2015年03月22日
ぼくらが、クルマの乗り方や選び方はもっと“自由”であっていいとして、古い概念にとらわれず、普段に乗るクルマをどんどん「RV」方向へシフトした。その傾向を、いま、メーカーが必死に後追いしている。これが1996年的な現在であると思う。
その流れをリードしたモデルやメーカーはあったが、しかし、さらに先を行っていたのは明らかに「使い手」の側だった。そもそも、昨今の「RVブーム」とは、メーカーが「商用車」という分類の中で作ってきたクルマ──つまり、ワンボックス車にしてもワゴンにしても、またクロカンにしても、それらのクルマを、ユーザーの側が勝手に日常車として使い始めた。それがコトの発端だったのだから。
言われるところの「RV時代」とは、クルマが変わったんじゃない。ユーザーとマーケットが変わって、そこから、どんなクルマを買うかが変わったのである。
そんな今日にミートすべく、遅ればせながらニュー・カマーがトヨタから登場した。それが「イプサム」である。このクルマは、オデッセイがヒットしたので慌てて企画した……なんてことは、もちろんなくて、昨秋のモーターショーの時点で、ほぼ完成形が既に公表されていた。(クルマって、そんなに簡単に、かつ短時間で、ピョコッとできてくるような商品ではない)
……とはいえ、ぼくらにとって気になるのは、やはりオデッセイであろう。セダンでもなく、さらに旧来のワゴンともいえないという「新しさ」、そして、その狙いどころ。さらには、サイズやエンジンのキャパといったところがほぼ共通しているからである。(メーカーも同じ“時代”を見て、そして同じ空気を吸っている。ゆえに、同時代のクルマは似るのだ)
ただ、イプサムとオデッセイで大きく違うのは、イプサムの方がカタく(?)5ナンバー枠に収めてきたこと。この「枠」への抵抗感は、もはや薄れてきていると言われるが、とはいえ、同レベルの性能を確保することが、その「枠内」で可能であれば、クルマはそれに収めて作る。これがトヨタ流の選択というものだろう。
コロナ用の実用的な2リッターエンジンを使い、前サスもコロナからの流用部分があるが、フロアやリヤ・サスはイプサム専用の新設計。このあたりは、この種のクルマが今日に求められていることへの、後発メーカーとしての意欲の現われであろう。
スタイリングでは、顔に、コロナの“ブラザー”であることを敢えて謳った感があるが、サイドウィンドーからリヤ周りへの処理には、なかなかの“冒険心”も見られる。これはスッキリ路線のオデッセイと一線を画すところ。もちろんボディ構造には、衝突に対応した「GOA」設計を採用している。
(「スコラ」誌 1996年)
Posted at 2015/03/22 22:28:05 | |
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