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家村浩明のブログ一覧

2016年09月16日 イイね!

映画『おもひでぽろぽろ』の「スバルR-2」が絶妙だ! 《13》

鉄道の駅前(高瀬駅か)に、トシオのスバルが駐まっている。場面変わって、駅のホーム。タエ子と、タエ子を見送る人々。……そうか、スバル(軽自動車・四人乗り)で駅まで来たので、ここには四人しかいないのだ。ホームにいるのはタエ子、本家のばあちゃんと孫のナオコ、そしてトシオ。

ばあちゃん「忘れものはないかい?」
タエ子「はい。大丈夫です」
トシオ「じゃ、冬に来るのを待ってますからね」
タエ子「ええ。それまでに少し勉強しとくわ、農業」
トシオ「あれ、スキーじゃないんですか。まあ、もっとも実践あるのみですけどね、スキーは」

ちょっと微妙なやり取りがおもしろい。次に「東京の女」が山形に来るのは、冬のスキー観光の時なのだとトシオは信じている。一方のタエ子は、そもそもスキーにそんなに興味はないし、今度、トシオに会う機会があるなら、その時はもっと農業の話をしようとイメージしている。二人はやっぱり、まだ何も「気づいて」いない。

タエ子に近づいて来たばあちゃんが言った。
「あのこと、考えててけろな。タエ子さん」
トシオ「え? なに? ばっちゃん」
ナオコ「なあに?」
ばあちゃん「いやあ、オレとタエ子さんのヒミツ」
トシオ「うーん、昨日は何か変だったもんなあ」

そしてこの時、タエ子は言う。
「ごめんなさい。今度は大丈夫。もう『5年生の私』なんか連れてこないから」

ホームに電車が入ってきた。「待ってけろー」と、地元のお爺さんが駆け込み乗車した。タエ子は、もう電車に乗っている。
「元気でね、ナオコちゃん」
電車のドアが閉まった。「さよならー」とナオコが叫ぶ。

車内では、隣のボックスに収まった先刻の爺さんが、禿げた頭の汗を拭いている。タエ子は、窓から身を乗り出して、駅の方を見て手を振った。爺さんが持ち込んだラジカセからは、歌謡曲が流れている。歌っているのは「都はるみ」。♪さようなら さようなら 好きになった人……

ここで映画はいわゆるエンドロールになり、キャストやスタッフなどのテロップが流れ始める。ただし、ドラマは続く。

エンディングの歌が始まった。「好きになった人」に続いて、実は同じ歌手(都はるみ)なのだが、歌い方がまったく違うので、そうは感じられないという演出が渋い。

この歌は、タイトルが「愛は花、君はその種子」というのだそうで、私自身はこの歌を、この映画のこの場面で初めて聞いた。ベット・ミドラーが映画『ローズ』に出演した時の主題歌で、それに日本語の詞を付けたものだが、私はこの映画を見ていない。……というか一度見たのだが、何も憶えていない。

「ローズ」とは、あのジャニス・ジョプリンの異名である(自身で、好んで名乗ったのだったかな)。ジョプリンの歌を聴いていた者としては、この映画『ローズ』は公開当時は逆に見る気がせず、後年になって、まあ一度だけは見ておこうかとDVDを借りた。ただ内容は全篇にわたって、シロウトの私が見ていても(これはちょっと違うだろ……)ということの連続。また、映画としてもおもしろくなく、主題歌を記憶することもなかった。

ところで、『ローズ』がジョプリンの伝記映画という触れ込みだったために、ジャニス自身も、この映画で使われた「ザ・ローズ」という曲を歌っている……という理解が一部にあると聞くが、それは誤解です。彼女の音源をいくら探しても、この曲は出て来ません。またジャニスの遺族が、この映画を彼女の伝記として認めていないということは、私は近年になって知った。

さて、洋楽「ザ・ローズ」+日本語の歌詞という都はるみの「名唱」(ほんと、これは巧くて凄い!)とともに、画面では、映像だけによるドラマが進む。

♪やさしさを 押し流す 愛 それは川
♪魂を 切り裂く 愛 それはナイフ

東京行きの電車の中。タエ子が座っていると、小学5年生のタエ子、そしてそのクラスメイトたちが現われた。幻の「5年生のタエ子」は、27歳のタエ子の腕を心配そうに掴む。

♪愛は花 生命の花 きみは その種子

「5年生のタエ子」に腕を引っ張られたのが契機となったか、27歳のタエ子は荷物を持って立ち上がった。そして、ドアの方へと向かう。「幻の子どもたち」が飛び上がって、嬉しそうに歓声をあげる。

電車が次の駅に着いた。東京方面行きから降りて、反対方向に向かう電車に乗るタエ子。出現した「5年生」たちも、タエ子について電車を乗り換えている。

ふたたび電車が止まり、タエ子は、先刻までいたプラットホームに降り立つ。そして改札を出ると、すぐに電話ボックスに入った。路上では「幻の小学5年生」の集団が立ちふさがって、路線バスを止めている。

本家で、タエ子からの電話を受けたのはお母さんだった。それを見たばあちゃんが、庭にいたトシオを呼んだ。

「5年生のタエ子」が、27歳のタエ子の手を引いた。タエ子は無事、路線バスに乗ったようだ。

♪愛なんて 来やしない そう 思うときには
♪思いだしてごらん 冬 雪に 埋もれていても

トシオのスバルが走っている。そのスバルと路線バスがすれ違った。タエ子がバスから降りた。

♪種子は春 おひさまの愛で 花ひらく

スバルが停まり、トシオが、こっちに向かって駆けて来る。そのトシオを、「幻のイタズラ小僧」が身を挺して転ばそうとした。それにつまづいて、前のめりでタエ子にぶつかりそうになるトシオ。二人は一礼し、頭を下げ合う。

並んで歩く二人。トシオはタエ子の旅行ケースを持っている。背後の「幻の子どもたち」は、そのへんの木片を組み合わせたのか、手製の“相合い傘”を作って二人に差し掛ける。

サイドビューを見せているスバル、トシオとタエ子が乗っている。そのスバルと一緒に走ろうとする「小学5年生」たち。しかし、クルマの方が子どもの足よりも速い。

スバルが加速し、子どもたちを置き去りにした。
(さようなら、小学5年生の私)

リヤビューを見せて走り去ったスバルを見送る、幻の「小学5年生」たち。独り、微妙な表情で「10歳のタエ子」が立ちすくむ。
(「小学5年生の私」が、「27歳のあなた」に会うことは、もう、ないのよね……)

(つづく)

◆今回の名セリフ

* 「あれ、スキーじゃないんですか。まあ、もっとも実践あるのみですけどね、スキーは」(トシオ)

* 「あのこと、考えててけろな。タエ子さん」(本家のばあちゃん)

* 「今度は大丈夫。もう『5年生の私』なんか連れてこないから」(タエ子)
Posted at 2016/09/16 15:27:31 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマから映画を見る | 日記
2016年09月16日 イイね!

【 70's J-car selection 】vol.12 レオーネ4WDエステート・バン

【 70's J-car selection 】vol.12 レオーネ4WDエステート・バンレオーネ4WDエステート・バン(1972)

当時はその意義や意味がイマイチよくわからなくても、時間が経つとともに、「歴史」によってその価値や評価が“発見”されることがある。1972年にむしろひっそりと、追加仕様として、まず「バン」が登場。この時点では、主に不整地や雪上でもスタックすることなく走行するため、つまり特殊業務用という意味合いが強いとマーケットは受け止めていた。

しかしメーカーの「そのメカニズム」についての本気度は、当時のマーケットやカスタマーの意識よりはるかに高かった。オフやスノーだけでなくオンロード走行においても、トラクションやスタビリティで「4WD」はその本領を発揮する。そのことを確信していたメーカーは、当時に“準・乗用車”的に使われていた商用ライトバン(それにエステート・バンという名を与えた)に続けて、4ドア・セダンにも「4WD」仕様を設定して発売した(1975年)。それが1970年代初めに登場した、スバルのレオーネ・シリーズである。

単にエマージェンシー用ではなく、オンロードでも、つまり日常的に「全輪」を駆動した方が安全性も向上する。あのアウディ・クワトロはこのように主張し、乗用車のための4WD仕様を華々しく登場させてクルマ世界にインパクトを与えたが、そのクワトロのデビューは1980年のことだ。

一方、、彼ら(欧州人)にとっての「極東」の地であるこの島国では、1970年代の前半という時点で、既に「オンロード4WD」の提案が行なわれていたのだ。その意味でレオーネ(初代)は、記録と記憶に残すべき“私たちの日本車”の一台なのである。

ここでは、72年のバンか75年のセダンか、どちらの「乗用4WD」を採り上げるべきか、若干悩んだのだが、エステート・バンからステーション・ワゴンへと展開して稀代の人気モデルとなった、あのレガシィの原点という意味も込めて、“祖”というべきエステート・バンにスポットライトを当てる。

(ホリデーオートBG 2000年3月より加筆修整)
Posted at 2016/09/16 07:18:55 | コメント(0) | トラックバック(0) | 00年代こんなコラムを | 日記
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「【 20世紀 J-Car select 】vol.14 スカイラインGT S-54 http://cvw.jp/b/2106389/39179052/
何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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