
§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection
──これは、週刊の漫画雑誌に書かれたものの単行本化ということですが?
フシギですか?(笑)「週刊漫画アクション」誌に『アクション・ジャーナル』というコラムのページがありまして、そこに発表したものの中からセレクトしました。ま、妙なパワーを持った欄で、このような原稿が割りと平然と載る。
──あの南伸坊さんのイラストが載ってる?
そうです。そっちの方が楽しみだという人もいらっしゃるようですけど(笑)。それで、無署名コラムという独特のシステムなんですね。
──「覆面」ということですか?
そうではなく、何というか、文責はすべて編集部にある。いわば、編集部の“署名原稿”なんです。
──文責は書き手にはないと?
ええ。そういう意味では“自由”です。ただ一方で、コラムを書く側としては、若干のフラストレーションと、一種の責任回避の感じもある。だから、ぼくは「覆面」ではないと解釈してたんで、執筆していることを隠したことはないです。
──無署名だということは、暗闇から石を投げることもできますね?
原理的には、そうですね。ただ、それ故に書き手の責任は倍加する。そういうことも言えると思います。でもこれ、書く側としては、けっこう“技術的”な興味はあります。主語なしでコラムを成り立たせるわけですから、大変勉強になる(笑)。
──主語のないクルマ批評?
それはもう、ちょっと不可能です。あるいは、無署名の限界も感じます。だからこの本は、ぼくにとっては何年分かの原稿にまとめて署名した。そういう感慨はありますね。
──この本で特徴的なのは、ポルシェとかフェラーリとか、あるいはメルセデス・ベンツとか……。
最小の190Eは出て来ますけどね、ええ、高いクルマが出て来ないです(笑)。そういうスーパーなクルマの賛美本か、こうすれば……のハウツー本、あるいはソントク勘定。また、間違えないようにという教則本。それと、一般向けではないですけど、技術書ですね。この技術関係は措いといて、これまでのクルマの本というのは、どれも、以上のスーパー、ハウツー、ソントクのうちのどれかでした。この本は、おそらくそのどれでもない。まったく役に立たない(笑)非常に稀なクルマ単行本でしょう。
それから、筆者がオカネモチでない。これも特徴(笑)。……いや、笑ってますけどね。この(クルマの)業界、ものすごくオカネモチの発想で原稿が書かれることが多いんですよ。(車両価格が)800万円だとリーズナブルだ、とかね。「おぼっちゃまジャーナリズム」って、ぼく、呼んでますけど。この本は、普通の生活感覚と金銭感覚で書かれてますので、どうぞ安心してお読みください(笑)。
──すると、役に立たなくて、そして夢もない(笑)そういう本ですか?
うーん……(笑)。代わりに「批評」があると言えればいいんですけどねえ……。まあ、この5年間のね、クルマをめぐるいろんなこと。それをリアルタイムで記録してある。これはひとつ、この本の意味かもしれないですね。
──それで掲載号の日付を付けて、ほぼ発表順に並べた?
そうです。それで、書いている時は、こんなこと(単行本化)になるなんて思ってない。その週ごとにクルマに乗って、観察して、いま何を書いたら一番インタレスティングかということで、コラムを作ってた。それを時間順に読んで、少しでもおもしろいと感じていただけるならとても嬉しいです。
(つづく)
Posted at 2015/03/11 19:56:20 | |
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80年代こんなコラムを | 日記