
「5ドア問題」というのは、長く日本のクルマ界でのフシギとされてきた。なぜ、日本ではこれが売れないのだろう?というわけだ。4ドアのセダン、ワゴン、商用車としてのバン(ライトバン)。そうしたラインナップに「5ドア」を加えようとするのだが、どうしても市場に拒否されてしまう。
ちょっと意外かもしれないが、このような日本の市場特性に最後までチャレンジしつづけたのはトヨタだった。それもカローラやコロナという量販機種で、そのトライを行なっていた。
このスプリンター・シエロは、欧州では単に「カローラ」として売られたモデルだ。いわば、彼の地における実用大衆車のスタンダード。そして“セダン・改”風の5枚ドア仕様ではなく、スタイリング的にも、はっきりと主張を持たせた「5ドア」として作られていた。これまでの5ドアは、4ドアとあんまり違わない格好だったからダメだったのではないか? そんな意欲とともに、日本市場に向けてトヨタが送り出したひそかな自信作だったのだが、しかし、やはりこれもマイナーに終わった。
いま、つまりワゴン・タイプへの関心も高い「RV時代」の今日に、このシエロがデビューしていたら? これは、ちょっとおもしろい《歴史のイフ》だと思う。トヨタが懸命にレガシィにぶつけているカルディアより、はるかに“色気”があるし、ずっとスタイリッシュでもある。
そして、このシエロがあまり売れなかったせいだろうか、トヨタの「5ドア」へのトライは、このモデルでついに終わってしまう。これ以後、日本市場向けのカローラ・シリーズには、「5ドア」に代わって、セレス/マリノというスペシャリティ系(?)が導入されて、今日に至っている。
(「カーセンサー」誌、1995年。「昭和名車伝」より加筆)
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2015/05/24 09:34:56