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家村浩明のブログ一覧

2015年11月12日 イイね!

【90's コラム】1996年、セダンの新潮流と“逆襲”

日本マーケットにおける昨今の「RV」志向には、やや大袈裟にいえば、歴史的必然があると思っている。これは、クルマ誕生からほぼ1世紀を経て、これまでのセダンを中心とする「旧カテゴリー」からの、人々の自由と脱却の宣言だからだ。

クルマはもう、かつてのようなカタチをしていなくていい。クルマをもっとフリーに選びたい。いまの自分のニーズに最もミートした「ビークル」を、これまでの常識にはとらわれずに選択したい。この90年代中葉、人々の中でそんな風に何かがフッ切れてしまった。その結果がクルマ世界の“拡散”である。それがいまの「RVブーム」の正体で、だからこれは一過性のものではない。

セダン、クーペ、サルーン、コーチ、カブリオレ、ロードスターといった今日も使われているクルマ用語は、実はすべて19世紀以前の「馬車用語」がそのまま、自動車(馬なし馬車)の世界にスライドしたものである。このことは知っていなくても、直感的に人々はもうクルマも自分も「変わった」ことを察知している。「RV志向」とは、使用者の側からのクルマ革命であり、思えば、前世紀の馬車用語のままに「クルマ世界」が100年もの間推移した、そのことの方がむしろ不思議だったかもしれない。

さて、その「初期RV時代」は、80年代後半からジワジワと始まっていた。そして、最初は「転用」だった。それまで商用車とか業務用として分類されていたもの(ワゴン、ワンボックス)、あるいは特殊な用途に用いるだけとされていた仕様のクルマ(クロスカントリー、4WD)を、人々が自身の選択で「街乗り」などに使いはじめたのだ。

そして、その現実に合わせて、今度はメーカーが対応した。その種のクルマを日常に、つまり「セダン的に」使うのであれば、既存の──たとえば商用車や特殊用途車を乗用車に近いフィールにモディファイしましょうというのが、まずひとつ。さらにはもっと積極的に、商用車派生ではなくて、新しいタイプのクルマを作ることも致しましょう。(その代表がエスティマ、オデッセイ)……と、こういうことになっているのが90年代の前半から今日にかけての流れであろう。

その結果、マーケットにおける「セダン以外」の選択肢は多くなり、そのシェアも増えた。その種の「非・セダン」系のモデルが、なぜこのように伸長したかといえば、それらが「セダンを学ぶ」ことによって、日常での快適性や使い勝手の良さなどを獲得し、クルマとして総合的に成長したからである。

クルマはもうセダンでなくてもいいという人々が事実として多くなった、この1996年夏、新たに、もう一方の側から注目すべき動きが出てきた。これまでRVを成長させるのに力を貸すだけだったセダンの側から、では、今日のマーケットのRV志向を前提として、その時代に「セダンを作る」とはどういうことかを作り手としてラディカルに考える。そして、そういう考察とリサーチを踏まえた後に、新型車をプランニングする。つまり、「ポストRV時代の新型セダン」というコンセプトが誕生したのだ。

そしてそこからは、次のようなRVへの解析も出て来た。多くのRVは、同じディメンション(寸法)でありながら、全高を高くすることによって、驚くほどの広い居住空間を出現させた。多くの人が乗れて、そしてたくさんのカーゴを呑み込むこともできる。そのスペース・ユーティリティという一点では、セダンはついにRVには及ばないであろう。しかし、その「高さ」がクルマの運動性という側面では大きなデメリットになってくることがある。

最新マーク2のチーフエンジニアであるトヨタの服部哲夫は、エンジニアらしい表現で「物理の法則には勝てない」と言った。クルマの挙動、走りの魅力を追求したとき、RVは、多くの人とカーゴを乗せようとすればするほど、その重心位置の高さと、そして極端な荷重の変化という、物理的に処理しがたい問題が出てくるというのだ。

たとえば、たしかにRVには7人とか8人の大人数が乗れるという特徴がある。しかし、ひとりで走るときでも、フルに8人乗っているときでも、同じように曲がり、同じような快適さを生むサスペンションを設定することは、厳密には不可能だと、エンジニアは言う。(複雑な可変機構でも盛り込むならば、もちろんできないことはないが)

そして、居住空間の豊かさのもとであるクルマの「高さ」は、不可避的にクルマの重心を高くしてしまう。コーナリングでのグラッとする大きなロール、またブレーキングした際に前のめりになるノーズダイブ現象など、これらが重心の低いセダン・ボディにくらべて格段に大きくなることは避けがたい。ドライバーの意思に合わせてクルマが動くのではなく、クルマの動きにドライバーもパセンジャーも合わせなければならない。つまり「走り」において、主客が転倒するのだ。

また服部は、セダン担当のエンジニアとして、「内輪の言い方だが」と前置きしつつ、興味深い発言をした。いま、作り手として、「セダンの方がRVよりもずっと作りやすい」というのだ。そして、付け加えた。「もちろん、まだセダンには、さまざまな可能性がある」と。

これは、セダンの方がさまざまな作り方のノウハウを既に持っており、ハードとしても未知の部分が少ない成熟商品であることを意味するのだろう。言い換えれば、RVは、まだ過渡期の、はじまったばかりの商品なのだ。そのこと自体が、一部のマーケットやカスタマーにはRVが新鮮な商品として受け止められている一因だが、しかしハードとしての熟成度では、いまの時点ではセダンが勝っている。

例として静粛性という性能を見ても、いまのセダンというのは、単に音を消すというだけでなく、どういう音にまとめると心地よいかというクリエイティブな領域にまで踏み込んでいる。「音」などのそういう熟成については、RVもすぐに追いつくだろう──エンジニアとして服部は謙虚に言うが、新しいビークルであるRVが、セダンが数十年間にわたって練りこんできた領域にまで達するのには、少なくない時間が必要なはずだ。

──RVという強烈な“洗礼”を受けたことによって、今日の新セダンがおもしろくなっている。これからのセダンは、運動性とともに、RVがもうひとつ苦手とするであろう「パーソナル性」に、まずは磨きをかけてくるのではないか。ひとり、あるいは二人だけでクルマを使うとき、果たして巨大な空間のRVは必要か。そんな問いかけもしてくるだろう。また、フォーマル性とまではいわないにしても、冠婚葬祭を含むどんな状況においても、難なく使いこなせるクルマ。そういうのはセダンなのではないか。そんなアピールもされるのではないか。

そして、注目の「運動性」では、日常の使用を犠牲にすることなく、そしてスポーツカーとは異なる、快適さを包含した「走り」の魅力を強力に盛る。そんなふうになるかもしれない。この1996年にリニューアルした最新のセダンのうちのいくつかは、いずれも、以上のような主張を多かれ少なかれ行なっている。RVは、ひょっとしたら、セダンという強者の尻尾を踏んでしまったのかもしれない。RV隆盛のこの時代とは、実はセダンが“もっと熱い商品”に変わる時なのであろう。

(文中敬称略)(週刊ダイヤモンド誌 1996年8月)
Posted at 2015/11/12 08:04:22 | コメント(0) | トラックバック(0) | 90年代こんなコラムを | 日記
2015年10月23日 イイね!

【90's コラム】ぼくとクルマとのつきあい方 in 1996

【90's コラム】ぼくとクルマとのつきあい方 in 1996◆たかがクルマ、されどクルマ……「91年プリメーラ」で14万kmを突破!

いきなり14万km以上を走行したクルマが出てきて驚かれたかもしれないが、当人としては、そんなに長くつきあってきた感覚はなく、特別なことをしているつもりもない。4年以上使っていて、気がついたらメーターが6ケタになっていただけだ。ただ、オドメーターが10万kmに達したときは、ちょっとした節目感はあった。また、もっと走行距離を重ねるとどうなるのかという興味も湧いた。だから、まだ乗る。今年の9月に2回目(5年目)の車検が来るが、きっと買い換えないと思う。

ぼくのクルマとのつきあい方には、そんなに特別なものはなく、長く乗るというテーマでのクルマ選びをしているわけでもない。これまでも、だいたい一台に4~5年、5~8万kmくらいは乗ってきたので、今回もその延長線上にあるだけ。このクルマの場合は、たまたま住まいが都心から少し遠くなり、都内の取材その他でクルマをフルに活用していたら、こんな走行距離になったともいえる。

ぼくは博物館や歴史は好きだが、自分のクルマに関しては、その種の関心や「置いとく」趣味はない。クルマは変わっていくものだから、いつも“現在”とつきあいたいと思っているし、また、関心が分散して意外につまらない(であろうと想像している)複数所有というのも好まない。

もちろん、次はどうしようというアンテナは常に張っているが、だからといって、新型にはすぐには飛びつかない。選択には当然、価格も重要な要素になる。クルマ雑誌に関わるという仕事柄、いろいろなクルマに乗る機会はあるが、それと自分で「一台を買う」のはまったく別のこと。この点では、読者のみなさんとあまり変わらないのではないかと思う。このプリメーラも、デビュー後1年以上経って、製品が安定してから(?)買った。

一台のクルマに乗る時間と距離が比較的長いのは、あくまで、自分で気に入ったり興味を持てたりするクルマを買っているからだと思う。そして、その選択時には、いわゆるリセールバリューというのは考えない。クルマというのは瞬間ごとに身体と感覚に密着して、そのまま一緒に動いていくものだから、いくら数年後に数十万円違いますよといわれても、気に入らないものには乗れない。また、その「リセール」なるものは、常に「いま売れば」という話であって、何年か先のことが保障されているわけでもない。

このクルマはデビュー時に、(あ、きっとこれ、買うな……)と直感した。日本自動車界の欧州車への「卒論」みたいに思えて、そういうジャーナリスティックな興味もあった。また、基本的に一台に乗る立場としては、ワインディング路で速くて、そしてトランクがデカい(深い)という《走り》とユーティリティの両立もありがたかった。

グレードを「Tm」にしたのは、シートがよかったためで、ミッションはMTにした。ディーラーには珍しい選択だといわれたが、「Te」などのスポーツ系にしていたら、またATにしていたら、こんなには乗らなかったかもしれない。

パワーウィンドーの作動に小さな“持病”(対策部品が出ている)があったほかは故障知らずで、トラブルなどで止まったことは一度もない。ブレーキパッド、クラッチは換えたが、ダンパーは未交換。タフなクルマであることは特筆できる。そして、日本車は耐久性がないという俗説はウソ! ボディもシートもヘタっていないし、騒音レベルもさして変わっていない。

(JAF出版「オートルート」誌 1996年)


追伸 編集部御中
車歴は、若気の至りで(笑)買ったけれどほとんど走らなかった(走れなかった、スターターが壊れていた)フィアット850スパイダーを「所有だけ」していたのが最初で、次にギャランGS1971年。これはかなり走りました。この2台が中古で、結局トラブルで懲りて、それ以後は新車購入へ。FRジェミニ、117クーペ、ゴルフ、ジェッタ、ピアッツァ・ネロ、そしてプリメーラです。

最初に買った=使ったクルマは何? と訊かれたときには「ギャラン」と答えてます。わけわかんないビョーキっぽい(笑)クルマにあまり関心がないのは、最初の選択(フィアット)で学習したからでしょうか。実は二輪でも一度やってて(ノートン・コマンド)それ以後、完全に“普通車”志向になりました。使うために買うので、動かないクルマは私にとっては粗大ゴミです。
Posted at 2015/10/23 09:46:43 | コメント(0) | トラックバック(0) | 90年代こんなコラムを | 日記
2015年10月21日 イイね!

【90's コラム】“ワクワク度”トップ3 in 1998

【90's コラム】“ワクワク度”トップ3 in 1998◆ワクワク度第1位 ホンダZ 
注目のパッケージ

歴史を作りそうなモデル登場、いったい、エンジンはどこだ? そして、この広さは何だ? 聞けば、対衝突を突き詰めていくとエンジンという固いものの存在はじゃまになるという。クルマが大きければまだラクだが、小さなクルマほどキツいと。だからメルセデスのAクラスは、エマージェンシー時ではそれを床下に逃がすというワザを使ったのだろう。

しかし、もし可能であれば、前部には何もない方がキレイにつぶれ、そしてクラッシャブル・ゾーンも短くて済む。それならエンジンはフロント以外に置こうという床下ミッドシップ。ホンダの「Z」は、こういうロジックのレイアウト&パッケージングだという。

そして、エンジンをそうやって“見えなく”しても、実用車として何らネガを出していない点に注目。話題の「Aクラス」はけっこう床が高く、その割りにはルーフが低い。だが、この「Z」は乗降性ではノープロブレム。

惜しむらくは、乗り心地にしなやかさが足りないこと。そして、ステアリングの操作フィールがイマイチなこと。総合的な乗り味という点ではいくつか不満点があるが、提案性では今年の収穫。いま「A」より「Z」だ。

◆ワクワク度第2位 トヨタ・アルテッツァ
こいつは止まる! 

おっ~と! いつもと同じようにコーナーでブレーキングしたつもりが手前過ぎてしまった。直線が余ってる。このクルマの「グワシッ!」という極太のブレーキング感覚は、ちょっと日本車離れした味だ。

なに、目標はM3だった!? 足に関してはアリストのパーツもふんだんに使った!? なるほど、日本車史上にレアな徹底した「シャシー優位」の設定には、そういう高いココロザシがあったか。

ともかく、ほかの部分は措いても、こと「シャシー」にはカネをかけようというのがこのクルマのコンセプトだったという。そして販価の制限がある以上、インテリアが多少チープになったとしても、それはむしろナットクか。あえて全長が短い感じに仕立てたモッコリ造形も、質実マシン風で良い。

◆ワクワク度第3位 スバル・レガシィ
速いのにしなやか!

あれ? こんな“薄い”タイヤを履いてるのに、まったくゴツゴツ感がない。ハイ・パフォーマンス・カーで、これだけ低中速でも乗り心地がいいのは驚き! ターボ車でこうだから、ノーマルは押して知るべし。このしなやかさは今年のピカイチ。剛性の高い新しいボディと、ストロークを重視した新しいマルチリンク・リヤサスの賜物か。

ともかく今回のレガシィは、コンセプトこそキープだが、その中でどこまでやったかという「達成度」では、極めて高度なレベル。さて、そんな「いい足」だが、ひとつ残ったのは、ラストで《人間》に触れるバネ・パーツというべきシートだ。腰骨と背筋はもっと伸ばして支えた方が、ドライビングにもいいはず。世界のグランツーリスモとしては、ここは画竜点晴を欠くか。

(1998年、JAF出版「オートルート」誌掲載に加筆修整)
Posted at 2015/10/21 19:07:25 | コメント(0) | トラックバック(0) | 90年代こんなコラムを | 日記
2015年10月15日 イイね!

【90's コラム】「タイプR」のスピリットとテンション

【90's コラム】「タイプR」のスピリットとテンションホンダのインテグラに、「タイプR」という物凄いバージョンが加わった。この仕様に投入された熱意とコンペティティブ(戦闘的)なスピリット、また細部へのこだわりとその凝り方、テンションの高さは、ひょっとすると、あのスカイラインGT-Rをしのぐのではないか。

そのテンションの例は、たとえば「チタン削りだし」のシフトノブである。こんなこと、GT-Rでもやってない。ただホンダとしては、既にNSX-Rでやってたことであり、インテグラでも「R」を名乗るなら当たり前だぜ……ということであろうか。

そのノブには、上部に1~5速のゲート図があるが、これが実は「手彫り」。そのために、このノブは一日に16セットしかできない。一方で、エンジンは一日に「25基」作れるため──いや、25基しか作れないというべきだが、それとの「数合わせ」で、シフトノブ「手彫り」の担当者は残業を余儀なくされているとか。

その「25基」しか作れないエンジンは「B18C96スペックR」という。このエンジンのために、60品のパーツを新作。そのチューンの白眉は、吸気ポートを流れる空気の速度を上げるために、ポート内を研磨していること。その仕事は、まったくの手作業で行なわれる。

このエンジンは鈴鹿工場で組むが、そこで、この「ポート研磨」の技術を持つ2輪レースの経験者を選抜。しかし彼らをもってしても、1基の研磨には20分を要す。つまり8時間仕事をしても、エンジンは24~25基の生産が限度ということ。「タイプR」用エンジンの生産台数を決めているのが、実はこれだった。さらには、コンロッドを組む際のボルト締めも手作業であるという。

こういうことをして、ナニをしたかったのかというと、リッターあたりの出力で国内最高の地位を三菱のMIVECから奪回するため。その野望は達成されて、結果としてリッターあたり出力が111ps、つまり1.8リッターで200psの「スペックR」ユニットが出現した。

そうしたモロモロのことで仮に生産台数に制限が生じても、あくまで“やりきる”! 「タイプR」である以上は、NSXでもインテグラでも、同じスピリットとノウハウをぶち込む。これがメーカーとしてのスタンスのようで、もちろんベース車との価格の違いは生じるが、そうであってもこのクルマは3ドアで222.8万円である。(エアコンはレスの価格ではあるが)

このエンジン、5500回転から踏み込むと、ほとんどサーキット的な排気音とともに、グワーッという凄まじいトルクを吐き出す。むろんVTECで、8000回転までラクに吹け切る。それを受けるシャシーは、フレームの前端と後端などにパフォーマンスロッドを追加して、ストラットタワーバーはアルミ製。車高は15mm下げられ、ステアリングのギヤ比は15.7へ。ステアリングホイールそのものも、小径のMOMOとなった……と、この手のことを書いていたらキリがないのだが、つまりはエンジン以外でも“やりきる”姿勢は貫かれている。

さて、このタイプRの走りだが、それは「速い!」のひとことに尽きる。ただ、そこに深みのある安定性が付加されているのが特徴で、これは、北海道にある同社の高速で複雑な「G」がかかるテストコースでの走り込みが効果をあげていよう。(このコースよりももっと速度が遅い)一般的なワインディング路では、この足はキャパが余っており、多くの“280psカー”のように出力がありすぎないことが公道レベルでの楽しさを生んでもいる。

では、このような極限のスポーツ仕様を普通に乗ったらどうか。これは意外にも、そんなに悪くない。快適性はあえて無視したというのがメーカーの説明だったが、まずエンジンは5000回転以下なら、その音も一応平和である(ここから上は前述のように相当うるさい)。そして、3000回転以下でも実用走行に必要なトルクは出ており、1.6リッターの初期VTEC時代のような(街なかでの)辛さも少ない。

乗り心地にしても、たしかにハード・サスだが、ロールをさせて曲がるようにというのが最近のホンダ車の傾向で、低中速域でもそんなにガチガチではない。同乗者にとっても、これなら許容範囲ではないか。

室内もクーペ形状ながらドライバーの頭上(天井)は高く、前席での窮屈感はない。見かけほどには、居住性はイジメられていない。シートもレカロ製で、腰部のサポートががっしりしていて良い。

このインテグラというモデルは、ノーマルのSiRでも、レーシングカートのように曲がる、知られざるスポーツ車であった。そして「タイプR」をNSX以外でも作ろうというときに、このモデルが選ばれた。その選択は納得できるし、そして、その資質を十分に活かした仕様になっている。インテグラというモデルの全体もいま一度注目されそうな、そんな強烈バージョンの追加だ。

(JAF出版「オートルート」誌1996年より、加筆修整)
Posted at 2015/10/15 05:25:30 | コメント(0) | トラックバック(0) | 90年代こんなコラムを | 日記
2015年04月26日 イイね!

【90's コラム】2代目プリメーラと初代

【90's コラム】2代目プリメーラと初代初代のプリメーラは、日本自動車界が先達である「欧州」に突きつけた“卒論”であると、個人的には思っていた。欧州という環境やマーケットを懸命に研究し(ニッサン社内で実際にこれは行われた)テーマを定めてのクルマ作りが行なわれた。そして、そのはっきりしたコンセプトが特有の“色”も生んで、想定されたマーケットではなかったはずの日本でも、結果的にヒット作となった。

ただ、この「日本でも売れた」ということで、2代目を作るにあたって、その開発が単純ではなくなったようだ。聞けば、まずはリサーチをしたそうで、そこから、初代についての、日本での「2大不評ポイント」が明らかになった。それは、パワーウィンドーのスイッチ位置と、欧州車によくあるダイヤル式のバックレスト調節で、そのデータから、この二点はあっけなく“改良”されてしまった。

そして、これと連動するかのように、インテリアもゼロからやり直された。新型の室内に乗り込んで、旧型(初代)との継続ポイントを見つけることは困難だ。ヨーロッパ車の場合、全体の雰囲気や各種の操作性では、そのクルマなりの継続性を持つようにモデルチェンジされることが少なくない。しかし、“ニッサン製の欧州車”であるプリメーラでは、この(欧州的な)方法は採られなかった。いわば日本的な、全取っ替えするぞ……というチェンジが、インテリアに関しては行われた。

一方、エクステリアについては、全体の印象やプロポーションでは辛うじて「継承」があって、サイズ的にもほぼ同じ。そしてその造型には、初代とは異なって、近年のヨーロッパ車が多用する“前かがみ”のコンセプトが盛り込まれている。同時に、フロントのグリルも大きく変わった。

初代のエクステリア・デザインには、欧州志向のクルマだとしながら、日本人好みの「水平感」や「直線」がボディの各所にキリッと入っていた。これは他のヨーロッパ・セダン(たとえばベクトラ)とは一線を画すところで、日本で初代が人気を得た原因のひとつは、このボディ・デザインにあったと思っている。しかし2代目では、その「水平」イメージはほとんどなくなった。

性能面において、2代目で大きく変わったのは足まわりである。リヤ・サスにマルチリンクビームを導入し、これは他のニッサン車で先にデビューしているが、もとはといえば、プリメーラの後足用に開発が進められていたものだそうだ。その意図は、リヤ・サスの能力を従来型より上げて、《走り》をさらに向上させたい。そして初代よりも、もっとサスをストロークさせ、懸案であった乗り心地のマイルド化もはかりたいということ。

乗り心地向上についてのその成果は、たしかにある。フランス車のようなロールしながら曲がるという足では、もちろんないが、初代にあった「硬さ感」や突っ張ったような感じは減り、足の動きにしなやかさが出た。そして、コーナリングでの安定性はワンランク上がったという感じだ。旧型ではちょっとアクセルを緩めて曲がっていたコーナーでも、新型はそのまま踏みっきりであっさりと抜けられる――そんな足になっていた。

そういう意味での「速さ」は、確実にディベロプメントされているのがこの新型だが、なぜか、ステアリングを握る手のひらを通じての「接地感」は非常に希薄で、この感覚は最速の「Te」仕様で最も顕著である。ただ速くするだけではなく、速さの質を、この2代目ではもっと磨いてほしかったと思うのは筆者だけか。

エンジンも、ピストンが軽量化されたということで、レスポンスと吹け上がりは良くなっているが、低中速でのトルクの細さは、まだ感じる。欧州車のような太いトルクを、日本製エンジン得意の高回転での伸びと併せてくれれば……というのは、ゼイタクな願いなのか?

初代のプリメーラにずっと乗ってきた立場としては、こと「速さ」という点においては、このクルマは既に抜きん出るものがあったと実感している。したがって、もし2代目を作るのであれば、その「速さ」はもう程々でいいから、いっそうの「接地感」とか、低中速域での乗り心地とか、あるいはエンジンのトルクなど、いわば「速さ」以外の部分をふくらませてほしいと思っていた。だが新型は、もう一度、さらに「速くする」ことを《走り》を作っていく際のテーマとしたようだ。

そうした選択、そして、どうやってもう一度、この日本市場で売るか。また、ひとつのモデルとしての「継承性」など、さまざまな点で、この新型は、ぼくがイメージしていた2代目像とは微妙にズレている。何より、初代のパワーウィンドーの(ドライバー側)スイッチは、世界で一番使いやすい位置にあったと思う。これが今回、他車並みの方式になってしまったのは、初代のユーザーとしては残念の極みである。

(JAF出版「オートルート」誌 1996年)

○タイトルフォトは、初代プリメーラ「P10」のテレホンカード。
Posted at 2015/04/26 18:57:48 | コメント(0) | トラックバック(0) | 90年代こんなコラムを | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

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何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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