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家村浩明のブログ一覧

2014年10月31日 イイね!

「CX-3」に期待する!

やっぱり(開発を)やってたんだ! ニュースを知って、こう思った。マツダの「CX-3」である。10月28日、来たる11月のロサンゼルス・ショーで、その名を持つ“新SUV”を公開すると同社が発表したのだ。

同時にイメージスケッチも公開され、デザイン的には同社の言う「魂動」コンセプトの第5弾であること。そして、CX-5よりは一回り──いや一回り半か、そのくらい小さいサイズであることが、そのネーミングから知れる。

今日の目では、造形的にも内容的にも、単なるSUVというより、クーペ・モードも採り入れた「クロスオーバー」モデルなのだろうと想像するが、ただ、この用語はわが国ではどうも馴染まない気配? したがって、マツダから、CX-5の弟分に当たるコンパクトSUVが登場するという方が、はるかにイメージは創りやすそうだ。

そして、「CX-2」ではなく「CX-3」であるのも、なかなか微妙なところ──。デミオ、つまり海外での「マツダ2」をSUV版にシフトしたというのではなく、ユーティリティやバランスなども考慮して、「2」よりはやや大きめのサイズでまとめた。それがこの新型車なのだろう。(いや、単にSUV系は“奇数”の数字を車名にするというキマリの故なのかもしれないが)

とにかく、この「CX-3」は待望の新機種。その理由はいくつかあるが、まずは、既にあるCX-5が大柄ボディであること。CX-5というクルマは、実は運動性に優れ、ワインディング路に持ち込んでも楽しいという“走り”のSUV=クロスオーバーなのだが、ガタイとしては、やっぱりデカい。

そのため、日常的にもっと“テイク・イット・イージー”な感じでクルマは使いたい。あるいは、もう少しパーソナルな感じのクルマの方が生活ギアとしては適切だ。こういった立場から、CX-5をそのまま“縮小”したようなクルマがあれば、さらにいいのに……という声はあった。(少なくとも私は、そう思っていた)

そして、新型デミオである。このクルマが総合性能に優れたスーパー・コンパクトであることはわかったとして、一方で、これまでハイト系やボックス系のクルマに乗ってきたユーザーにとっては、このデミオはやはり“低姿勢”に過ぎる。HP(ヒップポイント=前席座面の地上からの高さ)は、新デミオではとくに発表されていないが、その数値は約550ミリ。これはHPが600ミリを超える、たとえばワゴンRやキューブなどと比べれば、かなり低いのだ。

この「HP」というのはおもしろいもので、「低→高」であれば、誰でもストレスなく移行できるが、「高→低」ではそうは行かないことが多い。自分がいつもどういう格好でクルマに乗り込んでいるか。それを背骨あるいは腰が記憶していて、一緒に、シート座面の高さを感じるセンサーもできてしまう。そして「高→低」の場合に限って、そのセンサーが(あ、いつもより低いぞ?)と拒否反応を起こす。

……ということで、これから発表される「CX-3」は、CX-5がラージであること、そして最新デミオの“低HP”問題。これらを一気に解決するニューモデルになりそうなのである。

マツダは、CX-5で既に自らを鍛えたから、「5」よりコンパクトな「3」であれば、上質かつスポーティな《走り》を盛り込んだSUVにすることは容易なはず。そして、SUVであれば高いHPは自明なので、仮にいまハイト系ワゴンに乗っているとしても、乗降性などインターフェイスでの問題は生じない。

ともあれ、実車がどんなクルマになっているのか。おそらくは2015年になるのだろうが、マツダ「CX-3」の日本での発表/発売、そして試乗できる機会を、期待とともに待ちたい。

Posted at 2014/10/31 00:59:45 | コメント(0) | トラックバック(0) | 茶房SD談話室 | 日記
2014年10月28日 イイね!

草の上で“遊戯”したマドモアゼルは、黒いシトロエンで去った 《1》

草の上で“遊戯”したマドモアゼルは、黒いシトロエンで去った 《1》 ~ 映画『マドモアゼル』その凄絶と静寂

最初に書いておくと、この『マドモアゼル』という映画にクルマが登場するシーンは二つしかない。そして、こうして一文は書くが、それはこの映画が多くの方にオススメということでもない。

また、これは男子に限定と思われるが、この映画はココロの傷(トラウマ)になるという説があり、それが気になるなら見ない方がいいとも思う。いや、グロなシーンや目を覆うような場面があるわけではないのだが、何というか、怖いというか凄いというか……。人の世、また人の心がどうしようもなく抱える“刃”のようなもの。この映画は、それを観客の心臓のあたりに向けて重く突き出す。

ただ「女優ジャンヌ・モロー」のファンであれば、もともと、かなりココロが強い方々であると推察するので、問題はないと思う。むしろ、彼女でなければ撮れなかった映画だと、いっそう女優のファンになるのではないか。

ただし、彼女が美しく撮られた映画ではないので、念のため。この映画に比べれば、たとえば『突然炎のごとく』は、何と彼女を可憐に、また華やかに撮った映画だろうか!と思う。しかし、この映画はそうではないのだ。

彼女はこの映画で、ほとんど全篇、あの得意の(?)仏頂面を通す。彼女のファンなら見慣れているであろう、あの表情だが、しかし、この映画は(ここまでやるか……)というくらいのレベルだ。この映画での徹底した“アンチ・ヒロイン”ぶりには、仮に彼女のファンであったとしても、多少の覚悟が要るように思う。

ちなみに、映画の原案はジャン・ジュネ、シナリオはマルグリット・デュラスという組み合わせ(監督はトニー・リチャードソン)。こういう成り立ちの映画にジャンヌ・モローが出ていて、もし未見だったとすれば(私のことだが)そのDVD化は、多くの映画ファンにとって歓迎であろう。

* 

さて、冒頭でも記したようにクルマ側から見ると、映画は全篇を通しても、自動車が登場するシーンは二つだけだ。物語の舞台はフランス某所、おそらくはイタリア国境に近いあたりの小さな村。……あ、でも、パリの話がけっこう出てきたから、田舎ではあったけれども、首都からはそんなに離れていない村だったか。

ともかく、その村には自動車はなく(誰かは持っているのかもしれないが、映画には登場しない)、村内を警察官が行動する際のギアも自転車だ。クルマは、その村に人が来た時、そして人が去って行く時に、それとなく出現する。村が「外部」と接触したことを示すアイコンがクルマであったともいえる。

そんな自動車登場の一度目は、隣村からか近隣の都市からか、ともかく村にはいない(らしい)獣医が、小さなクルマ(2ドアのクーペ、フィアットのトポリーノか)でやって来たという場面。この小型車には獣医が一人で乗ってきたはずだが、しかし、なぜか彼は右側のドアを開けて降りてきた。これはハンドル位置には関係なく、そもそもクルマのサイズが“ミニ”なので、左右どちらのドアからでも降りられたということか。

そして二度目に画面に出現する自動車は、主人公がこの村を出て行く時に使うタクシーとして──。映画はもうエンディングに近く、「クルマが来ますよ」という声を、主人公の女教師(扮するはジャンヌ・モロー)が聞く。

やって来たタクシーは黒一色。既にトランクが開けられていて、そこにドライバーが荷物を収めている。そのリヤシートに乗り込んだ女教師。村の人々はクルマを囲み、花束を贈り、教え子だった子どもたちは手を振る。

黒色のクルマは、ヘッドライト/フェンダー/ボンネットが一体になる前の時代、つまり1920~30年代の造型で、カメラアングルがロングになってフロントが映ると、縦長のラジエター・グリルに、特徴的な「ダブル・シェブロン」があるのがわかる。シトロエンの7CVだ。

この映画の公開は1966年だが、物語の時代設定はいつなのだろうか。原案者であるジャン・ジュネは1910年生まれなので、彼の少年時代(思春期)がストーリーに反映されて、映画の中の「少年」が12~13歳だったとすれば、時代は1920年代半ば頃ということになる。

ただ、タクシーとして登場するシトロエン7CVは、そのデビューが1934年だ。また、もう一台、映画に登場するフィアット・トポリーノ(サイドビューしか映らないが、おそらく)は、フランスでノックダウンされて、1936年に「シムカ5」として発売されたという歴史がある。……ということで、ジャン・ジュネの実際の少年期からは、およそ10年ほど時間をずらした1930年代半ばというのが、この映画の時代設定ではないかと思う。

ここで登場するシトロエン7CVは1934年のデビュー後、第二次大戦を経て1957年まで、11CVも加わって延々と作られた息の長いモデル。また、前輪駆動車の祖として“トラクシオン・アヴァン”と最初に呼ばれた機種でもある。

その黒いシトロエンの後席に収まった主人公“マドモアゼル”は、別れを惜しむ村人たちにウインドーを降ろして顔を見せ、にこやかに笑みを返す。社会人としての愛嬌も織り交ぜてという笑顔だが、そんな表情を見せたのは、実は、エンディングに近いこの時が初めてだった。もう村を出て行くという段階になって、ようやく彼女は、表面的にであれ、村民に笑って見せることができたのか。

とにかく彼女は、この映画の中で笑わない。このシーン以外で彼女が見せた笑顔は、一瞬の笑みが二回だけだった。その一度目は、なぜかその時は機嫌がよく、教師として、生徒の一人(実は彼女がひそかに関心を持っている男の息子だが)に、一瞬だけ笑いかけたという場面。そしてもう一度は、欲望が満たされそうになった時、その悦びと充足の表情に混じった、かすかな笑みとして──。

(つづく)
Posted at 2014/10/28 07:57:58 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマから映画を見る | 日記
2014年10月27日 イイね!

デミオ ~奇跡のコンパクト! part2

デミオ ~奇跡のコンパクト! part2ディーゼルかガソリンか、どっちのエンジンにするか迷う新型デミオだが、このクルマの本当の魅力は「挙動」にある。近年のマツダ車は、いっとき「統一感」という開発コンセプトを掲げていた。走っている時にクルマがどう「動く」かを、単にサスペンションのバネがどうしたというのではなく、もっとトータルに考えようというもので、この場合、たとえばアクセルを踏んだ時にクルマがどうなるかといった、エンジンがらみのことも、この「統一感」には含まれていた。

ただ、「スカイアクティブ」が登場した頃からだろうか、この用語があまり使われなくなっているように思えたので、このデミオの試乗の際に開発陣に訊いてみたところ、現在のマツダにとっては、「統一感」というかなり総合的な言い方であっても、この言葉では「もう、範囲が狭すぎる」のだそうだ。「だから、その言葉に代えて、いまは“人馬一体”をキーワードにして開発を進めています」──。

なるほど。今回のデミオで、全長に制限のあるコンパクト車であるにもかかわらす、アクセルを踏む右足が真っ直ぐに(車体に対して並行に)なるようにしたいとしたのも、この“人馬一体”感を得るために必要な要素の一つだったか。

つまりは、ステアリングを切るとかアクセルを踏むとか、そうした動作をドライバーが行なった場合に、それに対して、クルマがどう「動いて」くれたら最もいいか。人と馬との──じゃない、人とクルマとの「一体」感が生まれるか。言葉にすると、おそらくこういうことが、昨今のマツダ車の開発テーマになっているのだろう。

さて、デミオで走り出してすぐにわかるのは、乗り心地が「しっとり」していることである。「動き出しのxxメートルを大事にしている」と、かつてマツダの実験スタッフから聞いたことがあるが、サスペンションがまだ働き始める前というような段階で、どういう感覚をドライバーに与えるか。デミオもまた、そのへんがきちんとケアされ、よく磨かれている。

しかし、そうした乗り心地が「いい」クルマは、たとえばコーナリングなどではクニャッとした感じになってしまう? ……と思いがちだが、しかし、デミオはそうではない。直進状態から、クルマを曲げるためにステアリングを切り込んでやると、このクルマはいい感じにガシッと踏ん張ってくれる。安定していて、安心感がある。ちょっとハード気味にブレーキングした時でも、ノーズダイブ(前のめりになる)は非常に少ない。

……というようなクルマなので、じゃあ山岳ワインディング路に遭遇して、(ちょっと攻めてみようかな!)なんてやってみても、そのしっかり感を楽しみつつのアクセル・オンやハード・ブレーキングができる。とくにディーゼル・バージョンは、エンジンがパワフル&トルクフルなので、この足と組み合わされての“攻めの走り”では、タフにしてシュアな速いコーナリングが可能だ。

一方、1300のガソリンエンジン車でもこの確実感は変わることなく、さらにはフロントが軽いため、ディーゼル仕様とは異なる軽快さが、これに加わる。ワインディング路といったシーンでは、ディーゼル版の速さを取るか、それともガソリン車の軽快感を上位とするか。これは大いに迷うところ。

しかし、いったん市街路に戻れば、前述のように、低速域での「しっとり感」満載の柔和なコンパクト車として街を走ることができる。国内の一般的な使用状況では、ドライバーの意志のまま、自分の走りたい速度を決められることは、実はほとんどない。運転者はやむなく40~50キロ(時速)で走ることになる機会が多いが、その時に、クルマで走ることが快適な時間となるかどうか。実用車としてはこの点が重要だと常々考えているのだが、この局面でのデミオのホスピタリティはきわめて高水準。この乗り心地の「しっとり感」は同乗者にも喜ばれるはずである。

またシートも(いい意味で)身体にまつわりつくような感じで、同時に、身体の全体をシートの全体で支えてくれるといった感覚がある。ハード・コーナリングなどをしても、サイド方向のサポートはしっかりしている。これまた、日常性とスポーツ性をうまく両立させたと評価できるシートだ。

乗り心地の「しっとり感」というのは、重量車(高級車)では割りとよく見られる属性だが、クルマとして軽量であることを求め、さらにサイズに限りのあるコンパクト車においては、こうしたいい意味での“重量感”に出会うことはきわめて稀である。

まあ「人馬一体」かどうかは、乗馬をしたことがないのでわからないが、でもさまざまな条件下で、ドライバーの(こうあってほしい……)という「期待値」に高水準で応えつづけたのが、今回のデミオだった。そのオールラウンド性と充実を評価し、あえて“奇跡のコンパクト”と呼んで、この一文の結びとしたい。

(了)
Posted at 2014/10/27 07:46:50 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
2014年10月26日 イイね!

“シティ4WD”という展開。スズキ・エスクードの深読みに注目

“シティ4WD”という展開。スズキ・エスクードの深読みに注目§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

「とか」と言われて次の語を待つのはチューネンの証しである。「とか」が、AとかBとかCとかを「つなぐ」ための語であったのは過去のハナシなのである。

いまは「Aとか、好きだしぃ」といった用例に見るごとく(話者はAに続く何かを語る気はない)、「とか」は見事に独立を果たし、英語に見る語尾の ~y 、あるいは、~like のような用法としての地位を得るに至ったと思われる。( sport → sporty sportlike )

あるいは、いま巷では「ハッキシ」よりも「ぽさ」の主張の方が全盛であり、「……ぽい」ことをもって良しとするようでもある。こっちもまた、「そう! ぽいんだよぅ」という自立の動きもあるようで、いずれにしても、「yの時代」もしくは「とか/ぽい」シンドロームが今日なのだろうと思う。

……とすれば、ああ、クルマ業界はエラかった! 何なんだハッキリしろなどと罵られつつ、「ぽいの時代」を、1970年代からずっと先取りしていた。スポーティカー、スペシャルティカー、みんな見事に「……y」ではないか!

「ヨンクとか、ヨイよねえ」「ウンウン、ゲンキっぽくてヨイ」「フツーじゃないトコがね」「だっけどぅ。ほんとにジープとかだったら、**だよね」「乗り心地、サイアクでさぁ。アタマ痛いよー」「でも、ヨンクとかはヨイ」「ウン、思う思う」

……といったトレンドが本当にあるかどうか、ワタクシは知りませぬ。知りませぬが、今回のスズキの新作エスクードというのは、実にこの“ヨンクっぽさ”をついに商品化した。そういうニューモデルに思えてならない。イメージとして、幻想をかき立てる材料として、4WDを使う。こういうワザでありますね。

あ、誤解を招くと困るが、エスクードは4WD車である。FR+4WDなのだが、そのハードを、ほぼカンペキに「乗用車」という衣装でくるんでいる。そのインペイぶりは、メーカー側が「生涯、二輪駆動のみで使われても、いっこうに構わない」と言い切っちゃうほど。事実、冒険用(!)ではなく、日常に使用しても十分にイケる良好な乗り心地であった。

四輪駆動車は、いま、どこまで dreamy か? 柔和なる4駆・エスクードの成否は、おそらく、この一点にかかっている。

(1988/07/05)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
エスクード(88年5月~  )
◆「とか」「ぽい」の次は「……のほう」である。メニューのほう、お持ち致します。お会計のほう、させていただきます……。若年層が棲息するファーストフード店のほうでは、この種のボカシ表現が場を制圧している。そのうち、「クルマのほう」といった趣の“ボケたクルマ”が次代のヒット作になるのかもしれない。そういえば、プレリュード人気というのは、このボカシ志向が生んだものではなかろうか? マークⅡブラザーズというのも、みな、巧みにボケているなあ! 「ソフト・フォーカスのクルマ」……これか!? 

○2014年のための注釈的メモ
ここで採り上げたモノゴトをハッキシさせない“ボカシ”志向は、90年代以降も衰えることなく、その流れの行き着いた先のひとつが、昨今の“ユルキャラ”ではないかと思う。もちろんクルマ世界にもこの影響は及び、「ユルさ」をコンセプトにしたと思える注目作も生まれている。ただし、それらはいたずらに“強さ”をひけらかさないというだけで、決して“弱いデザイン”なのではない。この点は、あまりにもユル過ぎ、またデザイン以前のような、巷のユルキャラとは一線を画すところだ。たとえば2000年代以降のキューブにしてもエッセにしても、日本のカー・デザインの成熟と洗練、そして独自性を示す好例として私は高く評価している。
Posted at 2014/10/26 23:42:54 | コメント(0) | トラックバック(0) | 80年代こんなコラムを | 日記
2014年10月24日 イイね!

デミオ ~奇跡のコンパクト! part1

デミオ ~奇跡のコンパクト! part19月に登場したデミオは、同一のデザイン・コンセプト(“魂動”とメーカーは名付けている)で作られたCX-5、アテンザ、アクセラに続く四番目のモデルだ。そしてデミオは、その四兄弟の中では一番小さく、デザインする際の“デザイン代(しろ)”も最も少ない。

したがって、たとえば(魂の)“動き”を盛り込もうとしても、アテンザのようには流麗感やウネウネ・モードを盛り込めない。しかしデミオの場合、その“不自由さ”がいい方向に働いていると見る。メーカーの意図である“魂動”がデミオの「小ささ」の中にギュッと詰まり、デザインの主張がより凝縮されたかたちで全身に充ちている。

そういえば今回のデミオは「四」に縁があり、“魂動”四兄弟の末弟であるというほかに、デミオの歴史の中では四世代目になる。このクルマの初代は1996年のデビューで、その90年代半ばとは、国内各社が93年に出現したワゴンRの影響を受け、全高が高いハイト系/新パッケージング・カーを多数登場させていた時代だった。そのトレンドへのマツダからの回答がデミオであり、初代の全高は1500ミリ。02年の二代目は、そこからさらに高く1530ミリだった。

こうして、二代にわたってハイト系ワゴンとしてまとめたデミオだったが、三代目になって、そのパッケージングに変化を見せる。国内での「デミオ」は海外では「マツダ2」であり、そしてマツダは他社のように、国内と海外で別車種を作り分けることができない。ここでメーカーは悩んだ末に、三代目は(デミオではなく)「マツダ2」としてクルマ作りをするという選択をしたはずだ。

この時に対外的には、「とにかくクルマを100キロ、軽くしたかった」と語ったマツダは、データ的には全高を1475ミリに下げ、新しい「マツダ2」を小さくて軽いクルマとして仕上げた。それには、欧州を中心にしたマーケットでVWポロに対抗するためには、「マツダ2」は初代のようなワゴン・ボディでは対抗しにくいという判断もあったであろう。
(メーカーは、初代は「スペース」、二代目は「走り」、三代目は「デザイン」をコンセプトにデミオを作ったと説明する)

さて、今回の四代目である。コンセプトとしては三代目のコンパクト路線を引き継ぐが、居住性やインターフェイスについては、小型車であっても妥協せず、たとえばホイールベースを80ミリ延長。それは具体的にはフロント・ホイールを前方に80ミリ移動させたということだが、その結果生じた“余裕”のすべてをドライビング・ポジションの改良に使った。たとえばドライバーは斜めにではなく真っ直ぐに座らせ、そこから自然に伸ばした右足に合わせるようにアクセルペダルを置くという企図だ。

また、先代の後期から始まっていたパワートレーン系の大改良(「スカイアクティブ」とメーカーは呼ぶ)はさらに進展し、この四代目ではついに1.5リッター(+ターボ)の小型ディーゼル・エンジンを載せてきた。

……と、エンジンの話になったので、ここでいきなり試乗記になるが、このエンジンが実に軽快なのだ。トルクが厚いのはディーゼルだからべつに驚かないが、アクセルに対応しての吹け上がりや、その時のフィールに“重ったるい”感じがまったくない。ディーゼルながらマックスの回転数は5200で、それに気づくと、(そうだ、これはディーゼルだった……)と思い出すが、1500~3000という回転域でフラットで豊かなトルクを発するので、そんな上まで引っ張る必要はないのだった。ただ、アクセルを踏んでいっても、ディーゼルによくある“頭打ち”感がないのは特筆もので、きれいに回るということだけが印象に残る画期的なディーゼルである。

とはいえ、新デミオのもうひとつのパワーユニットである1.3リッターのガソリンエンジンの滑らかさと“伸び感”も捨てがたく、どっちのエンジンを取るかで、もしパーソナル・チョイスを問われたら、かなり迷うところではある。

このガソリンエンジンは1.3リッターながら、パワー、トルクともに十分。そしてオープンロードであれば、ディーゼルよりも高回転域までアクセルを“踏んでいける”という楽しみもある。まあ、どっちが速いのかということであれば、それは圧倒的にディーゼルなのだが……。しかし、価格差という問題もある。今回のデミオのディーゼルは廉価であるが、しかし、ガソリン車はもっと安価なのだ。

(つづく)
Posted at 2014/10/24 23:48:04 | コメント(0) | トラックバック(0) | New Car ジャーナル | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

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何シテル?   01/15 10:59
家村浩明です、どうぞよろしく。 クルマとその世界への関心から、いろいろ文章を書いてきました。 「クルマは多面体の鏡である」なんて、最初の本の前書きに...
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