
シビック1200RS SB1(1974)
もし、1970年代前半のオイル・ショック(第一次石油危機・1973年)が無かったら、このモデルは、もっと華やかな生涯を送れたのではなかったか。ベース車からしてかなり俊敏だったシビックに加わった新バージョンだったが、デビュー当時はちょうど石油危機の真っ最中。日本中がいろいろな意味での“自粛”モードになっていて、そんな時に登場することになってしまったのが、この仕様(RS)だった。
「RS」というのは何、どういう意味ですか?……と世間様から問われることを想定したのか、メーカーは何と、それは「ロード・セイリング」ですという答えを用意していた。もちろん開発陣にとっては、そんな“ふやけた”意味合いの追加仕様ではなく、スピリットはハッキリ「モータースポーツ」。「R」はレーシングで、「S」はスポーツだったと、当時のスタッフは証言する。
ゆえに、エンジンはシリンダーヘッドを“全交換”してツインカムにする予定だったし、タイヤのサイズも上げて、さらにワイドにするというプランもあった。しかし、この点についても、当時の社会情勢が関与してきた。後付けオーバー・フェンダーと「暴走族」はリンクしている。これがその頃の“当局”の判断で、「RS」はタイヤのサイズアップというチューンを行なうことができなかった。
……「ロード・セイリング」という言葉の範囲内で作られた「RS」は、シビックより“ちょっとだけ速い”クルマとしてまとめるしかなかった。いろんな意味で中途半端なモデルになってしまったと開発陣は述懐するが、それでも、人気のシビックに加わった新バージョンとして注目され、レア物としてのポジショニングも得て、今日に至っている。
(ホリデーオートBG 2000年3月より加筆修整)
ブログ一覧 |
00年代こんなコラムを | 日記
Posted at
2016/08/30 04:43:39