
ステップバン VA型 (1972)
日本のメーカーでは、乗用車と商用車の開発部門はハッキリ分かれているのが通常だが、例外はあって、それがホンダである。二輪と四輪の開発は分かれている(はずだ)が、四輪車の開発は「クルマ」として一括され、他社のようなジャンル分けはされていないようだ。昨日スポーツカーやってたのが、今日はアクティ作ってる……とは、ホンダの社風を示す社内ジョークのひとつでもある。
そうした「柔軟な」社内風土が、他社にないようなモデルを生むことはもちろんあって、1960年代に同社が初めて作った「軽トラ」のTシリーズには、スポーツカーもビックリというDOHCエンジンが搭載されていた。このステップバンもまた、そうしたホンダが生んだ“レア機種”のひとつであるかもしれない。
さて、このクルマのフルネームは、ホンダ・ライフ・ステップバン。この名でわかるように、N360やZに続くホンダの軽乗用車として登場した「ライフ」(1971年に登場)をベースに、バン型のボディを架装したクルマだ。乗用車と共通の“下半身”でバンやワゴンも作るというのは、今日ではむしろ一般化した開発の手法だが、1970年代の初め頃はそうではなかった。
まあ、当時のホンダにしてみれば(純・商用車というべきアクティが登場するのは1977年のこと)、軽自動車の枠でバン&ワゴンを作ろうとすれば、乗用車のライフしか、その“ネタ”がなかったのかもしれない。ただ、他社のように乗用車と商用車で開発セクションが分かれていたなら、こうしたクルマの作り方はできないわけで、その意味での独自性はやはりあった。
そして、このステップバン。もともと開発陣に「商用車」という発想の限定がなかったせいか、当時の“軽バン”としては異色の、極めてスタイリッシュな造形にまとめられている。1972年の秋、つまりシビックとほぼ同時期に発表されたため目立たぬデビューとなってしまったが、見る人は見ていた。
しかし、1974年にホンダが軽乗用車から一時撤退したため、このステップバンは短命に終わってしまう。ただこれは、ホンダの中でもモニュメント的なモデルのひとつになっていたはずで、後年、自らオデッセイ(これもまた、乗用車アコード・ベースのワゴンだった)で開拓したミニバン市場を拡げる際に投入した“ハコ型”のクルマに、ホンダは「ステップワゴン」という名を与える。
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00年代こんなコラムを | 日記
Posted at
2016/10/28 17:30:45