す。ボディ部分がこうして重くならざるを得ないとすれば、ボディ以外の、たとえばエンジンをアルミ化したり、新素材の軽量パーツを多用したりして、トータルのクルマとしてはさほど重くならないように努力する。こういうクルマ作りである。

たとえば、マツダのファミリア、あるいはトヨタのカローラが、その代表例だ。ファミリアは先代から既にこの手法を用いている最右翼で、カローラの場合は、ボディ全体の剛性というよりも、足まわり付近に剛性の集中対策をして効果を上げている。サスペンションをモノコック・ボディに付けるためのサブフレームを持つのだ。

こういう「重量車」がどういうクルマになるのかというと、まず、足がしっかりする。サスペンションが、その所定の性能を発揮できる。バネをくっつけている“支え”ががっしりしているから……という理屈だ。

車体が「硬い」ということは、キシミなどの余計な物音がせず、強固なカプセル内に人が収まることになって、静粛性も向上する。しっかり感、安心感も増す。走りの向上のみならず、快適性についても、上級車にも比肩すべきというレベルの「大衆車」が、こうして出現するわけだ。

ただ、「重量車」の良いところばかり並べてきたが、もちろん弱点もある。重いものをすばやく動かすのは大変だというシンプルな物理学のロジックは、当然の如く有効で、エンジンや足がその分頑張らねばならぬ。そうでないと、トロいクルマしかできない。

またクルマとは、ハード・コストの集成であるとすれば、こういうクルマは高価にならざるを得ないはずで、「大衆車」としては不利であろう。組み付けのコストというのもあるだろうし。

──というのが一般論である。だが、ここで実態を記せば、ファミリアにしてもカローラにしても、トロくもなければ、高くもない。ジャパニーズ・マジックここにありで、常識のカベは事実によって、既に超えられてしまった。……というわけで、カルタス・エスティーム軽量車論には、これだけの背景がある。そういう時世に生まれたニューモデルだということである。

エスティームは、まず、ひどく“薄着”だ。印象として、クルマの動きに“重さ”がない。話題としてきた「重量車」たちが、クルマという一種の“ヨロイ”を着ている感じだとするなら、エスティームは大気や路面に対して、ぐっとダイレクトな接触をする。そういう感触と走りである。

目覚ましいパワーを持つエンジンではないのだが、軽い車重は俊敏なレスポンスを生む。もちろん、ファミリー・セダンとしてはという話だが、これは十分に軽快なクルマでもある。「軽量車」とはパワーと重量の関係において、このような循環をする。

一方、“薄着”であることの辛さが出て来るのは、やっぱり「音」の面である。エンジン・ノイズ、ロード・ノイズは室内に容赦なく侵入し、足やステアリング系の剛性感もあるとは言えない。ふと思い出すのは、ヨーロッパの小さくて安価なクルマ(それもフランスあたり)との(感覚としての)共通性で、そういえばエスティームのデザインは、彼の地によくあるチープ&ファンクショナルなものであった。

そしてエスティームは、事実として安い。価格はエアコンを含んでのものであり(XG、XS)作り手側としても、この面での“戦闘力”には十分に意を払ったと語っている。“安かろう、軽かろう”──これがエスティームである。近頃稀に見る「国産車」ということはできるし、そして、これもまた、クルマのひとつの作り方である。

カローラだけが日本車の「今日」ではない。シンプルで好デザインのパッケージング(造型はスズキによる)の“ニッポン離れ”ぶりも含めて、カルタス・エスティームを以上のように評したい。

……それにしても、改めて実感させられるのはカローラという存在の“超クラス性”であり、ひいてはニッポン・マーケットの超・先進性である。ことクルマに関しては、ぼくらは、ほんとに凄い国に住んでいるのだ! 

(1989/07/18)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
カルタス・エスティーム(89年6月~  )
◆「軽量車」でクルマは十分であるという地域は、世界中であまた存在すると思う。エスティームは、これでいいのだ。西ドイツと日本だけが、クルマのマーケットなのではない。……とはいうものの、この国において、たとえば快適性という基準を置いた場合には、このようなクルマの商品性はやはり弱いだろう。「軽量車」作りでは、ホンダはその一方の雄であったが、89年デビューのホンダ車はすべて、しっかりしたボディを持ち“薄着”ではなくなって、静粛性も向上したことを付記しておく。
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Posted at 2015/02/06 15:26:55

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