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2016年02月27日

【クルマ史を愉しむ】vol.10 『自動車の世紀』を読む 《03》

○19世紀のヨーロッパが「経験」したこと
特異な時代を経た19世紀のヨーロッパ。その少し前のフランスは、絶対的存在と信じられてきた王制を“廃棄”した(フランス民衆は国王とその妻を断頭台へ送った)。1859年にダーウィンの「種の起源」出版、新しい見方として「進化論」が呈示された。ニーチェは「神は死んだ」と語り、フランスの哲学者ヴォルテールは「もし神がなければ、それを発明する必要がある」と述べた。

「19世紀末、急速な進歩を遂げた科学技術は、神に十分代わりうる重厚な存在感をもっていた」「自動車は(略)路上において、神にも比すべき“生殺与奪”の権をもった、まばゆいばかりの存在だった」(著者)

○世界一のフランス
自動車はフランスで急速に普及。社会の上層部(富裕層)が受け入れた。フランスは1905年まで世界一の自動車生産国であり、そして1913年まで世界一の自動車輸出国だった。

○英国の悪法
1865:イギリス、「赤旗法」を施行。
馬車業者がロコモティブ(蒸気馬車)を締め出すための規制法。すべての蒸気車の速度を、郊外で時速4マイル(6.4キロ)、市街地では2マイル(3.2キロ)に制限した。また蒸気車には乗務員が三人必要で、そのうちの一人は赤旗を振ってクルマの前方55メートルで先導することを義務づけた。

1896:英国で(赤旗法からの)解放令。
速度制限が3トン以下の車両で時速19キロに引き上げられた。これを記念して「ロンドン~ブライトン・ラン」が開催され、その催しは今日でも行なわれている。(参加車は1904年以前に作られたものに限定)

1896:イギリス初のガソリン自動車メーカー、ディムラー社創立。
ドイツのダイムラー車をライセンス生産。

1903年に、英国の速度制限が時速32キロに上がった。この法規は1930年まで続いた。(注1)

○ポルシェの電気自動車
1875:フェルディナント・ポルシェ誕生。
子どもの頃から実験好き、18歳で発電機を自製したフェルディナントはウィーンで電気技術を学ぶ。電気は当時最先端の技術分野、ヘンリー・フォード、ヘンリー・ロイス(ロールス・ロイスの創始者)も電気技師としてスタートしている。

1900:ポルシェ、ウィーンの馬車メーカー、ローネルに招かれる。
ローネルで電気自動車の開発を行なう。前輪に電気モーターを装着したハブ・モーター方式の前輪駆動車。効率の高い駆動方式として、現在の電気自動車でもふたたび見直されている。

その電動“ローネル・ポルシェ”の優秀性を実証するため、レーシングタイプを製作。ポルシェは自身の操縦でヒルクライムに出場した。電気自動車としては異例の時速40キロをマーク。クルマの前部には“風切り板”が付いていて、エアロ的な手法が試みられていた。

○パリ万博
1889年にドイツのマイバッハは、馬車にエンジンを取り付けたのではない、はじめから自動車として設計された「シュタール・ラート・ワーゲン」を作った。

1900:パリ万博、開催。
この博覧会のハイライトは、最新の科学技術による機械や装置。定置原動機、電動コンベア、最新工作機械、エジソンのX線カメラ、機関銃、そして自動車。
ローネルも、ハブ・モーター駆動の電気シェーズ(=二人乗り二輪馬車の意味)を出品。設計はポルシェ。

○静粛な電気自動車、性能向上著しいガソリン車
当時のガソリン車は“騒音の塊”だった。静かな電気自動車は上流社会に愛好されたが、しかし、ガソリン車が急速に高性能化していく。
1901:ダイムラー、マイバッハ設計のメルセデス車を発表。
このクルマの最高速は100km/hを超えていた。

この頃ポルシェは、ガソリンエンジンで発電してハブ・モーターで駆動する「ミクステ」(混血=ハイブリッド)タイプを開発。

○ポルシェ、ダイムラー社へ移籍
1905年にアウストロ・ダイムラー社の技師長職が空いた。メルセデス車生みの親のひとり、役員のエミール・イェリネック(「メルセデス」はイェリネックの娘の名)がポルシェを後任として強く推薦、フェルディナントも同意した。

ポルシェ、アウストロ・ダイムラー社の技師長となる。
1907:ダイムラー、航空エンジンに進出。はじめは飛行船用。
1910:最初の飛行機用エンジンが完成。
1911:技師ポルシェ、純ガソリン車を設計。自らの操縦でトライアルに優勝。
1912:ポルシェ、空冷水平対向の航空エンジンを設計。
空冷・水平対向の4気筒、後のVW用エンジンの遠い祖先にあたる。

ポルシェはオーストリア陸軍のために、牽引車、車輪にモーターが付いた貨車など設計。車両は第一次大戦中のイタリア戦線で活躍した。(注2)

(つづく)

注1:この英国(ブリテン島)での速度制限を“回避”して、1907年に始まる二輪のTT(トゥーリスト・トロフィー)レースは、英連邦ながら別の“国家”であるマン島で開催された。
注2:歴史家エリック・エッカーマンは、第一次大戦時には、地上における機動力の主力は「馬」であり、多くの政治家や軍人は伝統的な戦争観から抜け出ることができなかったと、その著「自動車の世界史」で書いている。

(このシリーズは、折口透さんの快著『自動車の世紀』(岩波新書)を学習し引用しながら、クルマ史におけるさまざまなシーンを見ていきます)
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Posted at 2016/02/27 04:21:28

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