
このクルマは冒頭に記したように、コンセプトや狙いがよくわかるし、また、それに大いに賛同できるので、そのせいか、どうも細かいことに目が向いてしまう。ここまで指摘してきた「乗り心地」にしても、ここで改めて書くと、乗り心地が悪いとか、その“揺れ具合”が許容範囲を超えているといったことではない。
ステアリングによる「入力」に対しての俊敏さ。そのシャープさを確立したセッティングであるにもかかわらず、一方で、流して走っている際の足の動きには硬さを感じさせないスムーズさがある。“曲がる”性能と、まっすぐ穏やかに走る性能が両立していて、そのバランスが高次元にある。言葉を換えれば、「よく“曲がる”クルマにしては、乗り心地はいいよね!」なのだ。そう評価するゆえに、もうワンランク、このクルマは上に行ける……と思ってしまう。
そうした気になる細かいことでは、もうひとつ。それは、シートの背もたれとドライビングとの関係だ。このクルマのシートは、どうすれば人の身体に隙間なく密着するか。さらに、身体のどこか一部に負担を掛けることがないように──。こうした点を大事にして作られたシートだということが、走りながら体感できるが、その「密着」がやや過度であると感じるのが、背もたれの肩のあたりである。
言い換えれば、このへんまでもしっかり支えてくれる、いい形状のシートなのだが、ただ、運転するというのは基本的に腕を使う行為。そして腕を動かすと、背中の肩の下あたりの筋肉も一緒に動く。したがって、肩とその下のあたりは動きやすいように、背もたれで「支えすぎない」方がいいのではないか。こうした肩をもっ自由にしておきたいという(私のような)立場からは、このシートの背もたれ、その肩のあたりは、ちょっと“仕事をしすぎる”感じなのだ。
ただし、この件については個人差という問題も一つある。シート担当のエンジニアとも少し議論になったのだが、私のドライビング・ポジションはどうも、メーカーの想定よりも背もたれをワンノッチ立てているようだった。そのため、ここで言う肩のあたりの“圧迫感”が強まってしまうというのがコトの真相のよう……。
とはいえ、これに対しても私の意見はあって、このクルマのようにヒップポイントを「600ミリ」まで上げた場合には、多くの人は私と同じように、もっと低い位置でのドラポジよりもアップライトにして(背もたれを立てて)しまうのではないか。……まあこれも今回、人体を巧く「等圧」で支えてくれる“密着性”の高いシートができたために、そこから生まれた微妙な違和感で、もし私がこのクルマのユーザーになったとしたら、他車の場合よりも背もたれをワンノッチ寝かせて使う。おそらくは、それで解決するだろうと思う。
そしてこのクルマ、デザインにはやはり、「好み」を超えてのインパクトがある。車型の分類用語では「クロスオーバーSUV」だが、ベースとなっているのはSUVであり、それにセダンの日常性と、そしてパーソナル性のクーペ・フィールを豪快にミクスチュア(クロスオーバー)させている。
今日の一連の「マツダ造型」ラインにきちんと収まりつつ、全長がコンパクトであることを活かして、そのデザイン・エッセンスを強調してまとめていると見る。クーペ・エッセンスを盛り込んだが故に、ルームミラーに映るリヤ・ウインドーがけっこう小さいという問題はあるが、これはまあ許容範囲であろう。
ともかく、足にしてもシートにしても、いろいろなところが丁寧に作られている……ので、些細なことやディテールに意見を言いたくなるのだが、しっかりと主張があり、そして提案性にも充ちた意欲的な新型車、それがCX-3であると思う。
(了)
Posted at 2015/03/19 09:13:55 | |
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New Car ジャーナル | 日記