
CX-3のエンジンは、ディーゼル一本に設定された。これも戦略としておもしろいと思う。海外向けとしては、2リッターのガソリン・エンジン搭載のバージョンがあるが、対国内では、ディーゼルの“プレミアム感”を強調したいと、開発担当の冨山主査は洩らした。部品の付加などでどうしても高価になるディーゼル仕様だが、そのプライスと、そしてディーゼル特有のトルク、そこからの新感覚のドライバビリティ。こうした性能を“上級感”としてアピールするということだろう。
21世紀のディーゼル・エンジンの進化は、ついに、高いけど(あるいは高価だから)、これはいいモノなんだというところまで来たということか。そういえば、かつては、ディーゼル仕様を選ぶと車両価格が上がってしまうが、でも使用燃料(軽油)はガソリンより安価だ。では、どのくらい走れば“ペイする”か。それも含んで、さあどっちだ?……なんてことをやっていたのを思い出す。
そして、ガソリン車を国内では売らないことにしたためか、このディーゼルには、この種のエンジンが発する「カラカラ音」を消そうという、画期的なシステムまで盛り込まれている(オプション)。その「音」がエンジン内部の共振であると突き止めたマツダは、ダンパー付きのピストン・ピンを採用し、その共振音を減少させたというのだ(名付けて、ナチュラル・サウンド・スムーザー)。
「コモンレール・システム」(1997年)を搭載して以後の“新世代ディーゼル”は、基本的にかなり静かになっており、冷間始動時くらいしか“カラカラ音”は聞こえて来ないと、鈍感な(笑)私は思う。ただ、だからと言って、そこに安住しないのが日本のメーカー。今回このクルマが行なった「音」の対策は、技術的にはここまでやれるのだというニュースとして受け止めたい。
では、クルマに乗ってみよう。このクルマに採用された「600ミリ」のヒップポイントは、背筋あたりにストレスを起こすことなく、スッという感じで運転席に滑り込める。そして、走りだしてすぐに感じるのは、足のガッシリとした感じ。試みにステアリングを操作してみると、ほとんどロールすることなくノーズの向きが変わる。こういう設定の足では、しばしば、真っ直ぐに流している時の乗り心地が硬かったり、何となく突っ張ったような感じになることも多いが、このクルマにおいては、そういうことはない。跳ねるような感じも一切ないし、ドライバーとしては、ガッシリ感を受け止めつつ、気持ちよく走ることができる。
ただ、近年のマツダの足を知って、そして、このクルマと“下半身”が同じであるデミオの走行フィールを憶えていて、さらに、このクルマが「次の世代のスタンダード」をめざしていることなどを思い出すと、ちょっと不満も出て来る。
現状のCX-3の乗り味は、たとえば荒れた舗装を走行する際に、その“荒れ”をいちいち伝えてしまうものだ。また、走りながらの微妙なゴロゴロ感があり、それを消し切れていないようにも感じる。高速になれば、粗いサーフェスでもヌルッとクリアするような感じになるのかと期待したが、80~90㎞/h巡航といった領域でも、ゴロゴロ感はあまり変わらなかった。
……ということで、乗り味には“粗い”部分があるというか、もう少し滑らかさ、しなやかさがあれば、もっとイイのにと思う。まあ軽量のデミオと較べてはいけないのかもしれないが、ただ、このCX-3は「次世代ビークル」として、セダン系からの乗り換えも期待しているはず。そう考えると、現状のこの感じで、果たして、“セダン好き”をひきつけられるのか?
ただ、これは後に短時間乗ってみてわかったことだが、ホイール&タイヤが16インチのXDでは、そのゴロゴロ感は少なく、乗り心地にもしなやかさがあった。こうして見ると、XDツーリング系に装着の18インチタイヤが、この「硬さ」と微妙なゴロゴロ感を生んでいるかもしれない。
私の場合、こうした大径のホイール&タイヤがカッコいいとは、とくに思わないので、パーソナル・チョイスということなら、以上のような意味で18インチ仕様はパスする。チョイスは、16インチタイヤを履いたベーシックなXDだ。この仕様の方が室内の色味もダーク一辺倒で統一されているし、ダッシュパネルに貼られた白いレザーの飾りが、左ミラーに映り込むようなこともない。また、このベーシック・グレードでは、例のナチュラル・サウンド・スムーザーはオプションでも付かないが、でも、そこまでの「静かさ」をディーゼルには(私は)求めない。
(タイトルフォトは、18インチ仕様)
(つづく)
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New Car ジャーナル | 日記
Posted at
2015/03/17 07:08:27